CYBERNET

解析事例

アルティメイトテクノロジィズ株式会社

高度なPCB設計サービスに、Ansysの電磁界解析ツールを活用

「シミュレーションという“共通言語”を持つことで、お客様との連携がスムーズにできる。このメリットは大きいです。」

左から池田様、伊東様、内海様、大長様

今回のインタビューでは、アルティメイトテクノロジィズ株式会社様にご協力いただきました。
Right The First Time Design「最初から正しい設計をする」 - デジタル家電の急速な進化を背景に、飛躍的に高度化したプリント基板。業界の厳しい要求に応えるため、Ansys HFSS 、AnsysSIwaveなどの解析ツールを活用した高度な設計サービスを提供しつづけてこられました。近年では自動車向けの基板設計にも取り組まれ、活躍の幅をさらに広げていらっしゃいます。
またマレーシアに現地法人Ultimate Technologies Asia Sdn. Bhdを設立され、マレーシア政府の支援のもと、大学・大学院で電気電子工学を専攻した現地スタッフとともに、東アジア地区へ事業展開する企業向けの技術支援も実施されています。

ここでは、代表取締役 内海 哲 様にお話をお伺いしました。
(以下、お客様の敬称は省略させていただきます。)

Ansys製品をはじめとしたシミュレータを駆使し、高度な基板設計サービスを提供

御社の事業内容についてお聞かせください

内海

当社は今まで、薄型テレビ、タブレット端末等に代表される情報家電製品など、年間数百万台という規模で生産される製品のPCBを設計してきました。
シミュレーションは比較的早くから導入しており、設計初期段階からSPICE系シミュレータとAnsys SIwaveやAnsys HFSSを連携させたフルウェーブ解析を行っています。これにより問題を事前に予測し、高速信号の伝送に最適なスタックアップや配線経路を決定しています。今まで、LSIの開発用ボードから最終製品への組み込みまで、一連のPCB設計を請け負わせていただいていたため、PCB以外の要素、例えばパッケージ、チップとの関係まで俯瞰しながら設計ができる点は、当社の強みの一つだと考えています。
また生産性・品質・機能を兼ね揃えた製品設計のために、プリント基板CAD運用での設計ルールセットを自動化したり、製造ルールのチェックツールを開発するなど、PCB設計のトータルマネジメントシステムもご提供しています。

なお2001年には、マレーシアに現地法人を設立し、マレーシア政府が推奨するMultimediaSuper Corridor(MSC)構想のステータスカンパニーとしても活動しています。ここでは設計や解析業務のほか、語学力(英語・中国語)を活かしてレポート作成や技術調査なども行っています。

お客様は、やはりエレクトロニクス業界が多いのですか?

内海

従来は取引先のほとんどが電機メーカー様、ICベンダー様だったのですが、最近では自動車業界のお客様からも依頼をいただくようになりました。
ご存じのように、自動車業界は検査基準が厳しく、些細な回路のエラーも許さず人命を守ります。そのため家電製品よりはるかに長い開発期間をかけて、実験による評価を繰り返しながら製品の完成度を高めていきます。そのため実験結果とシミュレーション結果の比較もじっくり行っています。当社も、過去にお客様が設計した基板を、一度シミュレーションで評価させていただき、実際にお客様が行った実機試験の結果との差を何度も何度も詰めていきます。最初は苦労しましたが、時間をかけて繰り返すうちによい相関が取れるようになってきました。とはいえ、やはり電気のふるまいはどちらの世界も同じですから、今まで培ったノウハウが活かせる部分は沢山あります。
例えば、最近の車載基板ではノイズ対策が大きな課題になっています。ADASと呼ばれる自動運転システムなど、先端システムには高周波を扱うものが多く、ノイズを引き起こしやすいのです。一方、当社が携わってきた家電の世界では、今まで、何GHzもの信号を損失なく伝送するための工夫を重ねてきました。ノイズは、もともとは損失が原因なので、損失なく伝送できる配線構造を作れば減らすことができます。そう考えると、我々のノウハウは車載基板の設計のいたるところで活用できます。最近では、お客様の電気技術者にノイズ対策を体感いただけるような勉強会を実施しています。単純な回路を使って、簡単なアートワークを作成してもらい、その中で最もよくできたものと、一番よくないものを選び、シミュレーションしていただくのですが、単純な回路なので結果の違いははっきりと出てきます。仕上げに、実際にプリント基板を作ってお客様に実機評価をしていただくと、理解はさらに深まるようです。

シミュレーションはお客様との「共通言語」。明確な共通言語のおかげで、お互いの専門分野を活かしたスムーズな連携が可能に

過去15年間で、プリント基板設計はどのように変わりましたか?

