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解析事例

電磁界解析

THz帯におけるメタマテリアル吸収体の解析

THz帯におけるメタマテリアル吸収体の解析の概要

こんな方におすすめ

  • メタマテリアルの開発に従事されている方
  • 電波吸収体の開発に従事されている方
  • THz帯アプリケーションの開発に従事されている方

解析概要

メタマテリアルとは、金属や基板を組み合わせて周期的に配置することで、ある特定の周波数で電磁波の振る舞いを制御することが可能な人工の構造物を指します。
その電磁的な特性は微細構造の幾何学形状や材料定数によって制御されるため、アンテナやマイクロ波などの分野でのメタマテリアルの性能評価には3次元電磁界解析の利用が不可欠です。
本解析例では Ansys HFSS を使用してTHz帯において特定の周波数を吸収するメタマテリアル吸収体の解析についてご紹介します。

使用ソフトウェア

Ansys HFSS

背景/課題

THz波は次世代通信やイメージングシステム、セキュリティ分野での応用が期待されています。
イメージング技術への応用研究では、特定のTHz波に対して高い吸収性を持った材料を利用した高感度なセンサーの開発が課題となります。
この高感度センサーに活用する吸収体の一つの方法として、メタマテリアル吸収体が注目されています。
メタマテリアル構造の吸収体は、構成材料とは異なる特性を示し、幾何学的な構造によって特性が決定されるため、その形状やサイズの変更で吸収する電磁波の周波数を制御することが可能になります。

解析手法

メタマテリル吸収体の解析モデルは金属グランド面、誘電体の中間層、メタマテリル構造を持つ金属層から構成されます。
今回の解析例では、単一 Unit cell に周期境界条件を定義し、Floquet Port よる周期的電磁界を考慮することで、メタマテリアル構造の無限周期構造を模擬、Sパラメータの反射特性(S11)を算出してその吸収率を評価します。

解析モデル

図1にメタマテリアル吸収体の単一Unit Cell解析モデルを示します。
金属グランド面にはAu、誘電体の中間層にはPolyimide、メタマテリル構造を持つ円形金属層はAuの材料を使用した層構造で構成されます。
表1にモデルの形状パラメータを示します。

図1.メタマテリアル吸収体解析モデル

表1.形状パラメータ

パラメータ

長さ

Unit

円形Au金属層の半径

20.5

um

円形Au金属層の厚み

0.1

um

Polyimide 誘電体層の厚み

1,7

um

Polyimide 誘電体層の1辺の長さ

50

um

Au金属グランド層の厚み

0.2

um

図2に周期境界条件とFloquet Port の設定内容を示します。
モデル側面に周期境界条件を設定し、モデル上面に電磁波の入射面としてFloquet Portを設定し、このFloquet Portから平面波を入射します。

図2.周期境界条件と電磁波入射のFloquet Portの設定

解析条件

解析では、Sパラメータの反射特性:S11を計算に用いて吸収率としてAbsorption = 1-(S11)^2 を算出しています。
解析周波数1THz~3THzの範囲で上記吸収率の評価を実施します。

解析結果

1THzから3THzまでの吸収率の評価結果を図3に示します。
吸収率は2.2THz付近でほぼ1となっています。
従ってこのメタマテリアル吸収体構造がピーク周波数に対して完全吸収体に近い振る舞いをしていることが分かります。

図3.吸収率

次に、円形金属層の半径をパラメータとして、19um~22umまで0.5um Stepでパラメトリック解析を実施した結果を図4に示します。
この結果から、円形金属層の半径が大きくなると吸収ピーク周波数が低周波側にシフトすることが分かります。
従って、円形金属層の半径で吸収ピーク周波数の制御が可能です。

図4.円形金属層の半径に対する吸収ピーク周波数の変化

本解析の効果

THz帯におけるメタマテリアル吸収体の解析についてご紹介いたしました。
こちらでご紹介したように、材料や形状パラメータに対するメタマテリアル吸収体の評価、また設計の最適化検討が可能になります。
このように、Ansys HFSSでは幅広い電磁波の領域に適用が可能で、要求仕様に対して効率的な設計検討にお役立ていただけると考えております。

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