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解析事例

電磁界解析

I-PEX株式会社 様

I-PEX 株式会社様:Ansysの活用で実測値に近い解析が可能に。開発のリードタイムも短縮

概要

今回は、スマートフォンやPC、車載用などさまざまな分野のコネクタ製造で知られるI-PEX株式会社様の研究開発、商品開発部門を訪問しました。同社は、高周波や高速伝送の解析ニーズが高まる中で、取引先からの要望が多いAnsys HFSSを選定。HFSSを含む電磁界解析に関するソフトウエアを利用できるフルパッケージAnsys Electronics Enterpriseを導入しました。熱解析ツールなども併用して複合した解析を実施し、解析の効率化を進め、開発リードタイムを短縮した事例をお聞きしました。

今回お話をお伺いした方々(左から)

電子部品事業部 研究開発部 光技術課 福地和紀様
電子部品事業部 研究開発部 RF技術課 福嶋隆広様
電子部品事業部 商品開発部 解析課 細谷武史様

国内外問わず、幅広い市場へコネクタを提供

事業概要と担当されている業務を教えていただけますか。

福地

当社は、スマートフォンやPC、車載用を中心にさまざまなコネクタの設計・製造を行っています。国内のみならず、海外企業とのお取引も多くあります。我々は電子部品事業部の開発部門に所属しています。私は研究開発部の光モジュールなどの開発を行う光技術課に所属し、熱解析およびSI/PI※系の解析に従事しています。

細谷

私は商品開発部の解析課に所属しています。コネクタを中心に、顧客要望対応や商品開発部内の電磁界解析・熱解析などに従事しています。

福嶋

私は研究開発部のコネクタやアンテナ設計を行うRF技術課に所属し、設計や解析を行っています。

設計・製造されているコネクタの一例(画像提供:I-PEX株式会社)

Ansys HFSSの選定は、取引先からのニーズが高いことが決め手

高周波3次元電磁界解析ソフトウエア「Ansys HFSS(以下HFSS)」を導入したきっかけは何でしたか。

細谷

ここ数年、とくに高周波や高速伝送部品を扱う顧客において、電磁界解析ツールを自社で所有し3次元解析をすることが一般的になってきました。その影響で、当社に対して3次元コネクタモデルをそのまま提出してほしいという要求が非常に増えました。3次元モデルには機密情報であるため、ツール上で形状をマスクした暗号化モデルを作成するのですが、要求されるデータ形式の多くはAnsysのHFSSモデルでした。そのため、HFSSを2018年頃に導入しました。


導入にあたり、HFSSに加えてAnsys SIwave(プリント基板、BGAパッケージ向けSI・PI・EMI解析ソフトウエア。以下SIwave)、Ansys Icepak(電子機器専用熱流体解析ソフトウエア。以下Icepak)、Ansys Maxwell(2次元/3次元電磁界解析ソフトウエア。以下Maxwell)などを1つのプラットフォームで使用できることから、電磁界解析フルパッケージ「Ansys Electronics Enterprise」にしました。HFSSを指定するお客さまは本当に多く、営業担当からの話では、「HFSSでモデルを作成できます」と言えることで、営業提案がしやすくなったと聞いています。

導入効果:実測値に近い解析が可能に。開発リードタイムも短縮

HFSSを中心としたAnsys製品の活用方法と、導入の効果を教えてください。

福地

解析内容や顧客の要求により暗号化したモデルを提供しますが、HFSSで解析すると、暗号化モデルであっても、もとの解析モデルから出した解析結果とほぼ同じになります。暗号化モデルを提供することでお客さまの方で任意の状態で解析を行うことができ、やり取りがスムーズになります。

細谷

解析課では一部連成の解析をしています。SIwaveで基板の設計データを取り込み、実機のモデルをそのまま解析モデルに反映して、必要なところだけ切り抜いてHFSSに持っていきます。そこに当社のコネクタモデルを搭載して電磁界解析を行います。複合的な解析をシームレスにできて便利ですね。基板の解析を一緒にお願いします、といった要求があった時に、1つのツール内でできるのは非常にありがたいです。

福地

製品単体の場合や基板込みの場合などさまざまな状況において、基本的な設定だけで実測に近い結果を出せています。下図は基板込みのモデルで、グラフの赤色が実測値、青色が解析値です。ほぼ同じ結果になっていることがわかると思います。

福嶋

RF技術課では3名ほどがHFSSを使用しています。他社ツールではできなかった解析でHFSSだとできることがあり助かっています。例えば入力部の形状において、他社ツールでは入力部から3メッシュが同じ形状でなければならず、斜めや曲線を描く形状の場合、形状が変わるため、解析出来ない問題がありました。一方で、HFSSは複雑な形状の場合も問題なく解析ができます。実際に基板を作る上では形状が複雑になってくるため、HFSSではより現実に近い解析ができる点がよいと感じています。

