CYBERNET

解析事例

構造解析

株式会社荏原エリオット 様

株式会社荏原エリオット 様:~コンプレッサ・タービンの開発に Ansys Workbenchを活用~

~コンプレッサ・タービンの開発に Ansys Workbenchを活用~「非常に使いやすく、非定常などの高度な解析が行えます」

概要

今回のインタビューでは、荏原エリオット様にご協力いただきました。
コンプレッサ、蒸気タービン、ガスエキスパンダ、ブロワ、ガスタービンといったターボ機械の専業メーカー、荏原エリオット様。2002年に1910年創業の米国エリオット社と経営統合し、全世界で事業を展開されています。深い知識と技術力に裏打ちされた高品質なターボ機器は、石油精製・化学分野を中心とした多くのプラントの心臓部を支えています。
ここでは、Ansys MechanicalおよびAnsys CFXを使って、コンプレッサや蒸気タービンの設計をされている部門に話をお伺いし、導入経緯や解析事例などをご紹介いただきました。

今回お話いただいた方々
生産革新推進部 部長 柏井 正裕 様
エンジニアリング統括
コンプレッサ設計部 詳細設計課 主任 高野 克之 様
タービン設計部 詳細設計課 主任 眞鍋 雅英 様

コンプレッサとタービンの専業メーカー。専用ツールならではの高度な機能と、操作性を評価し Ansys を導入。

お客様の事業内容についてお聞かせください。

柏井

荏原エリオットは産業用のコンプレッサとタービンの為のターボ機械専業メーカーです。2002年に荏原製作所気体機械事業部を荏原エリオットとして分社し、米国エリオット社との統合経営を開始しました。主に石油・ガスプラントや化学プラントで用いられるコンプレッサや、その駆動機である蒸気タービンなどを製造しています。

業界のトレンドについてお聞かせください。お客様の業界では、何が課題になっているのでしょうか?

柏井

良いものを低コストかつ最短納期で製造することが求められます。その要求は近年ますます強くなってきており、デジタルデータの活用の幅が広がっています。
例えば、十数年前にコンプレッサをモデルチェンジしたのですが、パーツを溶接で接合する製缶という手法から、材料の塊から部品を削り出す工法に変えています。これにより設計データをそのまま機械加工に活かせるようになりました。機械で行うことで人件費が抑えられるだけなく、より正確に納期の見積もりができるようになっています。
シミュレーションは、元来ターボ機械の分野では、比較的古くから普及していたと思います。ターボ機械の流れの問題は非常に複雑で、現象を詳細に理解することは困難です。さらにコンプレッサのような大型装置になると、実物のサイズで実験することもできないため、シミュレーションで得られる知見は貴重なのです。昔は米国の研究開発部門に大半のシミュレーションを任せていたのですが、日本の細かなニーズに対応するために、今では我々も日常的に様々な解析を行うようになりました。

製品の導入経緯をお聞かせください。

柏井

以前は3次元CADに付属した解析ツールで構造解析を行っていたのですが、非定常問題などの解析機能や、ポスト処理機能などに物足りなさを感じるようになり、専門メーカーのツールを導入することになりました。
そこで出会ったのが Ansys Workbenchです。当時、Ansys というと Ansys MechanicalAPDLのような、専任者向け操作環境のイメージがありましたが、Workbenchはそのイメージを覆すものでした。非常に使いやすく、CADやCAD付属の解析ツールともそん色のない使い勝手で、非定常などの高度な解析が行えます。また、当時から流体構造連成なども視野に入れていたため、構造解析だけではなく流体解析など、広範な物理領域をカバーしている点も魅力でした。

高野

Workbenchは結果も見やすいですし、ケーススタディを何回も行う場合でも、プロジェクト管理画面上で一元管理してくれるので、非常に分かりやすいです。CAD付属の解析ツールと比較しても、かなり使いやすいと思います。

解析事例をご紹介ください。

眞鍋

自分はタービンの設計を担当しており、流体解析と構造解析の両方を実施しています。双方向連成とまでいかなくても、構造解析を行う際に、流体解析で求めた圧力や温度を荷重として利用しています。
図1はタービンの流体-構造連成解析です。まず Ansys CFXによる流体解析で内圧をもとめ、得られた圧力バランスを構造解析の荷重として用い、応力を算出しています。解析規模をおさえるために構造解析はハーフモデルを利用していますが、モデルのつなぎ目の値がおかしくならないように、流体解析はフルモデルで計算しています。ここでご紹介しているのはノズル部分だけですが、実際はこの周囲も含めた計算を行っています。

図1 タービンの流体―構造連成解析

流体解析で求めた圧力分布から求めた応力分布

流体解析で求めたノズル部の圧力分布

高野

自分はインペラーやケーシングなど、コンプレッサに関わる多種多様な部品の設計を行っています。解析内容は応力解析、固有値解析のほか、インペラーは焼嵌めで軸にはめ込んで使うため、焼嵌めの解析も行っています。最近、お客様から解析結果の提出を求められることがあるのですが、利用ツールとして Ansys を指定されるお客様もいらっしゃいます。図2はケーシングの応力解析です。耐圧試験の状況を模擬したもので、水圧に対してケーシングの相当応力を算出し、健全性を確認しています。また、割り面から漏れが発生しないかどうかの評価も行っています。

図2 ケーシングの応力解析

相当応力(上部)

相当応力(下部)

圧力分布

ケーシングについての疲労問題も解析されているのですか?

