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解析事例

電磁界解析

電子機器から発生する電磁ノイズを抑制する電波吸収体の解析事例

~Ansys HFSSを活用した3次元電磁界解析および最適化~

電子機器から発生する電磁ノイズを抑制する電波吸収体の解析事例の概要

こんな方におすすめ

  • 電波吸収体を対象としたソリューションをご検討されている方
  • 電波吸収体を3次元電磁界シミュレーションで解析されたい方
  • 電波吸収シートを使ったEMC対策に興味ある方
  • 高機能フィルム、電波吸収シートおよびその材料を扱われている企業の方

解析概要

電波吸収体には様々な種類が存在しますが、誘電体損失を利用するもの、磁気損失を利用するもの、反射損失を利用するものに分類されます。
吸収体表面と裏面の金属板からの反射波どうしが打ち消しあう性質をもつ反射損失型の電波吸収体は幅広く利用されていますが、電波吸収体の厚みや材料定数の決め方などによって特性が大きく変わります。
このため、3次元電磁界シミュレーションを活用した解析が必要不可欠になります。
本事例では、反射損失型の電波吸収体を対象にAnsys HFSSを使った電波吸収体の解析方法から最適化までを紹介します。

使用ソフトウェア

Ansys HFSS

背景/課題

近年、Automotive、次世代通信(5G/6G)、半導体市場の拡大に伴い、電子デバイスの数は増加の一途をたどっており、電子機器の安定性の向上や電磁干渉防止の観点から、電波吸収体の需要がよりいっそう高まっています。
電波吸収体は高性能かつ複数の周波数帯における電波吸収特性が要求される一方で、実試験を繰り返しながら設計評価を行う従来法では、コストや時間がかかり、効率的な材料開発が困難となります。
このため、材料定数や形状をパラメータとして、シミュレーションにより最適化な値を効率よく探していく必要があります。

解析手法

電波吸収体は、その厚みを波長の四分の一とすることで、電波吸収体表面からの反射波と裏面からの反射波の位相が180°ずれるため互いに打ち消しあって電波が減衰する仕組みとなります。
このように設計された電波吸収体に対して、平面波を照射させた場合の反射特性を評価します。
さらに、電波吸収特性を最大化させるため、材料定数をパラメータとしてAnsys HFSSのOptimetics機能により、最適化を行います。

解析モデルと解析条件

解析モデル

図1に電波吸収体の解析モデルを示します。空気で満たされている解析空間の上面から電波を平面波として照射します。
これを模擬するために、解析空間の側面に完全導体、完全磁性体を模擬できる境界条件を適用しています。
解析空間の底面には吸収体のモデルがあり、その裏は金属が設定されています。

図1 電波吸収体の解析モデル

解析条件

周波数帯は9GHzから11GHzで、電波吸収体の厚さは1.4mmとし、10GHzにおいて波長が四分の一になるように設計しています。
電波吸収体の材料定数は、初期値として、比誘電率(εr)は 28.7、誘電体損(tanδ)は0.039としています。
これら材料定数をパラメータとして、表1の範囲で、最適化な値を探します。

表1 最適化範囲

最適化パラメータ

初期値

最小値

最大値

比誘電率(εr)

28.7

27

32

誘電体損(tanδ)

0.039

0.01

0.1

解析結果

図2に電波吸収体の解析結果を示します。横軸を周波数とし、縦軸は電波の反射係数(S11)を示しています。
S11の値が小さいほど、電波吸収体の特性が良いこと示します。
材料定数の初期値を適用した場合、S11は周波数帯域内で-10dB以下となり良好な特性になっていることが分かります(図2の赤線)。
しかしながら、設計対象の10GHz付近ではやや特性が低い周波数帯にシフトしているのが見みられるため、さらに材料設定のパラメータの最適化を行います。
結果より、比誘電率が27.92、誘電体損が0.049の場合でさらに特性が改善されました(図2の青線)。

図2 電波吸収体の解析結果

本解析の効果

本事例では、3次元電磁界シミュレーションが可能なAnsys HFSSを使った電波吸収体の解析方法から最適化まで紹介しました。
実試験を繰り返しながら設計評価を行う従来法では、コストや時間がかかり、効率的な電波吸収体の開発が困難となります。
Ansys HFSSを活用することで、優れた吸収特性を持つ電波吸収体が実現でき、効率的な設計開発を促進します。

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