解析事例
DynamicROMによる発電機シミュレーションの高速化
こんな方におすすめ
- 高精度な発電機の電磁界シミュレーションを高速に解きたい方
- 発電機を含む電力系統の設計をされたい方
三次元有限要素法による発電機シミュレーションをディープラーニングの手法に基づくAnsys Twin BuilderのDynamic ROMを用いて高速に解く例を紹介します.
解析の目的・背景
電力系統の解析に高精度な3次元シミュレーションの発電機モデルを用いたいという要望をよく聞きます.しかしながらシミュレーションに時間がかかりすぎるため,実際の解析には等価回路による簡易モデルを用いるということが多いのではないでしょうか.そこでAnsys Twin BuilderのDynamic ROMを用いて3次元シミュレーションの結果から(リカレントニューラルネットワークによる)学習をすることでROM(低次元化)モデルを作成します.このROMモデルを用いることで様々な電力システムのシミュレーションを高速・高精度に解くことが可能になります.
解析手法(ROM化の手法)
同期発電機のモデルをROM化するためにAnsys Maxwellで得た電磁界解析の結果を用いてモデルを低次元化します.高速にシミュレーション可能なモデルに変換するために,ここではAnsys Twin BuilderのDynamic ROMを用います.
以下の図はAnsys Maxwellの解析モデルとそのモデルに与えた回転速度の履歴とその線間に発生した電圧の結果を示したグラフになります.

(図1)Ansys Maxwellによる発電機モデル

(図2)学習用回転速度と線間電圧
ここでは複数パターンの回転速度をこの同期発電機のモデルに与えて,各3相の線間に発生する電圧を出力データとして取得しています.この1入力(速度)3出力(線間電圧)のシステムをROM化することになります.

(図3)入力―出力関係
有限要素法による1パターンの解析(1秒間のシミュレーション)に約1.5時間を要しましたが,一度ROMモデルを作成してしまえばROMモデルによるシミュレーションの時間は約4秒で終了します.以下の図はAnsys MaxwellのモデルをROM化してAnsys Twin Builderに取り込んだモデルの図になります.入力が回転速度,出力が(3相の)線間電圧のシステムのモデルになっています.

(図4)ROMモデルの図
ROMモデルの精度比較検討
3D CAEモデルとROMモデルの比較
以下に示す図はAnsys Maxwell(3D CAEモデル)とAnsys Twin Builder(ROMモデル)の結果を比較したものになります.ここでは学習に使用していない回転速度のパターンを3D CAEモデルとROMモデルに与えて結果を比較しています(汎化性の確認).

(図4)3D CAEとROMの比較
3D CAEモデルの方には形状に起因するインダクタンスの効果などが載っていることが確認できます.ROMモデルの方はこの辺りの結果が訛らされた結果となっていますが,電圧の傾向は概ね一致していることを確認いただけるかと思います.このようにDynamic ROMをご利用いただくことで電力系統全体のシステムを検討する場合等に精度の高い3D CAEモデルをコンポーネントとしてご利用していただくことが可能になります.
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