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構造解析技術者のための流体解析入門(4)
流体解析の作業工程
CAEのあるものづくり Vol.16|公開日:2012年4月
目次
はじめに
ここまでの連載では流体解析を行うにあたって“これだけは知っておくべき”という内容について、特に初歩的な理論に焦点を当てて説明してきました。解析については断片的に触れてきましたが、今回、実際の作業について解説します。
流体解析といっても、形状作成、メッシング、解析条件の定義、計算実行、ポスト処理という一連の作業フローは構造解析などと特に変わりませんが、現象の違いを反映して各工程で流体解析独特のポイントがあります。
紙面の都合上概要を述べるに止まりますが、詳細については文末のセミナーへの参加を是非ご検討ください。
形状作成
通常CADで作成する形状は構造物だけです。流体解析を行うには、構造物周囲または構造物によって囲まれた領域を流体領域の形状として作成する必要があります(図1)。
解析対象はもちろん流体領域ということになりますが、構造物については構造物の伝熱を考慮する場合以外は特に必要ありません。したがって、流体領域は構造物形状によってくり抜かれた形状となります。
ポイント(1) ~形状修正~
構造物の形状が詳細に作り込まれていると、流体領域の形状も複雑になります。このような場合、メッシュ作成時のエラーやメッシュ品質の低下、モデル規模(節点、要素数)の増大による計算時間の増加などが懸念されます。このような問題を避けるため、形状の修正や簡略化が推奨されます。例えば、流れへの影響が無視できるような微小な突起や段差、隙間などを削除することにより、メッシュが作成し易くなり、またメッシュ品質が向上すると共に、これらのフィーチャーの周囲でメッシュが過度に細かくなってしまうことが回避できます。その結果、計算時間を短縮することができるため、形状修正に時間を要するものの、計算時間、結果処理まで含めた解析作業全体に渡る工数を短縮できる場合が多く、効率的です。
ポイント(2) ~対称モデル~
構造解析では、形状が対称で物性や荷重条件も対称であればモデルの対称化が可能で、モデル規模を大幅に減らすことが可能です。流体解析においてもモデルの対称化について事前に検討することが望ましいですが、形状、物性、境界条件すべてが対称な場合でも対称化できない場合があるので注意が必要です。図2は円柱周りの流れで、左端面に対して一様な速度の流入条件を与えています。形状、物性も対称であることからモデルを対称化できそうですが、レイノルズ数の値によっては円柱の下流において非対称な流れが発生する場合があります。これは流れの非線形性によるもので、対称モデルにしてしまうと現実とは異なる解析結果になるため、全体モデルで行わなければなりません。
メッシング
メッシングの場合でも他の解析と同様に、物理量の変化が大きい領域でメッシュを細かくします。どの領域で物理量の変化が大きいのか判断するには流れ現象を十分に知っている必要があり経験に依るのが現状ですが、あらゆる流れで重要な領域があります。それは壁面近傍領域で…