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成形中の樹脂圧力分布を考慮したバンパーの金型設計

成形中の樹脂圧力分布を考慮したバンパーの金型設計

CAEのあるものづくり Vol.28|公開日:2018年2月

目次

  1. はじめに
  2. 従来の設計手法(一律の型内圧)に則った金型変形vs. 成形中の樹脂圧を考慮した金型変形
  3. 樹脂流動解析ツールPlanetsXを利用した金型設計の特長
  4. 金型設計STEP1 型締め力を下げる検討
  5. 金型設計STEP2 ウェルドラインの抑制の検討
  6. 金型設計STEP3 金型の材料費削減の検討
  7. おわりに

はじめに

本稿では「金型設計の際、金型の強度の確認に構造解析を行っている(樹脂流動解析は行っていない)」という方に向けて、樹脂流動解析と構造解析を組み合わせた、より精度の高い設計の事例を紹介します。

金型は主に2つの面からの設計が求められます。

一つは、薄いリブ形状や肉厚部を持つ製品形状に対し樹脂材料が十分に行き渡るかどうか、意匠面にウェルドラインが発生しないか、製品のそり変形は許容範囲内にあるかといった検討です。このような検討には、射出成形解析ツールが広く用いられています。

もう一つは、金型の強度が十分かどうか、例えば、何ショットもの成形に耐えうるか、型内圧による金型のたわみが起こらないかといった検討です。この検討には構造解析ツールが用いられ、ひずみや応力などの確認に利用されています。

本稿では後者の金型強度の検討に対し、CAEツール「AnsysWorkbench版 射出成形CAEシステムPlanetsX」を利用した例を紹介します。強度の評価といえば通常、構造解析の範疇だけで済むと考えられがちですが、この例では樹脂流動解析を併用することでより高精度な金型設計を目指します。樹脂流動解析で予測された成形中の樹脂の圧力分布を金型変形の検討へと展開することで、構造解析のみを使った従来の設計手法(一律の型内圧を想定する手法)では正確な予測が難しかった金型の強度設計を行います。

この事例では先ず、従来の設計手法とPlanetsXを併用した設計手法とで、金型の変形の大きさを比較します。更に、樹脂流動解析と連携するという特徴を活かして幾つかの設計上の改善点を紹介します。

従来の設計手法(一律の型内圧)に則った金型変形vs.成形中の樹脂圧を考慮した金型変形

今回、設計の対象は自動車のバンパーです。バンパーのような薄肉で大型の成形品は充填時に高い射出圧をかけて成形するため、十分な剛性を持たなければ金型の破損やバリの発生を招きます。図1に金型とキャビティの形状を示します。

図1 計算モデル
図1 計算モデル

金型の剛性の評価のため、はじめに、型内圧による金型変形の構造解析結果を示します。設計上必要な型締め力から算出された圧力を一定値として金型変形を予測した場合と、樹脂流動解析結果から得られる樹脂の圧力分布を反映し金型変形を予測した場合を比較しています。

従来の設計手法では、図2左上の図のように赤色のキャビティ領域に一定の圧力を指定します。ここでは2,000[tonf]程度の型締め力が発生します(樹脂流動解析結果から既知)ので、投影面積から平均内圧を換算後、安全率1.2を掛けて圧力としました。その結果、45[MPa]の一律荷重を与えています。

<平均型内圧の予測式>
(型締め力/投影面積)=平均型内圧
(2,000[tonf] / 5,238.23[cm 2 ])*1.2(安全率) = 458.17[kgf/cm 2 ]→約45[MPa]

一方、樹脂流動解析を使用して金型表面が受ける圧力分布を予測する方法では、以下の入力条件で射出成形シミュレーションを行い、ジャストパック時の圧力分布(成形中の最も樹脂圧が大きくなる時刻)を算出しています。算出した圧力分布は金型変形シミュレーションに連携し、荷重として定義しています。

<樹脂流動解析の入力条件>

  • 樹脂:PP(ポリプロピレン)
  • 樹脂温度:220[℃]、金型温度:40[℃]
  • 射出条件:1,000[cc/sec]
  • ゲート:1点ゲート(図1参照)
  • 保圧条件:保圧なし、ジャストパックまでの計算
  • その他:ホットランナーを使用
図2 従来手法(平均型内圧)の設計と成形時の樹脂圧を考慮した金型変形量の比較
図2従来手法(平均型内圧)の設計と成形時の樹脂圧を考慮した金型変形量の比較

図2の型開き方向への変形量結果から、樹脂流動解析で予測された荷重を与えた方がより変形量が大きくなりました。この事例では一律の型内圧を想定する従来の設計手法を用いた場合、金型の変形を過小評価している可能性があります。このままの設計で成形を進めた場合、金型変形・破損やバリの不具合が出る可能性があります。

このように金型の強度評価において構造解析と樹脂流動解析と組み合わせた方が、成形時の圧力分布などをより詳細に構造解析に反映することができ、設計の精度向上に貢献できると考えられます。

樹脂流動解析ツールPlanetsXを利用した金型設計の特長

この他にもPlanetsXを利用した金型設計には以下のように幾つかの特長があります…

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