CYBERNET

解析事例

MBD/MBSE/デジタルツイン

DynamicROMによる工作機械の熱変位補正

こんな方におすすめ

  • 工作機械の熱変形の効果を考慮したシミュレーションを検討したい
  • 時刻歴の伝熱-構造連成を高速にシミュレーションしたい
  • 3D CAEモデルを使用した精度の高いシステムシミュレーションを実施したい

工作機械に求められる加工精度は非常に厳しく僅かな温度変化でもその精度に影響を及ぼします。実現象に近い解析を実施するには伝熱-構造の連成解析を実施する必要があります。しかしながら3D CAEによるシミュレーションでは計算に時間がかかり、制御設計などに活用することが困難です。
本事例では、3D-CAEの伝熱-構造連成解析の結果からDynamicROMによる低次元化モデルを構築することでシミュレーションを高速化し最適制御設計に活用した事例をご紹介いたします。

シミュレーションの背景・目的

工作機械の加工用マシニングセンター主軸のモータは発熱することによって熱ひずみを発生させます。この熱ひずみによる変形が加工精度に影響を及ぼすことが考えられるため、このモータの発熱による変形を打ち消すために別途ヒータを取り付けて主軸ハウジングのズレ量を制御によって補正します。そのための制御対象のプラントモデルを3D FEMの伝熱-構造連成解析の結果データを学習用教師データとして使用します。この学習用のデータをAnsys TwinBuilderのDynamicROMのディープラーニングによるモデル低次元を行いROMモデルの構築をします。本事例ではその低次元化されたモデルに対してPID制御を実施し、熱ひずみによる変形を補正する制御系設計を実施します。

3D解析モデルと解析条件

解析モデル


(図1)解析モデルの3D形状

出典:工作機械の設計学(応用編)日本工作機械工業会

解析条件

現象を単純化させるため、断面形状を抜きだし2D解析モデルを作成します。
熱による応答が対称になるように設定、今回は主軸からの切削熱は無視しています。
材料は構造用鋼に設定し、境界条件及び、ヒーターは以下に示す通りです。


(図2)解析モデル(熱源分離型)の3D形状

(図3)解析モデル(熱源分離型)の2D 対称モデル

3D CAEモデルのROM化

水色(主軸頭本体)と桃色(主軸ハウジング)のパーツの接触部はほぼ熱が移動しない条件としており、その為、次の2つの系の応答をそれぞれROMモデルとしている。


(図4)主軸頭本体(水色部分)と主軸ハウジング(桃色)部分モデルのROM化

(図5)主軸頭本体部分の解析モデルと学習用解析パターン

ROM_A用に設定した主軸頭本体モデル水色部分のモデルは伝熱構造の連成要素を使用し、モータの発熱による熱量を熱流として境界条件に与えています。FEMの解析結果として温度結果と変位結果が分かります。ROMモデルには入力を温度、出力を変位として、このFEMの解析で得た温度と変位を学習用データとしてモデルを作成します。同様にして主軸ハウジングのFEMモデルもROM化します。


(図6)主軸ハウジングの解析モデルと学習用解析パターン

ROM_AモデルとROM_Bモデルそれぞれ複数パターン伝熱構造解析を実施してDynamicROMの学習用教師データを作成します。

ROMモデルによるシステムシミュレーション

DynamicROMの学習によって作成したROM_AモデルとROM_BモデルをAnsys Twin Builderへ取り込んで制御シミュレーションを実行する。


(図7)ROMによる熱変位補正制御システムシミュレーションモデル

上記のシステムシミュレーションモデルは、主軸頭本体のROM_Aモデル(上側のROMモデル)と主軸ハウジングのROM_Bモデル(下側のROMモデル)を取り込んでいる。ROM_Aモデルはモーターの発熱によって生じた温度を入力として与えて出力が変位となっている。またROM_Bモデルには補正用ヒーターによる発熱量が入力として与えられ出力が同様に変位となっている。これらの両方の変位を足し合わせてその結果がゼロになるように(熱ひずみによる変形が補正されるように)PID制御でヒーターの発熱量を制御する仕組みとなっている。


(図8)熱変位補正制御シミュレーションの最適化による比較

図8のグラフはPID制御の制御パラメータを最適化でチューニングした結果と最適化しない結果、また制御も実施しない結果をそれぞれ比較したものになります。上での制御シミュレーションの結果と最適化しない結果を比較したものが図8のグラフの結果である。図8の中の最適化でパラメータをチューニングした緑色のグラフでは、ほぼ継続して変形がゼロの状態をキープしていることが分かります。

Ansys、ならびにANSYS, Inc. のすべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、ロゴ、標語は、米国およびその他の国におけるANSYS, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。その他すべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。本ウェブサイトに記載されているシステム名、製品名等には、必ずしも商標表示((R)、TM)を付記していません。 CFX is a trademark of Sony Corporation in Japan. ICEM CFD is a trademark used by Ansys under license. LS-DYNA is a registered trademark of Livermore Software Technology Corporation. nCode is a trademark of HBM nCode.