解析事例
IPM(InteriorPermanentMagnet)の電磁界解析
こんな方におすすめ
- 三相永久磁石同期モータの設計を検討したい
- コアロス、トルク、磁束密度を解析したい
IPM(埋込磁石内蔵型)モータは永久磁石を用いているため、磁気飽和や損失を考慮して設計をすることが重要となります。また安全確保のためにモータから生じる磁束密度の想定やモータ特性であるトルク値は重要となります。
本事例では、電磁界解析ソフトAnsys Maxwellを用いてIPMモータについてトルクやコアロス、磁束密度分布を算出した結果についてご紹介します。
解析の目的・背景
日本では永久磁石を用いたPM(Permanent Magnet)モータが最も使用されており、高効率・小型の特徴から自動車や白物家電、産業機器など幅広く使用されています。そのため使用用途に応じた出力が必要となり、鉄損や銅損、磁束密度等、モータの特性を低下させる原因を把握し、詳細に設計する必要があります。またIPMモータでは永久磁石の形状や配置の自由度が高いため、設計から特性を作り出すことができます。
解析では実環境で懸念されるコアロス、磁束密度分布、トルクの算出を行います。
解析手法
本事例では、2Dの4極24スロットの三相永久磁石同期モータ(埋込磁石内蔵型)を想定し、半径56mmのステータコアと半径27.5mmのロータコアを1/4対称モデルとし、回転速度を1500rpmとし、巻線ターン数を35ターンとし、三相電流をそれぞれ与えて解析を実施しました。
三相電流の印加には回転子である永久磁石の位置を初期位置とし、4極(2極対)のモータであるため、各Windingに設定した三角関数sin、cosの角度項をθ=2*Positionと設定しています。作成したモデルは2D表現のモデルである代わりに、奥行き長を60mm、対称性を4と設定することで解析時間の短縮と自動換算されたフルモデル値を出力・表示させています。
解析モデルと解析条件
解析モデルとメッシュ
(図1)解析モデルの形状
図1に解析モデルを示します。ロータコア周辺のオブジェクトは回転を定義するためにInner_Regionを設定しています。コイルは四角のバルクモデルで表し、三相を印加するため色分けをしています。
(図2)解析モデルのメッシュ
図2に解析モデルのメッシュを示します。モータの磁界が発生する場所は精度を上げて結果を確認する必要があるため、コイルと磁石モデルはメッシュサイズを設定しています。
解析条件
解析条件は回転速度と極数から電気角2周期分の解析時間になるように設定し、時間ステップは電気角1周期当たり120ポイントに設定しました。場の保存は20msから40msまでとし、タイムステップを2msに設定しました。
解析結果:磁場分布
(図3)解析結果:磁場分布
図3に磁場解析の結果を示します。時間が経過することでロータコアが回転し、その時の磁束密度を確認できます。
(図4) 解析結果:磁束密度のグラフ化
図4に磁束密度のグラフを示します。(a)のようにラインを作成し、ライン上の磁束密度を(b)のように横軸に距離、縦軸に磁束密度をとったグラフの作成ができます。
(図5)解析結果:トルクとコアロスのグラフ
図5はトルクとコアロスの計算結果になります。トルクは一定周期が得られていることが確認できます。またコアロスは時間経過によって同大する傾向が見られ、最大8Wのコアロスが発生していることがわかります。
本解析手法では、実環境で懸念されるコアロス、磁束密度分布、トルクの算出を紹介しました。