高野

コンプレッサは中に危険物質が入っている場合もあり、漏れるということは絶対にあってはなりません。そのため、規格上安全率に余裕をもっており、また極力疲労解析が必要とならないよう設計しています。しかし、疲労が問題となるような場合、本解析をもとに別途疲労強度を確認しています。

Ansys の操作方法は独学で習得。サイバネットのサポートを活用。

操作方法の習得はどのようにされましたか?

眞鍋

自分や高野は入社時と導入時期がほぼ同時だったため、社内の誰かに習うというより、独学で覚えていきました。米国の研究開発部門が Ansys を活用しており、我々もかねてより現地に行くなどして交流があったため、情報交換しながら習得していきました。また、サイバネットの技術サポートは、導入当時からかなり活用してきました。今でも年に1回は、サイバネットの講師に来てもらい、若手技術者向けに基本操作のトレーニングをお願いしています。

導入当初は、どんなことに苦労されましたか?

眞鍋

モデルの簡略化です。基本的に、自分は3次元CADモデルをそのまま使って解析しているのですが、微小なRや面が邪魔になってうまくメッシュが切れない場合があります。最初のうちは何故エラーが出るのかわからず苦労しましたが、最近はコツがつかめてきました。
やはり試行錯誤するのは大事ですね。実は前職で使っていたCAEでは、メッシュは手動で切ることが多かったです。一方Workbenchは基本的に自動メッシュなので、問題があったときに何が原因かわからず最初は戸惑いました。しかし、自分で考えながらいろいろ試していくうちに、エラーの原因や対処方法の見当がつくようになりました。

高野

毎回、解析の内容は大きくは変わらないので、一度覚えてしまえばスムーズなのですが、メッシュには時間をかけています。メッシュの大きさや形状は精度にも影響がありますし、3次元CADモデルに微小な隙間があったりするとうまく切れないことがあります。
その点、最近の Ansys では、メッシュが切れているところと切れていないところを、色分けして表示する機能がありますね。原因を特定できるので便利に使っています。

眞鍋

指定したパス(経路)や、任意の計測点の解析結果をまとめて取得できる機能が便利です(パス結果取得機能)。数値の推移が一目瞭然なので傾向をつかみやすいです。昔は、一つ一つ計測点を選んで、さらにそれらの点同士をつないでグラフを作成していましたが、この機能でかなり楽になりました。

ありがとうございます。こちらはACT(ApplicationCustomization Toolkit)というカスタマイズキットを利用して開発された補助ツールです。 このほかにも無料で提供されているツールが沢山ありますので、どうぞご活用ください。

極めて高い安全性が求められるため、過去の実績は特に重要。データ管理は今後も重要なテーマ

ところで、シミュレーションする際、適切な結果を出すために気を付けていることはありますか?

眞鍋

最初に、現象を自分で予想したうえで条件設定をすることです。極端な言い方かもしれませんが、シミュレーションというのは実際に起こりうることを予測するものですよね。そこで、自分もまず起こりうることを考えてみる。逆に、わけが分からない状態でなんとなく解析をしても、うまくいかない事が多いように思います。後輩の指導をする際も、あまり細かいことは教えずに自分で考えさせるようにしているのですが、ものをイメージしてから解析しましょう、というのはいつも言っています。

今後の課題についてお聞かせください。

眞鍋

当社の業界では、実績が特に重視されます。先ほどお話ししたように、実物での実験は困難なうえに、きわめて高い安全性が求められることから、過去に似たような製品で実績があるかどうかが重要なのです。そのため、シミュレーションも今まで蓄積したデータの管理が大きな課題となります。現在、設計データや解析データはPLMツールで管理しているのですが、例えば10年後に必要になったときに、そのデータを開ける環境があるかどうか。今後ハードウェアの環境も大きく変わっていくと思います。データ量もどんどん増えていく中で、どのような管理方法が適切なのか、これからも継続して考えていく必要があると思います。

データの管理についてお悩みのお客様は多いようです。 Ansysでも「Ansys EKM」という、解析データ専用のデータ管理ツールがあり、ユーザー様からも注目をいただいていますが、そうしたソフトウェアの問題と、物理的にデータを格納するためのハードウェアの問題、両方をケアしていく必要がありますね。 当社としても可能な限りのご支援をしていければと思いますので、ぜひこれからもお気軽にご相談ください。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

株式会社荏原エリオット 柏井様、眞鍋様、高野様には、お忙しいところインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
【メカニカルCAE事業部 マーケティング部】

Ansys、ならびにANSYS, Inc. のすべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、ロゴ、標語は、米国およびその他の国におけるANSYS, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。その他すべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。本ウェブサイトに記載されているシステム名、製品名等には、必ずしも商標表示((R)、TM)を付記していません。 CFX is a trademark of Sony Corporation in Japan. ICEM CFD is a trademark used by Ansys under license. LS-DYNA is a registered trademark of Livermore Software Technology Corporation. nCode is a trademark of HBM nCode.