内海

当社を設立してから15年以上が経ちますが、PCBはかなり多様化しましたね。チップの内容は同じでも、用途によってパッケージやサイズがかなり異なるようになりました。
例えばデジタルテレビのようなコンシューマー製品の場合は、大規模なICでも、層数の少ないPCBで実装することが求められます。モバイル製品はいかに集積度を上げて、プリント基板上の部品を少なくするかが求められます。車載機器の場合は、先ほどお話ししたように安全性と、ノイズをいかに抑えるかが重要です。その一方で、開発期間は圧倒的に短くなりました。
昔は開発に半年かけていたようなものも、今では2〜3ヶ月で完成させなければなりません。
こうなるとシミュレーションは必須になってきます。特にICベンダー様にとっては無くてはならないツールでしょう。我々から、設計のアートワークやレポートをお出しするよりも、シミュレーションで求めたSパラメータをお出しした方が喜ばれます。実機評価に必要なデータでもあるからです。

お客様とは同じツールをお使いなのですか?

内海

同じことが多いです。そうすると、シミュレーションツールがお客様との「共通言語」になるのですね。
我々はPCB設計を専門にしており、問題点の絞り込みは得意です。しかし製品については、お客様の方がはるかによくご存じです。例えば、いくら秘密保持契約を結んでいても、再来年発売予定の車のデザインを開示いただくことはありません。そこで我々はラフなモデルで解析を行ってポイントを絞り込みます。お客様は解析データに実際のモデル形状を加えて、より詳細なシミュレーションで評価し、問題解決にあたります。シミュレーションという明確な共通言語があれば、こうした連携がスムーズにできる。そのメリットは大きいと思います。

利用のきっかけはお客様の紹介。今はAnsys製品がメインの解析ツールに。サイバネットのサポートは高い頻度で活用中。

御社にはAnsys HFSS、Ansys SIwave、Ansys Icepakをお使いいただいていますが、導入経緯をお聞かせください。

内海

4 〜 5 年前に、電源の共振解析をするためにAnsys SIwaveを導入したのが最初です。当時は別のツールを使っていたのですがどうしても結果が合わず、お客様に紹介いただいたのがこちらの製品でした。試したところ、なかなか良い結果が出たので導入を決定しました。それからAnsysをメインの解析ツールとして活用しています(解析事例:図1〜5)。

製品についてご感想をお聞かせください。便利だと思う、または優れていると思われる機能は何ですか?

内海

電磁界解析(Ansys SIwave / Ansys HFSS)、熱解析(Ansys Icepak)ともに、パラメータを振って結果を比較する解析機能が便利だと思います。
例えば電磁界解析なら、Ansys SIwaveやAnsys HFSSの解析で求めた特性を使って、回路シミュレータのAnsys Designerで解析することができますが、さらにその結果を再びAnsysSIwave 、Ansys HFSSにフィードバックをかけることで、任意の信号を与えた場合の放射や近傍界を観測できます。アンテナマッチングや、ドライバの駆動能力をチェックする際に、非常に効率よく結果を得られるので便利です。

製品の操作性、サービスには満足されていますか?

内海

電磁界解析と熱解析ツールの操作性に差があるようです。個性の違いともいえるのでしょうが、同じ感覚で操作できると専任者を分けずに利用できるようになると思っています。

製品のご利用の際、気をつけている点、工夫していることがあればお聞かせください。

内海

不必要にモデルを詳細にして無駄な計算コストをかけないようにしています。熱解析では不連続メッシュの利用、電気では等価回路モデルの活用など工夫してもらっています。

当社のサポートサービスやセミナー等は利用されていますか?

