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熱流体解析

構造解析技術者のための流体解析入門(3)

熱流体解析の概要

構造解析技術者のための流体解析入門(3)

CAEのあるものづくり Vol.15|公開日:2011年10月

目次

1. はじめに

流れに加えて温度分布も確認したい場合、流れの基礎方程式(連続の式、運動方程式)に加えエネルギー方程式を考慮する必要があります。エネルギー方程式は流体の圧縮性(密度の圧力依存性)の考慮 の有無により理論的な扱いが異なりますが、圧縮性を考慮しなければならないケースが限定されること、及び理論的な扱いがより簡単なことから、本稿では非圧縮性と仮定して説明します。

※ 一般にマッハ数(流速と音速の比)が0.3以上の流れでは、圧縮性の影響が無視できません。

2. 熱の考慮

構造解析で熱応力解析を行う場合、よく伝熱解析との連成解析が行われますが、流体解析においても同様に伝熱解析(エネルギー方程式)と流体解析(流れの基礎方程式)の連成解析がよく行われます。以下に非圧縮性の基礎方程式(1)、(2)とエネルギー方程式(3)を示します。

ここでT:温度、C p :定圧比熱、k :熱伝導率、q :生成(発熱または吸熱)項です。(3)式の左辺第2項(移流項)に流速が含まれており、(1)~(3)式が連立方程式になっていることがわかります。なお、Ansys FLUENTやAnsys CFXなどのCFDツールでは、固体を含む熱流体解析(共役熱伝導解析;Conjugate Heat Transfer)を行うことが可能ですが、固体領域では流れを考慮しないため、(3)式の左辺第2項が省略され、熱伝導方程式になります。この場合、流体-固体境界面において熱の授受が考慮されます。

3. 浮力

一般に周囲の流体より温度の高い流体は比重が小さくなり、温度の低い流体は比重が大きくなります。そのため重力場において流体に温度差が発生すると次式で表される浮力が発生します。

ここでΔρ:密度差、g :重力加速度で、(2)式の外力項f に相当します。Δρ > 0のとき周囲の流体よりも比重が大きいため下降する方向に浮力が働き(f < 0)、Δρ > 0のとき上昇する方向に浮力が働きます(f > 0)。
このように浮力を考慮する場合には、密度ρが未知数となり、流速三成分(u, v , w)と圧力p 、温度T と合わせて未知数の数は6つとなります。これに対して方程式の数は(1)~(3)式((2)式は流速三成分で3つの方程式)で5つとなりますが、未知数の数より1つ少ないため連立方程式が閉じず、解を得るためには密度と温度の関係を追加する必要があります。
これは熱流体解析を行う場合に、密度の温度依存性に関する追加の設定が必要であることを意味します。代表的な設定を以下に紹介します。

3.1 密度 vs. 温度データテーブル

実験や文献などから得られた離散データを入力します。

3.2 熱膨張係数(体膨張係数)

密度の温度変化を線形と仮定し、密度変化を以下のように近似します。

ここでαは1[K]当たりの密度変化率を表す物性値で、熱膨張係数または体膨張係数と呼ばれ、以下の式で定義されます。

詳細は割愛しますが、(5)式はブシネスク近似(Boussinesq Approximation)に基づいており、扱いが簡単になる一方、密度の温度依存性を線形化しているため他の手法と比較して温度の適用範囲が狭いことが特徴です。

3.3 状態方程式

図1 密度の温度変化を考慮する方法図1 密度の温度変化を考慮する方法

密度の温度依存性をρ = f(T)という関数で表します。例えば理想気体の状態方程式では、ρ = p / RT(p:圧力、R:気体定数、T:絶対温度)という関数で表され、密度が温度に対して反比例します。これらの手法を模式的に表すと図1のようになります。

4. 強制対流と自然対流

図2 強制対流(ラジエター)図2 強制対流(ラジエター)

重力場において流体に温度差が形成されれば、浮力は多かれ少なかれ流体の流れに影響を与えますが、解析において常に考慮する必要はありません。例えばファンを駆動力とする流れにおいては、ファンが流体に与える慣性力と比較して浮力は無視できるほど小さく、考慮しないことがよくあります(その分計算負荷も小さくなります)。このような流れを強制対流(Forced Convection)と呼びます(図2)。
一方、ファンなどの流れの駆動源が無く、静止流体中に設置された発熱体の周囲では、ある程度の時間を置くと浮力による対流が卓越します。このような流れを自然対流(Natural Convection)または自由対流(Free Convection)と呼びます(図3)。
また、解析対象によっては両者が共存し、明確に区別できない場合があります。このような場合、混合対流(Mixed Convection)と呼びます。自然対流と混合対流では浮力の影響が共に無視できないため、解析において3節で説明した密度の温度依存性に加え、浮力の設定も必須となります。ここでは、強制対流と自然対流についてもう少し掘り下げて解説します…

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