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電磁界解析

EMC設計を効率化する「考え方」

~これからEMC設計フローの見直しに取り組む方へ~

CAEのあるものづくり |公開日:2020年05月

目次

  1. はじめに
  2. EMCルールの適用について
  3. 解析ツールの活用について
  4. ノウハウの蓄積について
  5. 効率化のためのスキル
  6. おわりに

はじめに

1.1 EMC設計を効率化できている会社、できていない会社

IoTデバイスや電気自動車(EV)における技術革新が著しく、関連した電子デバイスによるEMC問題も急増しています。特に自動車の分野では、従来の機械駆動から電気駆動への変革に伴い、将来的な事業構造の転換のため、これから本格的にEMC問題に取り組まざるを得ないという会社も増えてきています。また、ADASシステムの技術革新に代表されるように、新しい電子デバイスの登場によって過去に蓄積した設計ノウハウの活用が難しい状況も生じてきており、EMCの問題解決を更に難しくしています。
EMC自体は、過去何十年にもわたって電機設計に携わるエンジニアを悩ませている問題です。これらの問題を解決するために、各企業においても長きにわたり様々な努力を重ねられてきています。ただ、残念ながら問題が発生した時点で、場当たり的な「カットアンドトライ」での対処を延々と続けている企業も、まだ少なくないのが実情です。
しかし、一方ではEMC問題に取り組み始めたばかりにも関わらず、EMC技術の蓄積と標準化の取り組みが設計フローの中で機能的に運用され、その結果、製品開発の効率化に成功できている企業も増えてきています。このような二極化の状況が進んでしまうのは何が要因となっているのでしょうか。

1.2 EMC設計効率化のポイント

弊社のEMCコンサルティングサービスでは、お客様から様々なご相談を頂いています。その内容は多岐にわたりますが、中でも最も多い項目が以下の3つになります。

①「EMCルールを適用しても解決しない」
②「解析ツールを活用しても解決しない」
③「ノウハウを蓄積しても活用できていない」

上記3点は、設計効率化の成否を握る重要なポイントですが、EMC設計/対策を効率化できている企業と、そうでない企業の間で、「考え方」が大きく異なっている領域でもあります。本稿では、各々上記3つについて2章から4章で説明し、それらの問題解決に必要な「共通スキル」と「考え方」についても5章で解説します。

EMCルールの適用について

2.1 ルールの適用だけでは効率化は不可能

「高速信号ライン近傍にガードパターンを配置させる」、「パスコン端子に接続されるパターンは太く短くする」など、EMCによるリスクを低減させるために、多くの設計/対策ルールが存在します。これらのルール自体は、専門書やインターネット等を通じて容易に情報を得ることができるので、可能な限り多くのルール情報をリスト化して、設計時に反映させようと尽力されているところもあります。もちろん、このような方法も手段の一つではありますが、単純に「ルールを適用させるだけ」の設計手法では、EMC問題を解決して設計を効率化することはできません。
なぜなら、実際の対策現場では、(理論的に正しい)設計ルールを適用しても、常にノイズが低減してくれるとは限らないからです。もちろん、「ルールが間違っている」ということではなく、ルールの適用において「人の判断」の完全性が保証できないということです。
EMC設計/対策に現場で携わっている方は分かると思いますが、EMCルールを適用するだけで常にノイズが低減してくれるのであれば、誰も苦労はしません。

2.2 ルールの成立条件を理解することが重要

理論的に正しいルールを適用しても「ノイズが低減しない」、あるいは「問題が解決しない」場合は、そのルールが成立する条件を間違えて適用しているからです。更には、成立条件を間違っていることに開発者/設計者が気付いていない場合も多く、設計ルールの間違いに依拠するものとして、誤った判断のもとに対策検討が進められていく状況もよく目にします。
どのような条件下であっても、必ずノイズが低減できるという「万能なルール」は1 つも存在しません。全てのEMC設計/対策ルールには、「この条件下であれば、このEMC設計/対策ルールでノイズが低減する」といった成立条件が必ず存在します。どれだけ多くのルールを標準化して設計に反映させることができても、それらルールの成立条件もあわせて理解して、検証できなければ、ルールを正確に適用することはできません(図1)。また、所望の結果が得られなかった場合には、次ステップの検討に進むこともできません。

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