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構造解析

サンデン株式会社様

目指すは試作レス。AnsysやOptimusの逆解析を活用した、開発スピードアップのための取組み

サンデン株式会社様

CAEのあるものづくり Vol.13|公開日:2010年10月

目次

  1. 解析から実験、測定、ツール利用環境の構築まで。多方面から製品開発を支援する、専門家集団
  2. 究極の課題は、試作レス実現のための環境づくり
  3. Ansys DesignSpaceを導入後、設計者のCAE利用が拡大。現在では上位ライセンスにニーズが集中
  4. 試験コスト低減のため、はんだの疲労解析を実施。実験結果をもとに、妥当性の検証は徹底的に
  5. コンプレッサの試験条件の特定に最適設計支援ツールOptimusを利用。解析で行きづまった時は「逆解析」※が有効
  6. 「解析実践塾」など、現場のニーズに直結したCAE教育活動を展開。同時に基礎理論の教育も
  7. Ansys Workbench環境の操作性は解析技術者にも有効。今後求められるのは、業界共通のインターフェース

本インタビューでは、サンデン株式会社様にご協力いただきました。
「Delivering Excellence」をコーポレートスローガンに掲げ、常に高品質な「製品」「システム」「サービス」の創造と提供をめざすサンデン様。「冷やす・暖める・電子」をコア技術に、自動車や住環境、流通システムの快適空間を追求しておられます。中でもカーエアコン用のコンプレッサでは世界的に高いシェアを誇り、国内はもちろん、世界各国の車両メーカーに供給されています。
今回は、「Delivering Excellence」の中核を担う基盤技術開発部の皆様より、解析や最適化ツールを活用した取組みについてお伺いしました。

今回お話いただいた方々
開発本部 基盤技術開発部
 主任技師 佐藤 泰造 様
 主任技師 井上 達人 様
      手島 淳夫 様
      山形 葉子 様
(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

解析から実験、測定、ツール利用環境の構築まで。多方面から製品開発を支援する、専門家集団

皆様の担当業務についてお聞かせ下さい。

佐藤 - 我々が所属する基盤技術開発部では、他部門の依頼に応じて、解析や実験、測定など、様々な方法で全社の製品開発を支援しています。また利用ツールの取りまとめも行なっており、私はAnsysの契約関連をはじめ、社内のCAE利用環境の構築全般も担当しています。

井上 - 私は、当社の主力製品であるコンプレッサの各種解析を行なっています。入社は1989年、構造解析を始めたのは1993年頃です。当時はメッシュを手で切る事が当たり前だったので、基礎理論はかなり勉強しました。その頃は別のツールを利用していましたが、コンプレッサの開発部隊に異動したことをきっかけにAnsysを使い始めました。

手島 - 私の入社は2001年です。入社当時は自販機やショーケースの解析を行っていましたが、今は当部署でコンプレッサの新商品開発における設計支援を行っています。設計チームと連携しながら、少しでも試作レスに近づくために日々解析をしているところです。

山形 - 私は2006年に入社しました。当時は実験を行っていましたが、2年程前にこの部署に異動になり、鉛フリーはんだの疲労や、ボルトのゆるみなどの要素技術の開発に携わっています。

御社の取り扱い製品についてお聞かせ下さい。

佐藤 - 大きく分けて自動車機器システム、店舗機器システム、自動販売機システム、そして住環境機器システムの4つの体系があります。
解析はどの分野でも行っており、例えば自動販売機の扉の強度を評価するためにAnsysを使っています。自動販売機は重いのですが、実は非常に薄い鉄板でできており、いかにして剛性を保つかが重要です。自販機は防盗性の問題もありますし、扉の開け閉めでヒンジにも無理がかかるので、たびたびAnsysで解析しています。

しかし、特に多いのはコンプレッサ系です。コンプレッサの形状は極めて複雑ですし、軽量化のために肉盗みもギリギリのところまで行なっています。また生産効率向上のためには、アールの大きさを調整するなど、作りやすさも無視できません。これらの条件を満たすために、膨大な数の解析を行なっています。

究極の課題は、試作レス実現のための環境づくり

御社の業界では、どのような問題が重要課題になっていますか。

佐藤 - 我々のお客様からは、信頼性の強化とともに、より一層の短納期化を求められています。またコスト削減や生産性の向上も不可欠です。これらを満たして、ライバルメーカーとの競争に勝っていくためには、どうしてもCAEが必要になってきます。

