解析事例
EGRクーラーにおける沸騰のモデル化
こんな方におすすめ
- 冷却効率不良などのEGRクーラーのトラブル対応にお悩みの方
- 直接測定ができない内部の流れや蒸気の体積分率を効率化したい方
- Fluentで沸騰現象のシミュレーションを行ってみたい方
はじめに
多くの自動車に搭載されている排気再循環(Exhaust Gas Recirculation, EGR)システムは、エンジンから排出される燃焼後の排気の一部を再度吸気側に取り入れるための装置です。酸素が希薄な状態の排気を吸気に混ぜることで大気より酸素濃度が低下するため、燃焼時のピーク温度が下がり、高温時に多く生じる有害な窒素酸化物(NOx)の量を抑制することができます。特にガソリンエンジンでは吸気損失の減少に起因する燃料消費率の低減により、省燃費性が向上する効果があります。
EGRクーラーにおける課題
排気をそのまま取り込むと温度が高すぎるため、EGRシステムは熱交換器(EGRクーラー)を用いてガスを冷却します。通常、冷媒としてエンジン冷却水(クーラント)が用いられます。冷却効率が低いと冷却水温が上昇し、沸騰が生じた場合はEGRクーラーの破損やオーバーヒートにつながるため、冷却効率の高い設計を行う必要があります。冷却水温は流れがよどんでいる場所で高くなるため、EGRクーラー内の流動状態や温度分布を把握することが重要です。
FluentのSMBモデルを使った沸騰の解析ソリューション
Ansys Fluentを用いることで、EGRクーラー内の冷却水の流速分布や温度分布を可視化することができるため、流れがよどむ領域を小さくするような最適な形状を検討することができます。さらに、Fluentに実装されたSemi-mechanistic boiling(SMB)モデルは、半経験的な式を導入することで従来の複雑なモデルよりも沸騰現象をより手軽にシミュレーションすることができます。これにより、沸騰で生じた蒸気の量や体積分率の分布を予測して対策を講じることが可能です。
以下の図はEGRクーラーの構造を簡易的に模擬して作成したモデルを用いて沸騰のシミュレーションを行った結果です。細い配管の中を高温の排気が流れ、その周囲を冷却水が循環して熱交換を行っています。図1より高温の排気が流れる配管表面の蒸気の分布を確認できることがわかります。図2は冷却水側のある断面における蒸気の分布であり、図4の水温の分布と合わせて考えると、ガスの入口側かつ冷却水の流れが淀んでいる領域で温度が高く、蒸気量も多くなっていることがわかります。
Ansys Fluentは沸騰を考慮した熱流体解析が可能であり、EGRクーラーを始めとする様々な熱交換器の流路形状の改善検討に役立ちます。
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