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金沢工業大学様

金沢工業大学 様:「行動する技術者」を目指して実践的にCAEを学ぶ

「行動する技術者」を目指して実践的にCAEを学ぶ

概要

今回のインタビューでは金沢工業大学様にご協力いただきました。
金沢工業大学 工学部機械工学科ではAnsysをはじめとする実用的なCAEソフトを使用して、実践的な授業に取り組まれております。今回は金沢工業大学で実施されている取り組みや授業内容についてお話を伺いました。

今回お話をお伺いした方
金沢工業大学
工学部機械工学科教授 山部 昌 様

1.学校の概要や教育方針について

学校の概要や教育方針についてお聞かせいただけますでしょうか。

山部

金沢工業大学は、私立大学ということで、国立大学とは異なる独自な教育理念を掲げております。現在創立60年弱ですが、60年前から産学共同を柱の1つに掲げておりました。60年前というと、企業と大学というのはある意味敵対関係にありましたが、その当時から創設者は、産学連携を実施しておりました。民間の企業にも役立つ技術革新を目指すというのが本学の非常に大きな理念です。もう1つは、学校の教育方針の一番の根幹は、「行動する技術者」というのが大きな柱になっています。「行動する技術者」というのは、たとえば現場に出て行った時に、実際に現場の問題点を自分で積極的に解決したり、あるいはそれをプレゼンしたり、頭で考えるのではなく実際に体を動かして、「行動する技術者」に徹するというのが、本学の教育方針です。

教育方針はCAE教育にどう紐づいていますか?

山部

企業に近い研究を行うためには、ハード面もソフト面もできるだけ実際に企業で使っていらっしゃるような環境に近付けたいと考えています。実は私は、23年前に日産自動車からこの大学に転職しました。その当時日産自動車には、車を造るために色々なソフトやハードなどが整っていたのですが、地方の大学ですし、CADやCAEの環境は、全くないものだと思って来ました。しかし当時から、CADはCADAMというのが入っていましたし、AnsysのED版や有限要素法を体験できるようなソフトが入っていて、正直とても驚きました。やはり計算する規模は小さいし、計算機の能力というのは非常に小さかったですが、そういうハード・ソフトという環境という面では、学生にはとてもよい環境だなというのを23年前に来て感じました。それ以来、私が日産自動車で、有限要素法やCAD/CADAM 、金型造りなどを行ってきた関係で、機械工学科においてシミュレーションを行ったり、CADの環境を整えたりといったことを担当しています。研究室でも自動車に関するものづくりや、自動車に関する特性評価を行っています。実際に自動車を造るかというと、それは自動車会社が得意なことですので、ここでは自動車に使われる材料の基本的な物性をコンピュータシミュレーションで求めたりしています。ものづくりでも、プレス成型や射出成形などのシミュレーションを、私の研究室では行ってきました。

2.23年前からCAEを活用

23年前の当時、3DCADやCAE環境がある大学はあまりなかったですよね。

山部

なかったと思います。あの時完全に3Dだったか記憶が定かではないですが、そういう環境を作るということを、大学全体が尽力していたことは事実です。ほかの大学のことは残念ながらよく存じ上げませんが、同じように転職して大学に行かれた方に話を聞くと、「金沢工業大学はずいぶん進んでいるな」と言われたのが印象的です。
当時、CAD、CADCAMと言えば、いわゆる自動製図機のようなイメージでした。せっかくCADデータを作っている訳ですから、それを解析して、CADとCAEを上手く結び付けて製品性能評価まで行えれば、学生にとってはとてもよい教育になると思ったので、Ansysを使って一生懸命教育を行いました。

当時はどのような解析を網羅されていたのでしょうか?

山部

線形の変形解析、定常の温度解析、非定常の温度解析や固有値解析もしましたね。それから、温度解析、伝熱解析、変形解析の連成問題あたりは一通り解析しましたね。大学では3年時にこのような解析をしていました。基本的には構造、熱、振動あたりで、入門編として必要な解析を網羅しています。

3.カリキュラムについて

入門者向けのテキストやカリキュラムは独自のものを使用されていますか?

