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構造解析

Ansysを用いた複合材料の強度予測手法

材料設計から製品設計まで

Ansysを用いた複合材料の強度予測手法

CAEのあるものづくり Vol.21|公開日:2014年11月

目次

  1. はじめに
  2. 複合材料の解析を実施する上での課題
  3. 各課題解決のためのサイバネットソリューションラインナップ
  4. まとめ

はじめに

複合材料とは、二つ以上の異なる材料を組み合わせて一体化された材料のことを指します。その歴史は決して浅いものではなく、古代建築物に見られる土壁や土器などは"藁"と"粘土"からなる立派な複合材料として認知されています。

複数の材料を組み合わせることの一番のメリットは、各構成材料の特徴を合わせ持った材料が作成できることにあります。土壁であれば、藁のもつ強靭性と粘土のもつ耐熱性を合わせもちます。もしくは藁が持つ易燃性の問題を粘土が補っているとも言えます。

かつては主に天然繊維が用いられてきた複合材料は、より特性の優れた炭素繊維やガラス繊維などの登場によって、広く様々な産業分野へと応用されるようになりました。とりわけ、炭素繊維と樹脂からなる複合材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、炭素の軽く丈夫であるという特徴を生かして、軽量化が必須課題である航空機への貢献がめざましく、さらに近年では燃費向上を目的とした軽量化のために、自動車業界への適用も積極的に進められています。

このように産業界で非常に注目されている複合材料ですが、シミュレーションに関する実績は、金属と比べると圧倒的に少ないのが現状です。本稿では、複合材料解析における有限要素法シミュレーションソフトの問題点と、それらを解決するための新しいソリューションについて紹介いたします。

複合材料の解析を実施する上での課題

複合材料には一般的な金属材料と比べると、大きく異なる特徴がいくつかあります。ここでは解析的に重要となる複合材料の特有の問題について代表的な三つを取り上げることにいたします。

<課題1. 材料のモデリング>

複合材料を構成する材料の組み合わせは無数に存在します。これは材料設計の幅が広がる意味では大きなメリットですが、金属のように画一的な材料データベースが構築できないという問題があります。材料の組み合わせが変わるたびに材料試験を行い、解析に必要な材料物性値を準備するのは大変な手間であり、製品設計の試行錯誤を低コストで行うという解析本来の有用性が薄れてしまいます。

表1 金属材料と複合材料の一般的な特徴比較表1 金属材料と複合材料の一般的な特徴比較

物性値取得における大きな問題は、材料挙動に異方性があることです。例えば繊維強化プラスチックの場合は、樹脂に比べて繊維の剛性が高いため、繊維の配向方向の剛性が、それと直交する方向と比べて極端に高くなります。解析的にこれらの材料挙動を表現するためには、様々な引張方向や純せん断方向の剛性を材料試験で評価する必要があり、等方性材料と比較して格段に大きなコストがかかってしまいます。

<課題2. 有限要素のモデリング>

有限要素モデルを作成する上でも複合材料特有の課題があります。例えば繊維を連続的にまっすぐ一方向に配向させた複合材料や、繊維を編みこんだような材料では、配向を変えた薄い層を厚み方向に積層させたラミネート構造を持たせることがあります。このときには、構造物の強度分布を最適化することなどを目的に、場所によって積層構造を変えることが一般的です。積層構造の組み合わせが複雑になればなるほど、一般的な有限要素法のツールのモデリング機能だけでは対応が難しくなります。

また、複合材料は強度分布が成形履歴に依存するという特徴も重要です。簡単なイメージを図1と図2に示しました。図1は射出成形に関して、繊維入りの樹脂を異なるゲート位置から金型内へ注入した際の繊維配向を示しています。解析には当社が開発している樹脂流動解析ツールのPlanetsⅩ ® を使用しました。このように繊維の向きは樹脂の流れの影響を受けるために、最終的な成形品の繊維配向はゲート位置に大きく依存します。

図1 ゲート位置の違いによる射出成形品の繊維配向分布図1 ゲート位置の違いによる射出成形品の繊維配向分布

図2は繊維が編みこまれた複合材料の平板を球面パンチでプレス成形した際の繊維配向を示しています。解析は陽解法解析ツールのAnsys LS-DYNAを使用しました。成形によって平板が面内方向にひずみ分布をもつため、繊維の配向分布や繊維の粗密が成形前とは大きく異なっている様子がわかります。これらの問題は、等方的な挙動である金属材料とは異なって、モデル全体に同じ材料物性値や材料主軸を定義しても十分な解析精度が得られないことを示唆しています。

図2 ファブリック素材のプレス成形品の繊維配向と繊維密度分布図2 ファブリック素材のプレス成形品の繊維配向と繊維密度分布

<課題3. 破壊・損傷の評価>

複合材料のような不均質な材料組織をもつ場合は、簡易に破壊・損傷挙動もシミュレートすることもできません。この問題は破壊のメカニズムが非常に多岐に渡ることに起因します。例えば繊維強化プラスチックの積層材の場合、破壊・損傷の起点や進展の要因には、

  • 繊維と樹脂間の界面剥離
  • 繊維の破断
  • 樹脂内の亀裂発生および進展
  • 層間の剥離

など様々なものが混在していると考えられます。亀裂進展だけを考えても、材料組織内に繊維などの硬い材料が介在していると進展が阻害されるため、進展経路は材料組織に強く依存します。すなわち、材料組織を考慮して解析を実施しなければ…

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