CYBERNET

解析事例

構造解析

MBD/MBSE/デジタルツイン

MEMSミラー非線形振動解析の高速化

こんな方におすすめ

  • MEMSミラーのようなデバイスを電子回路や制御シミュレーションに活用したい
  • 過渡応答のシミュレーションを高速に解きたい
  • 非線形振動現象をシミュレーションで再現したい

光学的走査性や消費電力の効率化などの理由から,近年MEMSミラーがHUD(Head up display)やHMD(Head Mount display),LiDAR,小型プロジェクター等に数多く使用されています.MEMSミラーは圧電素子によって高速に回転駆動されます。このとき用いられるMEMSミラーのモデル化においてROM技術を用いることで計算時間を大幅に短縮させることができます。

解析の目的・背景

ここではHUDのようなMEMS型のレーザー走査型モジュールに焦点を当ててみたいと思います.これらのモジュールの設計にはミラーの動きと映像信号を同期させる制御技術や,高精度にレーザーの光軸を一致させる光学設計技術などが求められます.このようなモジュールの設計にはコアデバイスとなっているMEMSミラーのデバイス設計と制御方式や駆動方式を設計する回路設計とが一体化して行われることが望ましいと考えられます.しかしながらデバイス設計には主に形状などが設計できるCADや有限要素法といった方法がとられることが多く,また回路設計には回路シミュレータなどを用いた方法が用いられることが一般的であり,有限要素法のモデルをそのまま活用したのではシミュレーションの計算時間の問題から協調して設計が行われることは少ないと思われます.そこでROMに代表されるモデル低次元化技術を用いて回路シミュレータにデバイスモデルを素子として組み込むことでシミュレーションの計算時間を大幅に短縮化することで協調した設計を実現する方法を提案いたします.

解析手法

MEMSミラーのような回転による幾何学的非線形性を含む非線形振動問題を解こうとした場合、共振周波数が非常に高く時刻歴応答解析で解くには非常に時間がかかります。このような非線形性と動特性を伴うシミュレーションには線形領域と非線形領域(幾何学的非線形効果)の部分を切り分けてモデル化することで、計算時間の大幅な短縮が図れます。まず線形振動領域をAnsysのモード解析技術により縮退化させます。さらに幾何学的大変形効果の部分をAnsysの静的大変形解析でその効果を事前に計算しておきます。これらの動特性と非線形性の効果をシステムシミュレーションツールにより統合しモデル化します。このような連携方法をとることで幾何学的大変形効果(非線形性)と動特性をもった3次元の有限要素モデルを縮退化することができ、精度を保ちつつ計算時間の大幅な短縮を図ることができます。

解析条件とシステムシミュレーションモデル

解析条件

解析条件はミラーの共振周波数に相当する周波数64,870Hzで圧電素子を駆動させています.ミラー中心を駆動させる電極はCグループの電極で駆動させています.シミュレーションの時間は20[msec]としています.


(図1)解析条件

システムシミュレーションモデル


(図2)システムシミュレーションモデル

振動モデルの線形項と非線形項を足し合わせたモデルをダフィング方程式といい以下のような数式で表されます.このモデルにモード縮退させた部分と非線形補正項を加えた数式モデルをシステムシミュレーション環境のAnsys TwinBuilerでモデル化しています.

ダフィング方程式

モード座標系で表現されたダフィング方程式

システムシミュレーション結果

以下の図3に示すミラー位置(Z方向)の時系列の変位結果を図4に示す.


(図3)評価位置

(図4)システムシミュレーションの結果(線形と非線形比較)

(図5)システムシミュレーションの結果(周波数領域)

図4では時系列の結果を示しており非線形性を考慮した方が非線形の剛性の効果があるために変位応答が小さくなっている様子が確認できます.また図5では電圧の大きさを変えて周波数を徐々に大きくしていった時(チャープ信号を与えた時の)周波数領域での結果を確認しています.周波数が高くなるにつれて共振周波数が高周波側に倒れている様子(硬化現象)を確認することができます.またAnsys Twin Builderによるシステムシミュレーションでは20[msec]のシミュレーションを30秒程度で解くことが可能です.これが3D のFEMで解いた場合には数週間から数か月,場合によっては数年というオーダになってしまい現実的な手段とはなりえないケースも考えられます.

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