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構造解析

問題解決支援ツールによる「CAEを用いた試作前フェイズ」の効率化

問題解決支援ツールによる「CAEを用いた試作前フェイズ」の効率化

CAEのあるものづくり Vol.10|公開日:2009年3月

目次

はじめに

「Ansysを用いて熱や構造を解析する」といったComputer Aided Engineering(CAE)は、不具合を予測し、早い段階での対処を可能にします。その結果フロントローディングの質を向上させ、ものづくりには欠かせない存在と言えるでしょう。

一方で、CAEを導入するだけでは他社との差別化を図ることは難しく、より深い視点を見出すことが必要となってきています。競合する特許をどのように回避しながら開発するか、コストをかけずに問題を解決するアイディアをどう生成するか、目の前の不具合に対処するためにどうやって適切に問題を絞り込むか、などはCAEツールに頼れる分野ではありません。具体的な策は、担当技術者や企業内部の知見によるところが大きいのではないでしょうか。今後は、このように点在している各知見を共有し、それらを活用するための環境構築に取り組むかどうかが大きな差を生むと考えられます。

本稿では、知識ベースを利用した問題解決ツール「Invention Machine Goldfire (脚注1) 」を用いたアイディア生成と問題の絞込みとを行なうことの有用性を説明し、GoldfireをCAEツールと共に利用する事によって製品の開発や不具合改善などを効果的に行った事例 (脚注2) を2つご紹介いたします。

アイディア生成の支援

不具合の改善、変更された仕様への対応、新規開発などを手がける際には、往々にして「燃料消費を抑えたいのだが出力は維持したい」、「振動特性を変更したいのだが重さや形状はなるべく変えたくない」、といったトレードオフに直面します。ある意味「最適な状態」である「現状」を、何らかの理由で変更しなければならないとなると、何かしら問題が現れるのは必然と言えるでしょう。これらのトレードオフを折衷案や妥協なしに克服するためには、新しい「工夫」が必要です。あるいは、トレードオフを克服したときに、新しい技術が生まれるかもしれません。

Goldfireで利用できるTRIZ(発明的問題解決理論)は、このような点に着目した手法です。過去の発明を分析し、トレードオフを克服する考え方のパターンを整備した「発明原理」という知識ベース (脚注3) を持ち、これを用いることで上述のようなトレードオフを克服するための発想を効率的に行う事ができます。製品や技術の改善などに取り組む際、現状確認やアイディア検証のためにCAEは大変有効ですが、「アイディアを生成する」という段階にTRIZを導入すれば、試作に至るまでの効率をさらに向上する事が可能となります。

このような取り組みの1例として、「バルブディスク (脚注4) の改善検討」の事例をご紹介します。図1はその検討の流れです。改善の目的は、バルブディスクに生じる応力を許容範囲にとどめながら、バルブを正確に開け閉めできるようにすることです。

図1 CAE+Goldfireによる試作前フェイズの手順図1 CAE+Goldfireによる試作前フェイズの手順

まず、有限要素法による構造解析を行った結果、条件を満たすようなディスクは既存のディスクの中には存在しないことが分かりました。多大なコストと時間のかかる新規開発はできるだけ避け、「既存のディスクで条件を満足するには?」という問に答える都合の良いひらめきが必要です。
そこで、TRIZを用いてアイディア出しを行ないます。課題を克服するために問題となっている状況を次のように書き出します。

  • バルブのバタつきを抑え正確に開けるためには、ディスクは厚く(硬く)すべき
  • ディスクの応力の最大値を抑えるためには、ディスクは薄く(柔らかく)すべき

このようなトレードオフの状況を技術的矛盾(Engineering Contradiction)と呼び、上述の発明原理はこの状況を打破しうるアイディア生成を支援します。今回の事例では、この発明原理を用いて「標準のディスクを複数枚組み合わせて使う」というアイディアを得るとともに、このアイディアを有限要素解析により検証しました。これにより効果的な開発検討作業が実現され、さらに、このアイディアで特許を取得しています。

問題の本質を捉え、絞り込みを支援

CAEソフトウェアは、与えられた条件に対して決められた規則で計算し、結果を返します。つまりは「何をどのような条件で解析するのか」を適切に設定することが最も重要…

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