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構造解析

Multiscale.Simによる非線形マルチスケール解析

材料設計も含めた試作レスを目指して

Multiscale.Simによる非線形マルチスケール解析

CAEのあるものづくり Vol.18|公開日:2013年4月

目次

  1. はじめに
  2. 材料非線形解析の課題とMultiscale.Simの提案
  3. 数値材料試験と材料物性値同定
  4. クリープ数値材料試験例
  5. PSO最適化アルゴリズムと材料物性値同定
  6. おわりに

はじめに

CAEシミュレーションの導入による製品設計の完全試作レス化は、CAE技術者に期待されている最終的な目標の一つであります。汎用CAEツールが世界に浸透しはじめた1960 ~ 1970年代では、解析対象の実構造物を、当時の計算機性能で解析可能なレベルまで簡略化し、解析自由度を適度に縮退する工夫が講じられてきましたが、近年では急速な計算機の性能向上も相まって、より厳密なソリッドモデルを用いることで、設計にフィードバックできる有用な情報が今まで以上に多く得られるようになりました。

しかし、ここでいう厳密なモデル化とは、主に「実構造物の幾何学的な情報」の意味合いが強く、「材料モデルの情報」については、とりわけ材料物性値の取得が困難な非線形領域かつ異方性を有するような材料挙動に対して、厳密な取り扱いが困難とされている現状があるように思います。これには材料物性値取得に関する実材料試験の技術面 ※1 とCAEツールの機能面、各々が持つ課題に起因しているとも思えます。

本稿では、これらの課題を解決するためのソリューションとして、均質化法 ※2 をベースにしたマルチスケール解析ツール“ Multiscale.Sim”について、特に材料設計としての用途に着目して紹介いたします。Multiscale.Simは東北大学 寺田賢二郎教授ご指導のもと、日東紡績株式会社様、株式会社くいんと様とで共同開発したAnsysアドオンツールです ※3

材料非線形解析の課題とMultiscale.Simの提案

前項で取り上げた異方性の非線形材料物性値取得に関する実材料試験によるアプローチでは、試験片の準備・作成に多くの時間と労力を要することはもちろんですが、独立する6方向(単軸3成分、せん断3成分)の試験を厳密に行うこともまた困難です。クリープなどの速度依存性の問題では、試験時間のコストも決して少なくありません。

一方CAEツール側には、多種多様な異方性非線形挙動を表現するための、十分な材料モデルが標準機能として具備されていない、もしくは材料モデルがあっても、試験データから材料物性値を同定するためのカーブフィット機能がないという課題が残っているといえます。Multiscale.Simでは、不足している材料モデルは材料用のユーザーサブルーチン“usermat”を用いて独自に開発、さらにカーブフィットには先進的な最適化アルゴリズムも、その目的に合致したユーザーサブルーチン“userop”を用いて開発・実装することによって課題を克服しています。下表はAnsys単体としての標準機能とMultiscale.Simをアドオンした場合の機能比較表です。非線形機能のみを抜粋しております。2012年9月にリリースされた最新バージョンにてクリープ材料の均質化機能が実装されたことで、材料非線形の4代要素である“弾塑性・粘弾性・超弾性・クリープ”について、それらの特性を考慮した材料設計がAnsys内で実行できるようになりました。

表1 Ansys単体とMultiscale.Sim併用の機能比較
表1 Ansys単体とMultiscale.Sim併用の機能比較

数値材料試験と材料物性値同定

近年では燃費向上が要求される輸送機をはじめとした多くの分野で、比剛性の高い複合材料への期待が高まっております。これは「必要な方向にだけ必要な剛性を持たせる」ことで、構造物の軽量化を図ることが一つの目的です。すなわち、複数の材料をブレンドさせることで、所望の異方性材料特性を作る「材料設計」が必要になりますが、様々な複合構造でケーススタディを実材料試験ベースで行うことはコスト上の問題が発生します。

図1 数値材料試験の入出力情報
図1 数値材料試験の入出力情報

Multiscale.Simの数値材料試験機能は、不均質な試験片モデルに対して、Ansys内でシミュレーションに基づく仮想的な材料試験を行うことで、みかけの材料応答を評価するアプローチです(図1参照)。本手法を適用することによるメリットとしては

a. 理想的な応力場を容易に作り出すことが可能
b. 長時間のクリープ特性なども短時間で取得可能
c. 試験片内部のひずみ・応力場が評価可能
d. 特殊なノウハウを必要としない

図2 弾塑性数値材料試験の実施例
図2 弾塑性数値材料試験の実施例

図2は、弾塑性材料からなる金属組織を簡易にモデル化して単軸のサイクリック荷重試験を実施したものです。みかけの材料応答と共に試験片内部の応力・ひずみ場も…

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