手島 - 加えて、自動車メーカーのお客様からは、実験だけでなく解析結果の提出を求められることが増えています。実験でなぜこのような結果が出たのか、解析の数値データを用いて理論的に説明する必要があるのです。

佐藤 - 当部署はこうした課題の中でも、短納期化、つまり開発のスピードアップを重点課題に掲げています。そのためCAEへの投資など、スピードアップのための施策は積極的に行っています。
今はAnsysをメインに使っていますが、その他にも磁場や流体、機構など、様々なツールを導入しています。

また、我々にとっての究極の課題は試作レスです。試作レス化するためには、どのくらいの解析精度が必要かとか、技術者のスキル、必要なライセンス数など、考えるべきことが沢山あります。完全に試作が無くなることはありえないかもしれませんが、我々はそれを目指すべきだと考えています。

特に今取り組みたいのは、技術者が気軽にCAEを使えるような環境づくりです。CAEというと敷居が高いと思われがちですので、その先入観を払拭したい。設計計算を楽に行うために、Excelや電卓感覚でCAEを使ってもらうためにどうするべきか、日々検討を続けています。

井上 - 同時に、実験との相関を取っていくことが不可欠ですね。電卓は、やはり信頼して叩いてほしいですから。人によって叩き方も違えば答えも異なるというのでは困ります。
特に設計部門では、様々な設計者が日々の設計業務の中で解析を使っていますから、失敗は許されません。できるだけ使いやすく、かつ失敗しないようなCAEの利用環境を整えていくことも我々のミッションだと思っています。

Ansys DesignSpaceを導入後、設計者のCAE利用が拡大。現在では上位ライセンスにニーズが集中

Ansysの導入経緯についてお聞かせ下さい。

井上 - 1990年前半に、クラッチの電磁場解析の目的でAnsys Emagを導入したのが最初だと思います。そして2002年に開発リードタイムの短縮を目的に、設計者向けにCAEを展開することになりました。いくつかのツールを検討した結果、すでに解析部隊はAnsysを利用していたことと、CATIAのデータの読み込みが非常にスムーズだったことからAnsys DesignSpaceを導入しました。

その後、設計者の間で利用が広がり、やがて線形解析では機能が足りなくなりました。今ではAnsys Mechanicalのような上級ライセンスにニーズが集中しています。
昔はモデルや条件を単純化することが当たり前でしたが、今の設計者にはその時間がありません。CAD形状をそのまま使って、できるだけ現物と同じ接触条件で解析するために、大変形や接触解析といった上級ライセンスの機能が求められています。

佐藤 - 実際と同じ条件を与えた解析なら、お客様にも説明しやすいですよね。また、アセンブリモデル丸ごとの解析なら、計算時間はかかっても技術者の工数はかかりません。計算時間もHPCを使えば改善されるので、当社ではHPCをかなり活用しています。

試験コスト低減のため、はんだの疲労解析を実施。実験結果をもとに、妥当性の検証は徹底的に

具体的な解析事例についてお聞かせ下さい。昨年のAnsysConferenceで発表いただいた鉛フリーはんだの疲労解析事例(図1)は特に人気の高い講演の1つでしたが、こうした解析が必要となった背景はどのようなものでしたか。

山形 - 電動コンプレッサのインバーターに利用するはんだの開発です。現在、はんだの信頼性評価では熱衝撃試験を行っていますが、これは基板を恒温槽に入れて、-40度程度の低温から120度程度の高温まで、数千サイクルもの温度荷重をかけていくものです。これを仕様変更の度に行なうと、コストも時間もかかってしまうので、解析で試験回数を減らせないかと考えました。

手島 - 試験を外注する場合、そのコストは試験期間によって決まります。お客様からのご要望で熱衝撃試験は2 ヶ月にも及ぶことが多く、1回の試験につき百万単位でコストが発生します。それを解析でもっと絞り込めないかと。

山形 - この解析で苦労したのは、局所的にひずみが発生するため、メッシュサイズを変更すると結果が変わってしまうことです。そこで解析の妥当性を確認するために、実際に熱衝撃試験を行ってサイクル毎の基板の様子を観察し、亀裂が入ったサイクル数を調べました。具体的な観察方法は、はんだを慎重に輪切りにし…

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