山部

サイバネットシステムの入門版というものがあって、それを我々なりに編集し、もっと簡単にした上で許可をいただき、それをテキストとして使っています。
例題が入っているものです。少しわかりにくいところは、実際の画面を切り貼りして、「ここをクリックするんだよ」とオペレーションマニュアルのようにわかりやすくしています。

CAEの教育で、重視されている点はありますか?

山部

扱う問題というのは我々の身近な問題です。たとえば、物に荷重を加えると、その物が変形します、当然ですよね。その変形を、頭の中でイメージする、それがまず出発点となります。それから、荷重条件や拘束条件が違っていて、変な計算結果になっていても、平気な学生が中にはいるので、「実際にこう変形させたら、こんな変形になるわけがない」というところから、まず入っていきます。したがって、拘束条件だとか、荷重条件だとかそういうものを始めに教える前に、まずは変形させる題材を与えて、「じゃあ、どういう風に変形するんだろう?」とみんなで考えます。そういう変形を頭の中で描いて、それで、「じゃあ、こういう荷重を加えたら、そういう条件だったら、拘束は全部拘束しないといけないね」とか、あるいは、「こっち方向へずらしてもいいよ」とか。そういうイメージを掴ませておいてから、計算をさせると変な結果が出ても、「それは変な結果だ」とすぐにわかるので、そこは大事なところだと思っています。また、メッシュの切り方に関してですが、ED版は1000メッシュでしたが、たとえば、100メッシュで切ったら、どんな結果になるか。それを今度、200メッシュ、500メッシュ、1000メッシュというように切っていきます。1000メッシュ位になると、簡単なちょっとしたものでは厳密解が存在するので、厳密解にどれだけ近づいていくかを考えさせます。
横軸にメッシュ数、縦軸に精度として、厳密解は横に一本ですから、それにどう近づいていくか、自分でグラフを描かせて、「いかにメッシュ切りが大事か」というのを体感させる、そんな教育を行っています。特に穴が開いているような問題ですね。平板に穴が開いている時に、御社のテキストが非常によくて、1/4モデルでちょうど穴の付近を細かく自動的に切って、「穴の外は非常に粗い」と、「その意味を考えなさい」ということで、なかなかみんなよく理解してくれていると思います。

結果の評価はどのようにされているのでしょうか?

山部

結果の評価は、まずは変形ですよね。応力問題は、変形が思った通りの変形になっているかどうかということと、それから、圧縮、引張応力、ミーゼスの降伏応力ですね。ミーゼスの降伏応力を確認したあとに、今度は最適化を行います。応力の高い部分と低い部分がある場合、「低い部分についてはもう少し薄くしてもいいのではないか」とか、形状を少し変更させて、全体的な相当応力が等しくなるように何回か形状変更をさせます。何回も同じことを行うのは、学生も嫌がるんですが、それは実際の設計現場というのは繰り返しですから、そういうことも教えながら「最適化とは、こういうことなんだよ」と体験してもらっています。

最適化ツールは使用されているのでしょうか?

山部

確かに最適化ツールはありますが、「ここをもっと厚くしよう」とか。「ここは薄くしても平気だろう」と考えることが大事なんですよね。それは、手動であるがためにできる非常によい教育だと思います。
要はどの部分を最適化するかということが大切なので、結局、設計因子と言いますか、自分が何を設計しているかということから、どこを切り出すべきか、考えさせるようにしています。しかし、現状そこまでは大学3年生では行ってない気がしますね。

各学位でどのようなレベルのCAE教育をされているのでしょうか?

