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流体音響解析の課題とアプローチ方法(2)
現実的な計算コストでできる流体音響解析
CAEのあるものづくり Vol.24|公開日:2016年4月
目次
- はじめに
- 主な流体音響解析の手法
- 音響解析との連成による流体音響解析事例
- おわりに
はじめに
近年は自動車や家電製品の静音性、またオーディオ機器等でのさらなる音質の追求など、音響解析のニーズが高まっています。
音の音源は代表的なものとして構造物の振動によるものと、流体運動によるものがあります。構造物の振動により発生する音を振動音といい、流体運動に起因して発生する音は流体音または空力音と呼ばれています。振動音のエネルギーが代表速度の2乗に比例するのに対して、流体音のエネルギーは4乗~8乗に比例します。そのため、新幹線騒音や航空機騒音など流速が速くなると流体音が卓越します。また、近年は自動車でもエンジン音や動力伝達機構からの騒音が大幅に低減されており、相対的に流体音の寄与が目立ってきております。
前稿(CAEのあるものづくり Vol.23 2015年11月発行)では、AnsysCFDおよび弊社自社開発の音響解析ツールWAONを使用した流体音響解析事例をご紹介しました。本稿では、前稿に引き続き、解析事例をご紹介するとともに、代表的な流体音響解析の手法の比較を交えて解説します。
主な流体音響解析の手法
流体音を計算する手法は一般に以下があります。
1. 直接計算
流れと音場を同時に解いて音源と遠方に伝播する音を解析します。音の発生から伝播までを同時に解析でき、かつ流れ場と音場の相互作用も考慮できるため、高精度でありますが、一方で非常に細かい空間と時間の離散化が必要であり、高コストとなります。
2. 音響解析との連成
音源となる流れは流体解析ツールで解き、その音源を用いて音場を音響解析ツールで解きます。音の反射や回折の考慮でき、直接計算よりは低コストになりますが、流れと音場の相互作用は考慮できません。音響解析ツールではLighthill方程式と呼ばれる波動方程式が解かれます。
3. 波動方程式の解を利用
音源となる流れは流体解析ツールで解き、その音源を用いて音場を波動方程式の解析解を用いて音場を予測します。音の反射や回折は考慮できません。多くの汎用CFDツールにはこの手法が組み込まれています。
上記の理由から、一般には音響解析との連成もしくは波動方程式の解を利用する方法がよく利用されております。また、これらの方法では音源として以下のものが考えられています。
1. 四重極音源
空間(場)に存在する音源。密度および流速から算出されます。壁の影響が少ない噴流からでる音などの主な音源になります。
2. 二重極音源
境界面上に分布する圧力。発生音に与える壁の影響が...