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解析事例

CAE活用推進

株式会社 日立製作所 様

株式会社 日立製作所 様:グループ全社の技術者育成のため、CAEユニバーシティの定期講座を活用

V&Vの問題は、CAEが普及すればするほど必要度が増してくるので、更にニーズが増えていく

概要

今回のインタビューは、株式会社 日立製作所様にご協力いただきました。

世界でも有数の総合電機メーカーでおられる日立製作所様は、1910年、「日本製の発電機を作りたい」という思いの元、当時36歳だった小平浪平創業社長と、数名の若いエンジニアが興したベンチャー企業から始まりました。それ以来「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という理念のもと、社会・産業システム、情報・通信システム、高機能材料、電子装置・システム、オートモーティブシステム、建設機械、生活・エコシステムなど、広範にわたる事業を展開しています。

近年では、過去100年にわたり培ってきた社会インフラに関わる運用・制御技術(OT:OperationalTechnology)と、50年以上の歴史を持つIT、そして優れたプロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業を推進することで、IoT時代の新しい価値創生に取り組まれています。

今回は、日立グループ全体の人材育成を担う日立総合技術研修所様より、シニアプランニングマネージャー 西垣 一朗 様を訪問し、研修の1つとして採用いただいている「CAEユニバーシティ」や、CAE人材育成についてお話を伺いました。

シニアプランニングマネージャー 西垣 一朗 様
※以下お客様の敬称は省略させていただきます。

日立グループ全社の技術者育成を担う総合教育研修所。特定のテーマに偏らず、V&Vの問題を扱うCAEユニバーシティの定期講座を採用

ご担当業務についてお聞かせください。

西垣

私が所属する日立総合技術研修所では、日立グループ全体の技術者育成を担当しており、各種の技術研修を提供しています。分野は機械系から電気系、情報系や開発技法に関するものなど多岐にわたります。私はもともと機械研究所にて、AnsysをはじめとしたCAEによるシミュレーションに長年携わり、ツールのとりまとめや解析手法の開発、設計者支援などを行っていました。そうした流れもあり、2012年より機械系全体の教育プログラムの企画・運営を担当しています。

日立総合技術研修所様には、CAEユニバーシティの定期講座を研修メニューの1つに加えていただき、毎年、多くの方に受講いただいております。きっかけは何だったのでしょうか。

西垣

当社にはエンジニアが多数います。課題も部署により異なり、利用ツールも様々ですので、研修所で個々の操作方法のトレーニングを扱うのは効率的ではありません。そこでトレーニングは各ベンダーに任せ、我々の研修では全社で共通する課題を扱うようにしています。

なかでも、CAE教育で特に重要なのはV&V(妥当性検証)の問題です。いくら操作方法を覚えても、結果を設計に活用できていなかったり、間違った使い方をしていては意味がありません。

重要なのは「実験と計算結果は合わない」を前提に、設計を進めること。設計とCAEの間を埋めるためのノウハウを教える研修を模索

西垣

私は30年以上CAEを利用してきましたが、昔は精度良く解析しようとしても、PCの性能が障壁となり解析できませんでした。当時は、PCさえ良くなればCAEも高度化されて、設計の質も向上すると考えたものです。しかし現実問題はもっと複雑で、PCの性能が格段に向上した今日でも、やはり実験と計算は簡単には合いません。

むしろ重要なのは「実験と計算結果は合わない」を前提に設計を進めることだと思います。合わないことを前提に、「何を見るために解析をするのか」「結果を設計に活かすにはどうするべきか」といったような、設計とCAEの間を埋めるためのノウハウを培っていくことが重要ではないでしょうか。

例えば、解析をするときは、計算結果が出てから考えるのではなく、まず解析する前に考える必要があります。計算は「自分が想定していたことが理論的に合っているかどうか」の確認に使うべきです。そこで研修所でも、そうした技術力を養うための講座を設けることにしました。

はじめのうちは社員で教えていたのですが、どんなツールにも適用できるノウハウを教えることに限界を感じ、外部委託を考えるようになりました。そのときにサイバネットの営業からCAEユニバーシティを紹介され、導入に至りました。特に決め手になったのは、CAEユニバーシティは、Ansysなどの特定のCAEツールに依らないので、利用ツールに関係なく受講できるという点でした。

人数を気にせず、好きな時に受けたい 講座を受けられるのが定期講座のメリット

ありがとうございます。サイバネットシステムでは、設立当初から大学教授の先生がたに協力いただき、特定のツールに偏るのではなく、すべてのCAEエンジニアに共通して求められるような技術力の育成を目指してきました。その思いは設立から10年以上経った今でも変わりありません。ところで、CAEユニバーシティでは、お客様のところに講師がお伺いして講座を行う、出張形式のセミナーも多数行っております。日立様は定期講座をずっとご利用いただいていますが、その理由は?