山部

機械工学科でいうと、いわゆる機械系製図というのがあって、それは本当にお絵描きCADですね。2Dのデータを3Dにして簡単な変形の問題を行っています。それを受けて、大学院の1年時には、変形だけではなく、伝熱、振動、定常/非定常や、連成問題にも取り組みます。
平成24年度に教育改革を実施しました。それまでは3年生からAnsysを使用していたのですが、24年度以降は、もう少しCADにも力を入れるようになって、本来3年生で実施していたカリキュラムを大学院1年生に変更しました。つまり、23年前は今の大学院生に近いことを行っていたということです。当時、CADはあまり発達していなかったので。今は、CADから3DCADに移行し、3DCADのデータで、色々な変形を行っています。それを受けてコンピュータ引用デザイン工学という修士では、CADデータを基に色々なほかの解析を行うという流れになっています。
学部では基本的なことを学び、大学院では非定常の熱や線形構造など現象に沿ったものを扱います。これらを大学院1年生の最初のカリキュラムとする理由は、これを勉強することで修士研究にもっとこのようなFEMを活用して欲しいと考えているためです。そういうスタンスで、一連の例題に取り組ませます。
最後の4週間位は、今の自分のテーマでFEMを適用し、活用方法を考えてもらいます。そして最後には発表会を実施し、自分の修士研究に当てはめたら、「こんなことができそうだ」という発表を行ってもらいます。今後も継続して修士研究でもツールとして使いこなせるようにしています。

図1 エンジンピストンの温度分布解析例

Ansysを選ばれたポイントはあるのでしょうか?

山部

キーポイント→ライン→面→ボリュームを作成するという、あの流れが、私はとてもわかりやすいと思います。特に初心者には、一番いいなと思いますね。クラシカルなモデリング思考が大切です。特にいいなと思うのは、形状を作ってリスト化すると、この要素1番はラインポイントの何番から構成されて、ラインがどうとか出てきますよね。基本的なことはそのリストを見ればわかります。複雑なモデルではできないですが、単純なモデルではそれができるので、そこがANSYSのよいところだと思います。また、色んなメニューをマウスで拾っていけるというのも便利だなという気がします。

モデリングもモデリング手法も基礎が大切ですね。

山部

そうなんです。四角形要素でも、4節点要素もあれば、8節点要素もあり、8節点は節点が中間にあるじゃないですか。その節点の存在や、8節点になっているから四角形ではなくてこんないびつな形状ができるという体験をさせるということは、大事なことだと思います。
有限要素法の講義をしても、難しいのでなかなかみんなすぐにはついて来れないんですよ。ただし、一番ベーシックなところは要素があって、要素には節点があってという基本は大学で学べるのがよいところかなと思います。

学生達はCAEを使うメリットを実感されていますでしょうか?

山部

個別の答えにはなりますけれども、応力のコンター図というのは、とてもビジュアルでイメージに合っていますよね。ものを変形させて、実際のものは応力が高いところは色ではわからないと思います。ビジュアル的にどこをどう最適化したらいいか。どこをどう薄くしたらいいかとか。どこの部分をもっと最適化していかなければいけないかというのは、ビジュアルが大切ですから、そういう意味ではCAEは役に立っていると思います。ひずみゲージを付けて測ったとしても、あくまでも点ですよね。全体での評価ができないので、そういう意味では、CAEというのはよいなと思います。

実験とCAEのそれぞれの位置付けはいかがでしょうか?

山部

私の研究室は、CAEを使ったものづくりのようなことを実践しているので、「実験でやったことと、それから実際に解析でやったこと。それらを必ず比較するように」と伝えています。CAEが中心のテーマもありますが、たとえば修士論文では CAE だけでは駄目で、実験をして確認します。実験の方が絶対に正しいので。そうなると、実験とCAEで結果が合わないというのが往々にしてあるので、その合わないのがなぜなのか、その測定技術の問題なのか、それともCAEが用いているアルゴリズムが不十分なのか。そこを考えさせることは、修士研究としては、とてもよいことだと思っています。

学生の理解を深めるためにCAEの授業で工夫していることはありますか?

