CYBERNET

解析事例

熱流体解析

MBD/MBSE/デジタルツイン

MATLAB/SimulinkとAnsys(3D熱流体解析)のROMモデルを活用した電子機器の温度制御シミュレーション

こんな方におすすめ!

―電子機器の熱設計を迅速に行いたい
―熱流体計算の高速化をしたい
―MBD(Simulink)のための熱計算プラントモデルが欲しい

近年、電子機器の省エネ、小型化に伴って、熱設計の重要性が増してきています。しかしながら要求仕様をすべて取り入れると熱設計が成り立たなくなるといったことも少なくありません。そこで消費電力をソフトウェアによる制御でコントロールして抑制するという試みも見られます。このような熱制御型の設計のために、迅速に結果を出すことが可能な詳細なシミュレーションモデルが求められています。ここではモデル低次元化(Reduced Order modeling)にAnsys Twin BuilderのDynamic ROMを活用し、3DCAEモデルから高速シミュレーション可能なプラントモデルを構築しました。そして制御モデルにはMATLAB/Simulinkを用いました。

解析の目的・背景

以下は電子機器の内部の熱流体問題をAnsys Icepakで計算している例になります。電子機器の筐体内部には基板上に発熱するデバイスが6つ配置されています。この筐体内部にファンで空気を強制的に取り入れて、格子(grille)へ空気を逃がすようにして発熱体の熱を逃がしています。発熱量とファンの流量からどの程度の放熱効果が見込めるかを熱流体シミュレーションによって検討しています。


(図1)解析モデル

解析手法(ROM化の手法)

ここではAnsys Icepakで得た熱流体シミュレーションの結果を用いて3D CAEモデルを低次元化して高速にシミュレーション可能なモデルを獲得します。モデル低次元化のために、Ansys Twin BuilderのDynamic ROMを用います。
以下のグラフはAnsys Icepakの計算によって得た電子機器内部の発熱体の発熱履歴とその発熱体の最高温度を示しています。


(図2)学習用発熱履歴と温度結果データ

6つの発熱体に矩形の発熱履歴と正弦波の発熱履歴を与えて、その温度履歴を示しています。この2つのシミュレーション結果を学習データとして、Dynamic ROMに学習をさせてROMモデル(予測モデル)を作成します。作成したROMモデルに対して学習に使用していない入力データを与えてモデルの汎化性を確認します。


(図3)ROMモデルの検証結果

図3の青枠のグラフはROMモデルと3D CAE(Icepak)の結果を比較したものになります。ほぼ結果が一致していることが確認できます。(最大温度差は0.2%差となっています)次に精度の良いROMモデルを構築するための指標を簡単に説明します。以下に示す図4は学習用の入力データと検証用の入力データを重ねたグラフになります。


(図4)学習用データと検証用データ

青と紫の線が学習用入力データのグラフで灰色の線が検証用入力データのグラフになります。ここでポイントになるのが検証の入力データが学習用データの範囲に入っていることです。さらに、学習用データは動的システムの周波数を励起できる入力となっている必要があります。今回の電子機器の熱流体解析のシステムの発熱体の温度変化は矩形と正弦波の入力によって十分励起することができていたということになります。学習データには想定する範囲の入力値の振幅を与え、且つ、そのシステムの周波数を十分励起させる入力信号を選定することが重要になります。

シミュレーションによる制御システムの検討

以下に示すMATLAB/SimulinkのシステムシミュレーションのモデルはDynamic ROMにより獲得した低次元化モデルをFMUに変換して取り込んでいます。このモデルに制御器を接続してPIDシミュレーションを実施したものになります。


(図5)システムシミュレーションによる制御システムの検討

制御器によって電子機器内の発熱体すべての温度が310K以下となるように発熱体の発熱量をコントロールしています。
更に以下に示すグラフはMATLAB/Simulinkのシステムシミュレーションで検討した制御器から出力される発熱量の結果をAnsys Icepakに適用して、3D CAEに対してもすべての発熱体が310K以下の温度に制御されるかどうかを確認しています。(結果としてすべての発熱体の温度は310K以下になっています)


(図6)3D CAEによる制御器性能の検証

ROMを活用することで精度の高いプラントモデルをシステムシミュレーションで用いることができことがわかります。さらに設計した制御器を精度の高い3D CAEへも適用することができます。実機へ適用する前の段階において、より現実に近い状況で制御系の検証をシミュレーションによって行うことが可能です。

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