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はじめてみよう圧電解析(1)
圧電解析の基礎
CAEのあるものづくり |公開日:2019年9月
目次
はじめに
圧電特性をもった素子は電気的エネルギー・機械的エネルギーの変換器として、センサー・アクチュエータ・モータ等、様々な電子機器において使用されています。このような圧電素子(ピエゾ素子)の性能予測にもCAEを活用できますが、構造と電気の連成解析となるため難易度が高くなります。そこで本稿では、これから圧電解析に取り組まれる方に理解を深めていただくことを目的として、圧電の基本的な性質と圧電解析の支配方程式、そしてSAWデバイスやジャイロセンサー等の代表的な圧電解析事例をご紹介します。
圧電の基礎
先に述べたとおり、圧電素子は電気的エネルギーと機械的エネルギーを変換することができます。圧電素子に力を加えることで電気を取り出したり、逆に電気を加えることで力や振動を取り出すことができます。このような物体をCAEで解析するには、電気と構造を一緒に計算する連成解析になり、特殊な要素や設定が必要です。まずは圧電材料の特徴から解説していきます。
2.1 誘電体
絶縁体を電界の中に置くと内部で分極が生じます。分極が生じる物体を誘電体と呼びます。誘電体はその性質により以下の4つに分類されます。これらは互いに独立したものではなく(図1)に示すような包含関係にあります。
● 誘電体:電界により分極するが電場がゼロのときは分極もゼロになる。導体よりも絶縁体としての性質が強い。
● 圧電体:外部からの圧力で電界が生じ、逆に電圧を負荷することで変形が生じる。
● 焦電体:極性(電気分極)のある結晶。自発的な分極を持ち、微小な光などの温度変化により分極がわずかに変化する。(人感センサーなどに利用される)
●強誘電体;焦電体の中でも、外部電極により分極方向が反転する性質を持つ物質(工学的に優れた性質を持つ)。電場をゼロにしても自発分極が残る。BaTiO3系やPbZrTi3系(PZT)などセラミック誘電体が該当する。
比誘電率(真空の誘電率との比)で比較すると、一般的な誘電体であるSiO2は3.8、NaClは5.9であるのに対して、強誘電体であるチタン酸バリウムは5000、ロッシェル塩は4000と大きな差があります。