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構造解析

明星電気株式会社 様

超小型衛星「WE WISH」の熱設計でANSYSを活用

明星電気株式会社 様

CAEのあるものづくり Vol.18|公開日:2013年4月

目次

今回のインタビューでは、明星電気株式会社様にご協力いただきました。
1938年、国内初のラジオゾンデメーカーとして創業された明星電気様。以来、地域気象観測システム「アメダス(AMeDAS)」や計測震度計など、私達の安全で快適な生活には欠かせない気象・防災関連製品を、数多く開発してこられました。
また、国際宇宙ステーションや「かぐや」「はやぶさ」などの人工衛星にも、明星電気製のカメラや観測機器は数多く搭載されており、日本の宇宙開発になくてはならない存在でいらっしゃいます。さらに2012年10月には、自社開発の超小型衛星「WE WISH」が国際宇宙ステーションからの放出に成功し、大きな注目を集めまた。

今回は、明星電気様で熱設計を担う、技術開発本部 装置開発部の皆様にお話を伺いました。

今回お話いただいた方々
技術開発本部 装置開発部
 主 任 水本 訓子 様
 畠山 千尋 様
 久保 和範 様

(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

水中から宇宙までをカバーする世界のトータルソリューションプロバイダー

まず、御社の事業内容についてお聞かせください。

当社は1938年の創業時、気象観測装置「ラジオゾンデ」からスタートし、「アメダス」「計測震度計」などを気象庁に納入するなど、常に日本の気象観測、地震観測の中枢を担ってきました。近年では先端技術を活かして、「水中から宇宙までをカバーする世界のトータルソリューションプロバイダー」を目指し、自然環境・防災のための多種多様な製品を提供しています。

製品は大別して(1)気象関連製品、(2)防災関連製品、(3)制御関連製品、そして(4)宇宙関連製品が挙げられます。

分野別に例を述べますと、(1)気象関連製品では、例えば気象観測装置のアメダスは、全国の1,300箇所に配置され、気象情報を提供しています。またラジオゾンデ関連では、現在では気象変化予測や温暖化防止活動に貢献するためにCO2ゾンデを開発中です。また日本全国の空港に設置されている航空気象観測装置は当社の製品で構成されています。

(2)防災関連製品は、地震や津波、台風、洪水、山崩れ、土石流など、様々な災害から人命を守るために、各種の観測装置を製造しています。例えば、気象庁から発信される緊急地震速報から、推定震度と地震発生までの余裕時間を演算し表示する「QCAST」や、強い揺れが到達する前に震度を予測する「ナウキャスト計測震度計」は、多くの団体・企業などに導入いただいています。

(3)制御関連製品では、航空管制システムなどがあります。たとえば東日本大震災の際には、当社の非常用航空管制塔システム「EVA」は、羽田空港から仙台空港へいち早く移動され、早期復旧に貢献しました。

そして(4)の宇宙製品ですが、多くの製品が宇宙ステーションをはじめ、数多くの場所で活用されています。

2010年に、小惑星探査機「はやぶさ」が無事帰還したことを覚えておられる方も多いかと思いますが、「はやぶさ」には明星電気の開発した蛍光X線分光装置が搭載されていました。その際、本装置が小惑星「イトカワ」で観測した微粒子の成分と、「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の成分が一致したことが、「イトカワ」由来だと判断する決め手となりました。

また最近では、明星電気が開発・製造した超小型衛星「WE WISH」(10cm角,重量約1.2kg)が、2012年10月4日(木)23時37分(日本時間)に、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」から、星出宇宙飛行士のロボットアームの操作により無事、放出されました。

開発期間の短縮が宇宙製品でも課題に。手戻り削減の手段としてCAEを活用

御社の活躍は、テレビや雑誌などでも多く拝見しています。そして、このWE WISHの開発にAnsysが使われたのですね。詳しくお伺いしたいのですが、まずは担当者の皆様の役割についてお聞かせください。

水本 - 私達は主に人工衛星やロケット、国際宇宙ステーションに搭載する観測機器などの熱設計全般を担当しています。

畠山 - その1つがAnsysのような解析ツールを使ったシミュレーション業務で、問題がある場合は設計にフィードバックします。また製品の熱真空・熱平衡試験や試験計画の立案なども行っています。

熱設計では、現在どのようなツールをお使いですか。

水本 - 人工衛星は惑星の周辺を回っています。太陽光の角度や惑星からの赤外線などの条件が時々刻々と変化するため、軌道解析が求められます。そこで、熱設計ではAnsysのほか、Thermal Desktopという軌道解析ツールを使用しています。両者の使い分けは、衛星の外部に搭載されて宇宙空間に直接曝される製品なのか、内部に搭載されるかです。衛星でも国際宇宙ステーションでも、宇宙空間に曝露するものは太陽光や惑星赤外の影響を受けるので、軌道解析が必要です。内部に搭載されるものはこれらの影響を受けませんので、Ansysで解析しています。

お客様の開発課題についてお聞かせください。

水本 - 宇宙環境は、地球上では想像もつかないくらい過酷なものです。宇宙機器はその環境下でも正常に動作しなくてはなりません。万一、不具合が起きても部品を交換することはできませんし、製品には極めて高い信頼性が求められます。熱設計においても、慎重に検証を重ねて、万全な熱対策をとらなくてはなりません。

畠山 - それでも従来は、宇宙製品の開発期間は非常に長く、10年前は10年前後というのが一般的でした。しかし近年、開発期間の短縮が求められるようになり、試験の代用としての解析の役割が大きくなりました。

水本 - お客様に提出する解析結果も、以前よりかなり詳細なものになってきています。当社も品質に責任を持つメーカーとして、考えられる限りの条件で解析するようにしています。

超小型人工衛星「WE WISH」の熱解析をAnsysで

水本 - こちらがWE WISHの解析事例です。サイズは10cm四方のサイコロ型をしたもので、図は中が見えるよう、3面を非表示にしています。

久保 - 上には基板があり、右下は地球の赤外画像を撮るための赤外カメラです。その隣のバッテリーは、四角いソリッドでモデリングしています。左側に付いている磁気トルカは形状が複雑なので…

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