福地

また、Icepakに関しては、以前は基板そのままのモデルではメッシュ数が約2億と膨大にあり、解析計算自体がまわらず困っていました。そこで、サイバネットさんのサポートに相談したりセミナーに参加したりして、基板の作成やメッシュの作成方法を学びました。教わったことを実践すると、メッシュが大幅に減り、なんと約2時間で解析できるようになりました。

福地

IcepakとMaxwellの同時使用もしています。電流をこれだけ流した時に、その電流によってどれくらい発熱するのかを見るといった解析をすることが多いですね。コネクタで交流信号を入力して解析しています。

導入時には想定していなかったのですが、Icepakの活用により、開発のリードタイムを短縮できています。一般的な製品設計では、製品を開発・試作・実測して、だめならはじめからやり直しという手戻りが発生します。しかし、あらかじめIcepakで熱解析を行うと、解析結果をもとに試作の段階で対策をうてます。例えば、想定より高温の結果が出てしまった時に、部品にどのくらいTIM(Thermal Interface Material)材が必要かといった対策を検討して、最初から設計に盛り込めます。このように、今まで気付かなかった部分を予測できることで、開発期間の短縮につながっています。

サポートのきめ細やかな対応やサポートサイトの情報に助けられている

先ほど、サポート担当からメッシュ作成方法を学んだとのお話を伺いましたが、サポートはいかがですか?

細谷

最初は、使い方でわからないことがあれば何でも聞こう、というスタンスで相談していました。質問させていただくと同時に、自分のスキルもどんどん上がっていったことを実感します。基本的にはメールのやりとりで完結していますが、どうしても解決しないという時には、Web会議やモデルをお渡しして解析していただくこともあります。サイバネットさんのレスポンスは非常に早く、毎回助かっています。
Webのサポートサイトでは、基本的な設定などがわかる資料が揃っています。単に操作方法だけではなく、考え方も解説されていて参考になります。これがなければ間違った解析をするところだった、ということもありました。

福嶋

サポート情報は量的にもかなり揃っていますね。サポートサイトで検索して資料を見れば、ある程度のことはできます。実際の事例集もかなり充実していると感じ、非常に満足しています。

サポートがお役に立てているようで嬉しく思います。各種セミナーも参加してくださっていますね。

福地

はい。サイバネットさんはたくさんセミナーを開催されていますよね。気になるテーマのセミナーを見つけたときに参加して学んでいます。メンバーの教育の機会にもなるので、今後の開催も期待しています。

広い視野をもつ設計者・解析者の育成のためにHFSSを活用したい

今後はどのように解析ツールを活用していく予定でしょうか。

細谷

私たちの解析課としては、設計者もHFSSを使いこなすという状況を目指したいです。設計者は機械系の出身が多いこともあり、電磁界解析をするのは解析担当者、とこれまでは分業してきました。しかし、簡易的で良いので設計者も電気的な解析ができると全体の作業効率が良くなります。設計者のスキルアップにもつながりますし。教育も兼ねて設計者自身がHFSSを使えるようにしていきたいと考えています。
また、これまではコネクタ単体で考えがちでしたが、今後は実装される基板も含めた特性検証が重要になりますし、さらに電源や信号源などシステム全体を体系的に把握できるゼネラリストの育成に力を入れたいと考えています。その上で、さまざまなことが1つのプラットフォームでできるツールは非常にありがたいです。

福地

電子機器の熱流体解析のニーズが増えてきていると感じますので、HFSSとIcepakやSIwaveとの連成解析に取り組んでいきたいと考えています。特にIcepackは社内でも広めたいです。

福嶋

RF技術課ではアンテナを扱っているので、EMI(electromagnetic interference:電波障害)やEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)のような、アンテナから出る電波がどのように製品に影響を与えるかが主軸になっていくと思います。その辺りの規格に則った、コンプライアンステストといった環境を再現した解析を行っていきたいです。

さいごに、サイバネットへ期待することがありましたらお聞かせください。

細谷

とても親身にサポートしていただいているので、引き続きよろしくお願いします。またAIを活用した解析の効率化などがあるとよいと思っています。誰が解析してもそんなに変わらないという部分では、より自動化が進めばよいと思います。たとえばこのモデルであればこのような設定がよいという風に、設定がデフォルトで入ると便利ですね。目的に応じて設定を自動化すれば、ヒューマンエラーの削減にもなると思います。

福嶋

求められる技術分野は広くなってきており、Ansys製品それぞれのツール連携が必須になってくると思います。分野をまたいだ内容も研究開発として取り組んでいかなければならないと思いますので、今後とも手厚いサポートをお願いします。

お忙しいところ、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。

電磁界解析に関するAnsys各製品のご活用成果をお聞きすることができ、大変嬉しく感じました。今後I-PEX様の教育の面でも貢献できればと思っております。しっかりサポートさせていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

注釈

※SI/PI解析:SI解析(Signal Integrity)高速信号を検証する「シグナル・インテグリティ」(波形の品質)、PI解析(Power Integrity)電源を検証する「パワー・インテグリティ」(電源の品質)。どちらもプリント基板における代表的なシミュレーション。

2024年8月取材
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※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

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