資料ダウンロード
PCBシステム設計に求められるEMI解析環境
3次元フルウェーブ電磁界解析の必然性
CAEのあるものづくり Vol.16|公開日:2012年4月
目次
PCBシステム設計と解析環境の変遷
昨今、デジタル機器の設計では小型、高速化の要求がますます増えています。SI(Signal Integrity)信号解析やEMI(Electromagnetic Interference)解析のツールは、簡単なものから高精度なものまで各EDAベンダーから数多く提供されています。初期は簡単な解析ツールしかありませんでしたが、その後、有限要素法などを用いた3次元フィールドソルバーを内蔵する電磁界解析ツールが登場し、導入が盛んに行われました。
一方、3次元でフルウェーブの電磁界解析を行えば精度の良い結果が得られますが、設計現場のマシン環境では、実施できる解析の規模が限定されてしまったり、解析に時間がかかりすぎるなどの問題も存在します。そこで、現場でも手軽に利用できるルールチェッカーなどの簡易的なツールの導入が加速しました。
ところが昨今、再び3次元フルウェーブ電磁界解析のニーズが高まっています。その背景には、低周波レベルの信号しか搭載されていなかった製品への高速回路の導入や製品の小型化、層数削減(PCB製造コスト削減)への流れなどが挙げられます。
これらは結果的に電源やグランドの大部分を配線パターンで設計することになり、ノイズ対策が困難を増しているということを意味します。またグランドプレーンを必要とする多くのSI/EMI解析ツールでは、電源やグランドを配線パターンで設計した基板のノイズ解析を行うことができず、3次元フルウェーブ電磁界解析で解析する必要性が出てきます。そして社内関係者や顧客より、ノイズ対策を視覚的なデータで要求されるケースが増えてきました。これは設計での勘と経験によるカット・アンド・トライが、上手く機能しなくなりつつあるということを表しています。
PCBシステム設計に求められる電磁界解析の役割
今、現場で関心が高いものの1つにEMC(EMI/EMS)およびESDの対応が挙げられます。
- EMC: 環境電磁工学
- EMI: 電磁気妨害
- EMS: 電磁気妨害感受
- ESD: 静電気放電
PCB-ケーブル-筐体と言ったシステム全体の解析は、モデリングの手間や解析時間、実測との精度を考えた場合、なかなか難しいのが現状です。そのため、設計現場では経験則と併せて使えるツールを上手く利用していることも多いと思います。現在、課題となっている製品の早期市場投入、設計工数削減、また先述のニーズと照らし合わせると、PCB全体から問題となりそうな部分を手早く見つけて、その部分に着目して電磁界解析を行うことが最適な選択と言えるかもしれません。
PCB設計のフロントローディング設計フロー
SIのフロントローディングは一般化しつつありますので、それを踏まえた最も簡易的なフロー図です。
- SIフロアプラン: 仕様に基づいた信号解析からPCBコンストレイントを決定
- PCBレイアウト:配線コンストレイントに従った配置配線
- SI検証:レイアウト後解析
- EMIチェック:EMI危険箇所の検出
- EMI解析: 高速信号部分やEMI危険箇所について詳細検証(3次元フルウェーブ電磁界解析)
- EMI対策:チェック解析結果や経験則による対策
PCBシステム設計に求められるEMI解析
~Ansys製品を用いた3次元フルウェーブ電磁界解析~
ここまでで述べたように、近年のPCBシステム設計ではSI高速信号線に対するEMI(電磁界放射)の高精度な解析、理想グランドプレーンを持たないデザインのEMI解析、問題対策部分のデータによる明示などが求められています。これらの課題に対して…