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解析事例

熱流体解析

撹拌槽の内部流動状態を顕在化し、撹拌不良を解決するための解析事例

こんな方におすすめ

  • 撹拌不良などの撹拌槽のトラブル対応にお悩みの方
  • 直接測定ができない内部の流れを可視化したい方
  • 撹拌機の混合性を理論的に検証したい方

はじめに

『ものを混ぜる』という作業は、料理といった身近な場面から、液体の混合といった産業界の場面まで、多岐に渡り利用される工程です。
一方で、撹拌槽が密閉容器であったり、液体に色味がついていたりと、槽の内部状況を把握することは非常に困難です。結果として、十分に混ざっているにも関わらず安全を見て混合時間を延ばす(生産性の低下)ことや、槽内の一部で混合しない領域が発生する(不具合の発生)ことも考えられます。
そこで、生産向上や不具合の低減を目標に、近年では流体解析を実施することがあります。流体解析はコンピュータシミュレーションの特性上、流れ場内部の流速や圧力分布を可視化することができ、撹拌槽内部の様子を顕在化することができます。

撹拌槽内部の流動状態における課題を流体解析で解決!

撹拌槽内部では先に述べたように内部状態を可視化することが困難ですが、流体解析を用いることで図.1の結果を取得することができ、具体的には以下の様な撹拌不良にまつわる課題を解決することが可能です。

  • ① 単一の液体
  • ② 液体と気体が混ざり合う混相流
  • ③ 液体と粒子が混ざり合う混相流

図.1 撹拌槽内の速度コンター図

① 単一の液体

図.1は流速の色味を表すコンター図です。このように内部の流動状態を可視化でき、流動していない場所などを確認することができます。
また、粘性係数がせん断力により変化する非ニュートン流体を撹拌の対象にすることもあります。流体解析では速度とともに粘性係数やせん断力もコンター図として見ることができます。図2は粘性係数のコンター図です。撹拌槽内の流れに応じて粘性係数が場所ごとに変化している様子を見ることができます。


図.2 撹拌槽内の粘性係数コンター図

さらに、『撹拌翼の種類』や『バッフルの位置や形状』、『撹拌槽形状そのもの』といったように撹拌槽の構造も変えながら結果を取得することもできます。図.3は撹拌槽の撹拌翼の場所を上下に変えながら、さらに撹拌翼の設置角度も変更している例となります。両図の違いは

  • 撹拌翼の高さ方向の位置
  • 撹拌翼の羽根の角度が

が異なっています。
このようにCAD上で作成した形状を解析にモデルにすることが可能です。

同時に、解析形状だけではなく『撹拌翼の回転速度』といった運転条件も変更することも可能です。

このように形状や運転条件を変更することだ出来るため、スケールアップのように形状がラボに比べて数倍大きくなることや、撹拌翼回転速度を低下させたときの流動挙動も見ていくことにもつながります。


図.3 形状を変えた撹拌槽

ここまでご紹介したように撹拌槽と流体解析ソフトウェアを組み合わせることで、流体の粘性係数や撹拌槽の形状、撹拌翼の形状、さらに運転条件といった様々な観点から内部の流動状態を見ていくことが可能になります。
これにより、「この運転条件で混ざっている?」や「撹拌槽内部は全領域がしっかりと撹拌されている?」といったことに実験ではなくコンピュータ上での仮想実験に置き換えることができます。

② 液体と気体が混ざり合う混相流

撹拌槽は液体を扱う点で、撹拌条件次第では液面が波打ってしまうこともあり、場合によっては周囲の空気を巻き込んでしまうことも考えられます。一方で、バイオリアクターのようにバブリングなどを行う場合は気泡に着目することもございます。
このように、液体と気体を同時に解析対象とすることもあり、その場合には混相流解析という分野での対応が必要になります。
図.4は混相流解析を用いて液面を解析した例となります。色味は存在割合(Volume Fraction)を表し【赤色が液体の存在している場所】で【青色は液体が存在していない場所=空気】を表しています。撹拌翼により、液面がフラットにならない状態を見て取れます。
この様子を実験値と比較したものが図.5となります。液面の高さを比較したもので、実験値と解析結果の様子が合致していることが分かります。