内海

高い頻度でお世話になっています。的確な回答をレスポンスよくいただきます。

解析事例


図1 Ansys SIwaveとSynopsys社のHSPICEを使ってSI解析を行った例。
Ansys SIwaveで求めたSパラメータを用いて、HSPICEでアイパターン解析をすることで、
リターン経路の影響を評価しています。

図2 Ansys SIwaveを使ってSI解析した例。
レイアウトを改善し、ジッタ―を低減しています。

図3 Ansys HFSSを用い、インサーションロスおよびリターンロスを解析した事例。
GNDビアの有無や配置の違いによる伝送経路特性を比較し、最適案を検討しています。

図4 Ansys SIwaveおよびSynopsys社のHSPICEを使ったPI解析事例。
電源配線には、DC-Drop解析、AC-Drop解析、インピーダンス解析を実施することで、
必要な配線幅や最適な最適なコンデンサ定数・位置を決定しています。

図5 Ansys Icepakを用いた熱解析事例。
映像処理基板を収納する筐体(プラスチック/アルミ)を想定し、
連続動作した場合の温度上昇を予測しています。

2015年からは新卒採用をスタート。顧客のニーズを適切にくみ取ることができる、優秀なエンジニアを育成中

ありがとうございます。Ansys製品、当社サポートともに、今後も是非ご活用ください。ところで、今年より新卒採用を開始されたそうですね。CAE教育はどうされていますか?

内海

自動車業界のお客様から引き合いが増えてきたこともあり、今年は高等専門学校から5名、採用しました。
当社は自らで開発するのではなく、お客様から依頼をいただいて設計をする立場です。その際に最も重要なのは、「お客様が何を望んでいるか」を理解することだと考えています。
例えば、精密なSパラメータが必要な方には、Ansys HFSSで詳細に解析した結果をお出しするべきでしょう。しかし、傾向を見たいという方にはAnsys SIwaveのほうが適しているかもしれません。
もちろん技術力や知識は重要ですが、お客様の問題を解決するには、お客様の課題やご要望を適切にくみ取るコミュニケーション力が求められます。若い方に、そうした能力を伸ばしてもらいたいと思い、新卒採用を始めました。教育といっても当社は学校ではないので、理論よりも実践重視です。学生には、まず3か月のインターンシップを実施し、まず回路図とCADを渡して、自由に設計してもらいます。当然それがワーストケースになります。その作品と、模範となる設計を比較させて、何が良くて何が悪いかを体感してもらう。その後に過去の実例をもとに自分なりに設計し、正解と比較してレポートを書いてもらいます。
そして入社後には、それぞれに担当のソフトウェアを与えて自ら勉強するようにしています。

データの管理やノウハウの共有はどうされていますか?

内海

設計業務はあいまいな部分が多く、ともすると納品物の「質」が担当者のスキルに依存してしまいがちです。当社はそれを避けるため、どんな小さい仕事でも、複数名体制で相互チェックをかけながら作業を進めています。
例えば、お客様の要求事項を文章化したものをコンファーメーションシートとして使い、品質チェックや進捗管理に利用しています。また、過去の設計データをライブラリ化することで、ICの名称から過去の設計データを検索できるようにすることで、今までのノウハウを活用できるようにしています。
おかげさまで、品質が安定している点は、お客様からご好評をいただいています。いっぽう、大切なお客様のデータをいくつも扱っていますので、データの管理には気を使っています。
できるだけ自分のワークステーションを持たせないようにしたり、専任者を設けて、ファイルの管理状況を随時チェックさせたり。Ansys HFSSやAnsys SIwaveも、利用できるマシンを限定しています。

今後の注目は電動化・自動化の進む自動車業界。PCB設計という観点から、可能な限りの問題解決を

今後取り組まれたいことについてお聞かせください。

内海

最近、自動車業界のお客様と活動させていただく機会が増えましたので、品質管理やコンプライアンスのことなど、改めて勉強しています。
また、自動車業界の電動化・電子化の流れは、非常に興味深いですね。自動運転システムのように、社会インフラの情報と自動車の情報を融合させる取り組みだったり、スマートグリッドの交点のすべてにサーバーを設置することで、情報のアクセスを素早くさせたり。本当に面白いと思います。
しかしその一方、割り当てられる電波の帯域は限られているので、情報量が多くなればなるほど混信など多くの問題が発生します。そこをどう解決するか。
PCB設計という立場から、可能な限りのご支援をしていければと思っています。

アルティメイトテクノロジィズ株式会社様 内海様には、お忙しいところインタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。

【メカニカルCAE事業部マーケティング室】

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