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解析事例

電磁界解析

過渡解析におけるトランスの鉄損(コアロス)算出

こんな方におすすめ

  • 過渡解析時におけるコアロスを算出したい
  • コアロスを考慮したトランスの設計検討をしたい

トランスはACアダプタやスイッチング電源回路などに変圧や絶縁を目的として使用される必要不可欠な電気機器です。鉄心(磁気コア)、1次巻線、2次巻線によって構成されており、設計において巻線や磁気コアのギャップなどの構造設計やインダクタンス、出力電流などの特性値を評価する必要があります。それ以外にもトランスの主な損失の1つであるコアロスは磁気コア内部で熱となるため、材料物性の変化から効率の低下や寿命が短くなる原因となります。またコアロスは磁気コアのヒステリシス性に起因するヒステリシス損失と渦電流に起因する渦電流損失に分類されます。どちらが支配的か事前に検討することで形状や材料の検討が可能となります。
ここでは電磁界解析ソフトAnsys Maxwellの過渡解析を用いて、トランスのコアロスを算出する事例について紹介します。Ansys Maxwellは独自の修正Steinmetz法を用いて時間依存のコアロスを算出することが可能です。

解析の目的・背景

トランスは交流電力の高さを電磁誘導により変換する電力機器です。電磁誘導は磁束が変化する環境下に存在する導体で電位差(電圧)が生じる現象です。1次巻線に電気が流れることによって磁束が発生し、発生した磁束が磁気コアを介して2次巻線へと流れることで2次巻線の両端に電圧が発生します。このとき磁気コアがコアロスによって熱を持つことで電力が消費され、温度上昇や効率低下の原因となります。
本事例では過渡解析におけるトランスの鉄損を算出し、ヒステリシス損失と渦電流損のどちらが支配的になっているか算出しています。

解析手法

本事例では3Dの磁気コア、1次巻線、2次巻線の3つのオブジェクトで構成されたトランスモデルに対して過渡磁場解析を実施しました。また磁気コアの材料物性としてコアロス-磁束密度曲線(PBカーブ)を入力し、コアロスを算出できるように設定しました。

解析モデルと解析条件

解析モデルとメッシュ


(図1)トランスの解析モデル

図1にトランスの解析モデルを示します。トランスの解析モデルは3Dで解析を実施しました。1次巻線のターン数を10、2次巻線のターン数を5としました。

解析条件

Transient(過渡磁場解析)を用いて1次巻線に周波数100Hz、振幅12Vの正弦波を印加しました。過渡解析の停止時間を50msまでとし、0.1msのタイムステップとして解析を実施しました。

解析結果:トランスの印加電流とコアロス


(図2)解析結果:1次巻線の電圧波形

図2に電磁界解析ソフトAnsys Maxwellを用いて解析した1次巻線の電圧値を示します。1次巻線に設定した周波数100Hz、振幅12Vの印加条件から50msの間に5波形再現されており、波形にひずみがないことからタイムステップ数も十分であることを確認しました。


(図3)解析結果:ヒステリシス損失、渦電流損失、コアロスの時間変化

図3にヒステリシス損失と渦電流損失、コアロスの時間変化を示しています。コアロスは最大2.78Wであることがわかりました。コアロスはヒステリシス損失と渦電流損失から成り立っているため、得られたヒステリシス損失と渦電流損失の割合を図4に示します。


(図4)コアロスの割合

図4よりコアロスのうち渦電流損失が31%、ヒステリシス損失が69%の割合を占めていることがわかりました。これにより、コアロスを減らすためにはヒステリシス損失の低減を検討することが効果的であることがわかりました。
本解析手法では過渡解析におけるトランスのコアロスを算出する事例について紹介しました。

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