西垣

オンサイト講座を実施する場合は、ある程度まとまった人数を集めなくてはいけません。
一方、定期講座の場合は1名から参加可能です。それぞれ必要な講座も受講できるタイミングも異なりますので、各自が受講したいときに、人数を気にすることなく、好きな講座を受けられる定期講座のほうが我々には合っていると考えました。

告知や参加申し込みの取りまとめなど、運用はどのように行われているのですか?

西垣

当社には研修専用の社内システムがあり、そのシステムを使って、年に2回、CAEユニバーシティも含めた各種の外部研修の受講者を募集しています。一か月程度で申込みを締め切り、それぞれの機関にまとめて発注しています。

手作り教材でV&Vの考え方をわかりやすく教える実験室講座

定期講座(実験室講座・理論講座)の感想をお聞かせください。

西垣

実験室講座は、実験を使ってわかりやすく説明してくれるのがいいですね。既に何名も受講していますが、かなり好評です。特に、実験機材がすべて手作りなのがいいですね。

弊社

ありがとうございます。例えばCAE実験室-静解析編- では、水を入れたペットボトルを重りとして使っています。毎年水を入れ替えたりして、メンテナンスには時間をかけているのですが、高額な試験装置と比べるとずいぶん簡素ですね。

西垣

そこが非常に良いと思います。普通はお金をかけて、立派な装置を制作し、「実験と計算が合う」ということを示そうとします。しかし、これだと計算結果と合わせるための実験になってしまいますよね。
先ほどお話ししたとおり、重要なのは、「実験結果と計算結果が合わない」ことをまず認識してもらうことです。合わないことを実感したうえで、どう対処するかを考える。設計とは、まさにこの作業の繰り返しではないでしょうか。V&Vの問題は、CAEが普及すればするほど必要度が増してくるので、CAE実験室のような講座はさらにニーズが増えていくと思います。
理論講座については、今まで断片的に学んできたことをもう一度、体系的に整理できるのは非常に良いと思います。実験も取り混ぜたりすると、満足度はさらに上がるのではないでしょうか。

CAE実験室-静解析編- の実験機材

研修の効果はどのように測定していますか?

西垣

研修終了後にアンケートを取っています。教育の効果には2種類あると思います。1つは、どれだけの量の知識を覚えられたかを見る「インプット」の評価。これは理解度テストをすればすぐに測定できます。もう1つは、学んだことでどれだけ成果を出せるかという「アウトプット」の成果です。我々にとって大事なのは後者で、研修を受けた方が、職場で活躍できたかが指標になると思います。

研修のモチベーション維持はどのようにされていますか?

西垣

講座を展開する際には、講座の目的や効果が伝わりやすいよう、研修所側で考えた副題を付けるなどの工夫をしています。しかし、昨今は働き方改革などで、昔より確実に忙しくなっていますから、モチベーション低下は我々も懸念しているところです。教育は、本来は本人の未来に向けての投資なのですが、お金も時間も労力もかかりますので、難しいところはあると思います。
ただ、近年話題のトピックの講座には人気が集まりますね。また、組織変更で担当が大きく変わり、必要に迫られて講座を受けるケースも多いです。

弊社

様々なお客様とお話しをしていると、急速に技術革新が進む中で、現在の専門分野だけで良いのだろうか、と危機感をお持ちの方が多いようです。例えば今まで化学分野を担当していた方が、構造解析や流体解析にも取り組まれるなど、長年1つの分野に携わっていた方が、薄くてもいいので他の領域の専門知識も身に付けようとされるケースが増えてきています。

西垣

垣根は少なくなってきている感じがしますね。例えばFEMをやるからといって、材料力学のすべてを学ぶ必要はないわけですし、必要だと思うことは色々試されるのはとても良いことだと思います。

今後、ますます普及していくCAE。 AIを活用したCAE技術の発展に期待

そうした方々の「入り口」の1つとしても、CAEユニバーシティの講座がお役に立てればと思います。ところで、今後CAE技術には、どのようなことを期待されますか?

西垣

今後CAEはますます普及していくと思います。やがて解析・設計者だけでなく、経営者まで使うような時代が来るでしょう。そうしたCAEの知識・経験の浅い人に、IT技術がどこまでサポートできるかに注目しています。あらゆるノウハウを集め、AIを活用することができれば、かなり設計に役立つCAEが生まれるのではないでしょうか。
ただしノウハウ収集のためには、組織の枠を超えた取り組みが必要です。CAEベンダーなのか、学会が作るのが良いのかわかりませんが、そうしたノウハウ構築につながっていくような、技術者の交流の場があると良いと思います。

ありがとうございました。サイバネットとしても、CAEユニバーシティやその他の活動を通じ、CAE技術の発展にお役立ちできればと思います。今後ともぜひ宜しくお願いいたします。
日立総合技術研修所 西垣 様には、お忙しいところご協力いただき誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。

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