山部

CAEに限らず、たとえば数値解析というのは巨大な連立方程式を解いているので。連立方程式10×10位の連立方程式をC言語で作って計算させると、あっという間に計算しますよね。しかし「3×3位の連立方程式を手でやれ」と言ったら非常に大変なので、まず大変さを体験させてからコンピュータを使用します。100×100でもコンピュータならほんの1秒で終えてしまうので、CAEのすごさというものを体感できるかと思います。また、機械応用プログラムという4年生の科目があるんですが、プログラミングをやっているんですよ。4年生で機械応用プログラム「1」「2」がありまして、「1」「2」も私が担当しているんですが、機械応用プログラムの「1」では、C言語を学び、「2」ではC言語を受けて色んな数値解析を行っています。微分方程式を解いたり、シンプソンの積分公式を計算したり。連立方程式を含めて、いかに数値計算というものが、寄与しているかといったことを考える、そんな教育をやっています。

2年生で、数値計算などを手動で行い、3年生で、CADに入るんですね。

山部

3DCADを実際にやってみて、4年生では研究室に入った時、5年目にあたる修士1年では、有限要素法を使って、色々な解析を行います。シミュレーションの授業であるプログラミング「2」では数値計算で、微分方程式を解くといったどちらかというと数学的な授業ですね。工夫という面では、「手で行うと大変だけどコンピュータでやると正確でとても速いよ」ということを体感させる工夫をしていますね。
結局、有限要素法もそうですけれども近似解なので、近似解は要素の話もそうですけれども誤差を含んでいるので、どういう場合に近似解が現実の厳密解から離れていくかとか、本当はそんなところを厳密に理解しないと駄目だと思っているので、できる範囲内でそれを理解できるような授業をおこなっています。

CAEの授業の受講前/後で何か感じられる効果はありますか?

山部

ビフォーアフターで効果が全然ないとは言えないですが、我々の学校は、1年を2学期制でやっていますから、前期6 ヵ月間授業をやったからと言って、「こんなに成長したかな」というのは、なかなかないかと。ただ、先ほど申し上げましたように、ANSYSに限って言えば、そうやって修士研究で必ずツールとして使えるようになるということが基本なので、使っていく中でどんどん難しい問題に挑戦してくれているのだろうなという想像はしているのですが、なかなかその実感はできていないかもしれません。
ただ、やってみたらなかなか面白くて、どんどん自分でやるようになったというようなことはあります。自分のテーマに近い課題を最終課題にしているので、メッシュの切り方を工夫してみたり、学んだことをベースに新しい機構を考え出したり、そういうのは半年レベルでもあるかと思います。
そのあと、卒論に向かうにあたってテーマがあって、「これはシミュレーションを組み合わせたら良さそうだな」とかそういう風に気付いてくれると一番楽です。そういう学生もいます。
また、社会に出た時、原理がわかって解析を行ってきたというのは大きな強みであり、それは役に立つと信じています。

実際に企業の採用担当者から具体的なリクエストはありますか?

山部

いわゆるCADが使えて、最新のソフトが使えるというのはすごく有利ですね。むしろAnsysに限らず、解析をメインに学んでいるので、色んな企業やソフトウェアメーカーから、いわゆるアカデミック価格で安い価格または無償でソフトを入れていただいて、それで勉強した学生が、実際のそういうソフトを使っている会社で、すぐに即戦力になっているというはよく聞く話です。
こういうのは、1回自分で体験すれば、ソフトは違っても、割と柔軟に応用できるじゃないですか。そういう意味では、Ansysは非常にベーシックで、1回経験してみれば、非常に色々なところで使えると思います。一番はじめにAnsysの有限要素法の授業を行うときは、「プリ、ソルバー、ポスト。この3つからどのソフトウェアも構成されているから、こういう考えでAnsysを一生懸命勉強すれば、他のソフトも同じだから」ということをまず伝えます。特にAnsysは潰しが効きますね。いろいろな解析分野に対応しているし、連成問題もできますし、そこはよいところですね。

操作して満足せずに解析の本質を見るために何か授業で工夫されている点はありますか?