図.4 混相流解析の例

図.5 撹拌槽内の液面高さの実験値との比較

図.6は通気撹拌槽の例です。
スパージャ―部から気体を送り込み、さらに上部の2種類の撹拌翼により撹拌を行っています。スパージャ―から発生した空気は最初はそのまま上昇していますが、撹拌翼周辺で槽内全体に行き渡る流れ場になっています。
ここでは液面挙動よりも気泡の分布状態に着目しています。つまり、図4と5の例では液面を、図.6では気泡の様子と混相流解析を用いることで様々なニーズに対応できることが分かります。


図.6 混相流解析の例

近年ではバイオリアクターなどの解析ニーズもあり、撹拌槽分野における混相流解析のニーズが高まっています。

①の例では単相流の例をご紹介しましたが、②のように気体と液体を同時に取り扱い混相流の解析にも流体解析は対応しております。
これまで単相流のみに対応されていた方も、これを機会に混相流に足を踏み出すのはいかがでしょうか。

③ 液体と粒子が混ざり合う混相流

次の例は撹拌槽で粒子を同時に扱う場合の例となります。触媒の微粒子を含む撹拌も近年ではニーズの高まりを見せております。一方で、微粒子を流体解析で考慮するにはどのようなアプローチがあるでしょうか?
粒子は一般的にツブツブをイメージされると思いますが、流体解析では【ツブツブを扱う方法】と【ツブツブが集合したら流体の挙動になることを利用した混相流解析】の大きく分けて2つの種類があります。
前者の【ツブツブを扱う方法】は 弊社の別ページ に例がございますので、ぜひともご参照ください。
後者の【ツブツブが集合したら流体の挙動になることを利用した混相流解析】は 弊社の別ページ に例がございます。
後者のページを見ていただきますと、粒子の集合体を液体として扱うことが流体解析機能の一つに備わっております。この機能をEuler-Granularといいます。
実際にEuler -Granular手法を用いて解析したものが図7となります。図中の高さ方向(Z座標)の中段に薄いオレンジの面があり、粉体の基準になる場所を表しております。


図.7 Euler-Granularモデルを用いて、粒子を含んだ液体を撹拌した解析結果

粒子の挙動も同時に見ていくことで、触媒反応が槽内で均一に行われているか、またはしっかりと粒子が流動しているか、といったことも可視化できます。

終わりに

本稿では撹拌槽解析の全体的な解析事例をご紹介しました。実際の現場では槽内の流れ場の把握からスケールアップの検討に流体解析が使われること多くなります。流れ場の把握は流体解析で十分に行うことが可能ですし、スケールアップの検討にも使われている例もございます(文献2 多様化するニーズにこたえて進化するミキシング 化学工学会)。
弊社では実際に撹拌槽ニーズに解析を用いている方向けに、特化した操作資料もご用意しております(図8と図9)。導入から立ち上げまでのサービスも行っておりますので、お気軽にお問合せください。
また、過去に様々なトピックセミナーも実施しております。その際の資料も下記のURLからダウンロードいただけますので、ご一読いただきご意見や疑問点をぜひともお寄せください。


図8撹拌槽に特化した例題集-A

図9撹拌槽に特化した例題集-B

参考文献

CFD Modeling of Solid Suspension in a Stirred Tank : Effect of Drag Models and Turbulent Dispersion on Cloud Height ・Shitanshu Gohel, Shitalkumar Joshi, Mohammed Azhar, Marc Horner, Gustavo Padron ・International Journal of Chemical Engineering, vol. 2012
最近の化学工学 多様化するニーズに応えて進化するミキシング ・ ミキシング技術分科会 ・ 2017/01

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