解析事例
超音波モータ非線形接触解析の高速化
こんな方におすすめ
- 超音波モータを電子回路や制御シミュレーションに活用したい
- 過渡応答のシミュレーションを高速に解きたい
- 有限要素法の非線形接触シミュレーションを高速に解きたい
超音波モータを題材として非線形性と動特性をもった有限要素法シミュレーションを、モデル低次元化技術(以下ROM技術)によって、高速化する手法を提案します。本手法を用いることで非線形性と動特性を持つシミュレーションの最適化の実施や制御系設計のシミュレーションモデルとして活用することができます。
解析の目的・背景
超音波モータのような接触による駆動力で回転するアクチュエータを有限要素法で解こうとした場合、非線形性を考慮した過渡応答解析になり計算時間が非常にかかり設計評価では現実的な方法とはなりえない場合があります。このような非線形性と動特性を伴うシミュレーションの実施にはROM技術を効果的に用いることで大幅な計算時間の短縮を図れることがあります。今回のような超音波モータの場合にはモデルの線形領域(超音波振動部分)と非線形領域(接触駆動/剛体回転)の部分を切り分けてモデル化することで、計算時間の大幅な短縮が図れます。
解析手法
本事例では、超音波モータの回転子(ロータ)は集中定数としています.また圧電素子で駆動させる固定子(ステータ)は線形振動モデルとして線形ROM化します.(図1)

(図1)解析手法の概念図
回転子が集中定数として扱われることで,ロータのメッシュが接触によって回転するという非線形性がなくなりモデル化が非常に単純になります.超音波モータの回転子は基本的に固定されており回転する自由度のみ許されると考えればこのようにモデル化をしても差し支えありません.集中定数系が受ける接触力によるトルクも接触位置とロータ中心との距離が分かればモーメントが分かりますので単純な計算でわかることになります.それをシステムシミュレーションで表した概念図が以下になります.

(図2)解析手法の概念図(接触部分のモデル化)
システムシミュレーションモデルと解析条件
システムシミュレーションモデル
超音波モータの固定子に相当する線形振動モデルはAnsysでROM化したモデルを取り込みます.それ以外の固定子と接触に関するモデルはシステムシミュレーションツールの中でモデル化しています.

(図3)システムシミュレーションモデル
解析条件
シミュレーション時間は10[msec]で本モデルの固定子側の駆動周波数は49kHzで 圧電素子に対して2入力の正弦波駆動をさせて進行波を発生させています.また駆動周波数が固定子の共振周波数に一致しています.
シミュレーション結果

(図4)シミュレーション結果:回転子側の回転速度
図4は超音波モータの回転子の回転速度の立ち上がりをグラフで示したものになります.回転子を完全な剛体の1自由度系とした場合,3D FEM(有限要素法)の結果と乖離しましたが,2自由度の捩じり振動系とした場合には3D FEMの結果と一致する良好な結果が得られました.3D FEMで解いた場合10[msec]程度のシミュレーション時間でも数日を要することがあります.それが本手法を適用しますとノートPC程度のスペックでも数分のレベルで計算を終了することが可能です.
解析種類
使用ソフトウェア
ANSYS Mechanical Enterprise以上
Ansys Twin Builder Pro以上
※Model Reduction inside Ansys
Model Reduction inside Ansysをご利用いただくと本事例のモデル化を効率よく行うことができます.
関連情報
関連する解析事例
MORE関連する資料ダウンロード
MORE-
自己拡張型ステントの展開解析で製品品質を向上させる
~Ansys LS-DYNAによるヘルスケア分野ソリューション~
-
バルーン拡張型ステントの展開解析
~Ansys LS-DYNAによるヘルスケア分野ソリューション~
-
ガイドワイヤー・カテーテルの挿入解析
~Ansys LS-DYNAによるヘルスケア分野ソリューション~
-
Ansys Mechanical ユーザー様のための構造解析自動化の手引き
-
冷間鍛造解析による事前可視化
~Ansys LS-DYNAによるソリューション~
-
切削熱を伴う切削加工解析
~Ansys LS-DYNAによるヘルスケア分野ソリューション~
-
動脈硬化による血管内部の状態可視化
~Ansys LS-DYNAによるヘルスケア分野ソリューション~
-
SDGsとカーボンニュートラル実現へ向けた CFDによる水素バーナの燃焼解析
CFDによる水素バーナの燃焼解析