解析事例
高圧水素漏洩と自着火の数値解析
狭小部より漏洩した高圧水素の数値流体解析による着火予測
高圧水素漏洩と自着火の数値解析の概要
こんな方におすすめ
- 高圧水素漏洩時の安全評価を行いたい設計者、解析者
解析概要
この際、燃焼反応は有限速度反応モデルを用いて表現され、解析領域は周方向1 deg.と30 deg.の二つのパターンが用意されています。
また、効率的にメッシュの解像度を担保するためにAMR(Automatic Mesh Refinement)機能が使用されています。
本件では異なったタンク圧力での水素漏洩や自着火の様子が数値流体解析によって良く再現されており、250 Barでは自己着火が継続的に生じ、100 Barでは自己着火が維持されず途中で消炎、50 Barでは自己着火が生じないことが示されています。
この時、周方向1 deg.と30 deg.の解析で同じ結果を示しました。
また、AMRを使用することにより、水素と空気の接触不連続面と拡散火炎上に限定して十分な解像度が維持され、効率的な解析が行えたことが示されています。
使用ソフトウェア
背景/課題
最も一般的なものは燃料電池自動車で、約400気圧に加圧された高圧水素タンクを搭載しており、さらに1000気圧に対応したタンクも開発中です。
しかしながら、水素の低い着火エネルギと広い燃焼範囲を考慮すると空気中に漏洩した際に自発的に着火する可能性があり、そのような事態では人員に対する被害や、機器や環境の破壊が危惧されます。
そのため、安全な水素の貯蔵・輸送方法の確立はこれを利用するすべての業界にとって重要な課題となっています。
しかしながら、このような問題に対してはいまだ未解明な部分が多く、いくつか行われた実験的な考察により乱流混合と拡散が重要な役割を担っていると示唆されております。
本事例では、LESと有限速度化学反応モデルを用いた乱流と反応の相互作用を詳細に考慮した解析を行い、現象のさらなる理解を目指します。
解析対象および解析手法
解析対象
それぞれの寸法は図内に記載されております。
高圧領域と大気圧領域の間にある半径dの流路はタンクに空いた穴を模擬しています。

図1 解析対象周方向1deg

図2 解析対象周方向30deg
解析手法
時空間の離散化を共に2次精度で行い、時間刻みは5×109sです。

表1 解析手法
境界条件、初期条件
タンクに空いた穴を模擬した流路の中間点まで高圧水素を充填したところから計算を開始し、大気圧下に噴出する様子を解析します。

図3 境界条件
解析メッシュ
メッシュは反応面を自動的に追跡し、細分化されます。また、セルはすべて6面体で構成されています。
初期セル数は1degが約140万セル、30degが1700万セルです。

図4 a メッシュ1deg

図4 b メッシュ30deg
解析結果
メッシュ1deg
OHは水素が燃焼反応を起こす際に発生する代表的な中間生成物です。
図5に示すように、圧力が250barの場合は着火後持続的に燃焼反応が継続しますが、100barの場合は着火するもその後消炎し、50barの場合はそもそも着火に至らないことがわかります。

図5 メッシュ1deg OH質量分率、軸上温度分布
メッシュ30deg

図6 メッシュ30deg OH質量分率、温度分布
これらは先行研究とも矛盾の無い結果となります。
本解析の効果
このような解析は水素自動車の構成部品等の研究開発に欠かせないものとなる可能性があります。
例えば、タンク壁の厚さや穴の直径、断面形状などの影響も調査することが可能です。
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