山部

確かに、いわゆるソフトウェアのスキルを得て満足している学生が大半かもしれません。そういう意味で、まずは結果を考察する。結果を考察した上でもう一度、「形状」なら「形状」で再計算をさせてみる。その時に、「自分のアイデアを入れて再計算しなさい」と伝えます。そこには必ず設計のフィロソフィーがあるので、それを明らかににして、もう一度計算させる。だから、一方向ではなくて、両方向でやってもらうというのは、とても大事なことだと思っています。私は「最適化」と言っているのですが、「あなたが設計者だとしたら、何を求めたいか。求める性能を持たせるためには、どうしたらいいんだろう?」「それをもう1回計算でやってごらん」という声掛けや意識付けをしないと一方向で、いわゆる操作だけで満足して終わるということになりがちです。

わからないことが出てきたときの調べ方を教えていただけますか?

山部

往々にしてANSYSもそうですけどエラーメッセージが英語で出てきますよね。うちの学生もそうなのですが、英語が出てきたときにそれを読もうという意欲がないんですよね。そうすると学生は手を挙げて、「先生、エラーメッセージが英語なのでわかりません」と言うんですよ。「エラーの理由が書いてあるので読みなさい」と、そんなレベルのところから、ひとつひとつ解決していくと、次に出てきたエラーメッセージが前のと違うなと、だんだん勉強していくのでそれは勉強しているなという気がしますね。一番最初はエラーが出てくると悪いことだと、間違えだと思って「これなんですか?」と。エラーメッセージに対する恐怖心のようなものがあって、そこからなかなか読み込もうとしないことがありますね。どこの大学もそうなのかもしれませんが、そこを越えないとだめですね。エラーメッセージが出て止まっている場合は往々にして入力ミスが多いので、リセットしてもう一度やり直すことが多いですね。与えられた問題は工夫してなんとか解けるとしても、まったく0からモデルを作って条件を決めてやるというのは、大学生でもハードルが高いかもしれませんね。経験していかないと、いろんな事例を後追いしてやってみて、経験してやっと自分でできるようになるんでしょうから、大学生にそこまでを求めるのは難しいのかもしれません。

構造解析では要素といっても一/二/三次元とありますが、それぞれの特徴はどう教育されていますか?

山部

私がはじめたときは二次元がメインだったので、平面ひずみ問題というのがどういう問題かということを理解させるのに、結構苦労しましたね。たとえば、画面に出して、「ずっと無限に画面方向にそれがあるんだよ」というものと、三次元とは違いますから。「だから、その辺で間違った解釈をしないように」というところは、二次元の時代、平面ひずみ問題なんかをやる時は、今でもそうですけれども、注意をしているところですね。
三次元の場合は、特に何も考えないでできてしまうかと思います。
固有値解析では工夫している点として、固有振動数を求めると割り切って、「何Hzで、第一番目の変動数が出るとか。そういうことだけだよ」という扱いをしています。

1クラス80名とお伺いしましたが、どのように授業をされているのでしょうか?

山部

1人で80人分の学生のモニターを見て授業をしています。一人分は小さな画面ですけれども、何をやっているのか見えるんですよ。動いていない画面があれば、そこをクリックすれば、その人の画面が横で見えるので、いわゆる、チャットみたいにして、「お前何やっているんだ?寝ているのか?」「進んでいないぞ」「余計なインターネット見ているだろう」とか。80名と申し上げたのは、Ansysを使用する大学院生です。大学院生の場合は、そういう注意は不要で、みんな一生懸命やりますよ。80人というか100台80人で、Ansysを入れているのがそのうち80台です。モニタリングは特に問題なくできています。大学院にはTAを付けないという方針があります。大学院でTAを付けると同学年になっていまいますから。確かにTAがあれば便利かも知れませんけれども、今のところは不自由していません。

図2 金沢工業大学 野々市キャンパスCAD室(80人収容可能)

CAEではどのような材料を使用されていますか?

