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システムシミュレーションのすすめとつなぐ技術(1)

第一部:基礎

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CAEのあるものづくり |公開日:2020年06月

目次

  1. はじめに
  2. ものづくりとCAE技術
  3. システムシミュレーション
    • 3.1 モデリングの考え方
    • 3.2 つなぐ技術
  4. おわりに(次回に続く)

はじめに

近年、インダストリー4.0、インダストリアルインターネット、IoT、スマートファクトリーやソサエティ5.0といったものづくりの効率化や価値向上を図るための開発プロセスのデジタル化が急速に進展しています。まさに私たちの世界では、バズワードといってもいいでしょう。これらを支える大きな技術課題としてはITが挙げられがちで、IoTなどは典型的なものであり、まさにインターネットを中心とした世の中であることを想起させられます。さらに、最近ではその中で新たなシミュレーションの活用技術としてデジタルツインというコンセプトが生まれ、運用される時代となっています。では、これからのものづくりにはIT技術が最優先されるものでしょうか?ものづくりにおけるCAEの意義とは何でしょうか?本稿ではものづくりに必要な設計開発分野におけるCAEの役割と有用性について述べます。といっても、CAEに関する技術は広範囲であり、そのすべてについて述べるには力不足ですので、特にパワーエレクトロニクスといわれる電力変換とモータドライブを中心についての内容となります。
まず、今回の第一部では基礎的なCAE技術一般とシステムシミュレーションの概要を示し、次回は自動車、航空機などアプリケーションを例にとり、CAEの応用例をシステムシミュレーションという立場から述べることにします。

ものづくりとCAE技術

構想設計から詳細設計・評価、試作、さらに量産準備や製造などの各段階において、CAE(ComputerAidedEngineering)を用いることが当たり前になっています。CAE、すなわちシミュレーションを用いるメリットとしては一般的には、

  1. 設計・開発段階において、数多くの設計パラメータ、条件など適宜変更して、繰り返しシミュレーションを行うことで最適設計が可能
  2. 実測では不可能な高圧・高温条件や臨界条件下での挙動、実際には測定が困難あるいは不可能な環境下での機能や性能が詳細に確認可能など、実験と試作の回数が大幅に減り、開発研究に係るコスト削減と時間短縮が可能
  3. 新しい技術や理想的な形状・物性値を導入し、新技術の創生が可能
  4. さらに、設計・開発に関わる過程で必要となるモデリングなどによって、プラントのカラクリ(本質的なしくみ)を簡略化されたモデルによって理解することや、数理的な工学理論を実際の設計に適用できること、更にプラントの本質を理解することにより適切な設計仕様を設定

など多くの効果が期待できます。
これら多くのメリットにより、CAEは多くの分野や製品の設計開発にある時は実験の補間、ある時は実験そのものの代替として幅広く適用され、数多くの成果を上げてきており、今やものづくりに欠かせない道具となってきていることに違和感はありません。

このようなCAEですが、実際に適用するには様々な手法が提案されています。その中でも主流として2つのアプローチがあると思います。一つ目は従来のCADから発展し、解析対象を有限の要素あるいは境界で表現し、力や流れなどの基礎方程式を定式化することで詳細に応力、ひずみ、温度あるいは流れ場、磁場などを求めるいわゆるFEM、BEMといわれる方法です。この手法の最大のメリットは近年のシミュレーション技術の発展により、昔むかし(といっても、ほんの30年ほど前ですが)は必要とした人が自分でプログラムコードを書き、実行してきましたが、今や汎用プログラムも整備され、詳細な解析が可能になって設計開発に大いに寄与しています。これを読んでいる多くの人がAnsysなどの既存のシミュレーションツールを使い、このFEMを利用し日々の設計開発業務に役立てていることでしょう。設計対象をモデル化し、コンピュータ上にCADなどのモデラを用いて二次元あるいは三次元のモデルを作成後、物性値や境界条件を付加することで計算を実行し、求める物理量を得るというのが代表的な使い方になると思います。また、実際には線形・非線形、定常・過渡など様々な解析手法を適用する場合もあります。

システムシミュレーション

そして、もう一つがシステムシミュレーションと呼ばれるアプローチになります。CADから発展したCAEではありますが、近年のシステム全体の最適化という要求に合わせてさらに適用範囲を広げようとしています。そこには、近年、航空機や自動車を始めとした様々な産業分野で、シミュレーション技術を利用してシステムとしての製品開発・技術開発や、その最適化を行う要求が出てきたことも大きな一因でしょう。ここでは、CAEを企画や構想段階で用い、システムの実現性や仕様、更にシステム全体としての最適設計を検討するための道具として捉えることとします。この場合、システムの現象を捉えて必要なモデルを構築すること、電気/構造/熱等の複数の物理領域を考慮できることが要求されています。ここでは、その中でも私の専門であるパワーエレクトロニクスを中心として更に広い工学分野にまたがるシステムシミュレーションと、それに必要となるモデリング技術について述べることとします。
広く産業界を見渡すと、パワーエレクトロニクス技術の急激な発展により多くのエレクトロニクス製品が開発され、製品に搭載されています。身近なところでは、冷蔵庫や洗濯機、エアコンや携帯電話もそうでしょう。それぞれの機器の小型化やスイッチングといわれる半導体のオンオフ回数の高速化に伴い、電気的な設計だけではなく発熱対策も大きな設計要因となっています。さらに駆動系に適用される場合、高速運転時のモータの回転に伴う渦電流の影響や、IPM構造などでは回転による応力がその信頼性に大きく関わるようになっています。また、近年のEV、HEVの発展により電池などの電気化学反応も非常に重要な要素技術です。更に地球環境保護の観点からも、燃費の検討を正確に行うため、システム全体におけるシミュレーションへの要求も高くなっているという社会的背景もあります。図1に航空機を例にとったシステムシミュレーションのモデル例を示します。

図1 航空機を例にとったシステムシミュレーション図1 航空機を例にとったシステムシミュレーション

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