山部

最初は、デフォルトのものを使っています。金属材料、プラスチック材料など色々と。たとえば、熱膨張なんかを問題にするのであれば、「線膨張係数を調べて来い」と言って調べさせたりします。
あと材料を選定させることもありますね。たとえば、材料ではなくて炉の中にものを入れてその温度変化を調べる時に、たとえば、油の中にものを入れるのがいいのか、それとも、お湯の中に入れるのがいいのか。ものを冷やすという行為に対して、どんな熱伝導率のものを入れたらいいかということで、「材料のデータベースを調べて来い」と言うこともあります。
シリコンオイルがいいのか、どんなオイルがいいのか。そうしたら、冷やす時の熱伝導のやり取りで、熱伝達係数が変わってきますよね。それで調べさせたり、「最適な材料を選んで来い」とか。
学生が選んだ材料を使う場合は「熱伝達係数がこういうようなものが一番いいね」ということを計算させて、「では、そういうものを世の中にあるかどうか調べて」と伝えますが、大体そういうものはデータがなかったりするので、それはそれで仕方ないですね。熱伝達のデータってあまりありませんよね。熱伝導の問題は値があるけれども、熱伝達の値はあまりないから、「こういうものがあればいいんだよ」というところに至ることもあります。
流体までは残念ながら半期では届かないのですが、学部の3年時に「流体力学」という授業でSCRYU/Tetraを使って学習します。流体力学の勉強そのものを行ってから、最後にソフトで形状を完成させます。

4.今後の取り組みについて

今後取り組んでいきたいことはどのようなことでしょうか?

山部

私自身があまり例題を持っていないので、沢山の例題集があると、もっと自主的に彼らはやるのではないかなと思います。例題が沢山ある中で、代表的な例題を授業でやって、「あとは好きに色んなものを選んでやりなさい」となると、もっともっと実力がつくと思うんです、特に前向きな学生は。後ろ向きの学生は何をやっても駄目ですが、前向きな学生がどんどんエンカレッジされて、前へ進んでいけるような教育プログラムが一番よいので。例題集みたいなものがもっと充実していると、非常にありがたいですね。

前向きではない学生を前向きにさせるために工夫していることはありますか?

山部

一番冒頭でお話ししましたように、変形解析でコンター図などが出ると、どっちつかずの学生でも「これすごいな」とみんな思うんですよね。「これはなかなかよいツールだ」と思うので、ああいったビジュアルに結果を表示できるというのは、とてもよい動機付けになると思います。
現に自分が昔、NASTRANを使ってものの変形をさせた時に、「実際の実験に非常に似ているな」と感じて感動したことがあります。私自身はそれがベースになっているので、そういう気付きを与えるにはとてもいいなと思います。

学生の皆様は23年前と現在で、世代によって違いがありますか?

山部

学びという面、学びに対する意欲という面では、あまり変わりがないと思います。昔の学生は困っている学生がいたら、お互いに助け合ったりとか、コミュニケーションが上手くとれない人がいたら励ましたりとか、面倒を見てくれる学生が多かったと思います。
最近は誰かが困っていても個人主義で、「僕知らないよ」的な感じなので、その辺は気質が変わったなという感じはします。しかし、学習に対する意欲というのは、変わらないと思います。

ありがとうございました。金沢工業大学では23年前からCAEを取り入れて、社会に出てから即戦力となれるよう実践的な授業を取り入れられています。トライ&エラーを繰り返すことでなぜそうなるのか、考えさせることの大切さを学生の皆様も在学時に体感されていることと思います。
山部様の研究に弊社も引き続き協力させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。

 


 

金沢工業大学 山部様には、お忙しいところインタビューに
ご協力いただき誠にありがとうございました。
この場をお借りして御礼申し上げます。

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