解析事例
移動する物体を加熱する輻射伝熱解析
構造−伝熱ダイレクト連成解析事例
こんな方におすすめ
- 炉の中を通過させて加熱する工程をAnsysで解析したい方
- 構造―伝熱連成解析を利用して移動する物体を解析したい方
ベルトコンベヤーに乗って移動する物体が、ヒーターの下を通過して加熱される様子をAnsysで解析した事例をご紹介します(図1)。
(図1)解析結果例:温度コンタ図
解析の目的・背景
物体を移動させながら炉の中を通過させて加熱する工程は、様々な生産現場で見られます。このような工程で物体がどの程度加熱されるかをCAEでシミュレーションする場合、物体は静止していると仮定して伝熱解析を用いるのが一般的かと思います。しかし、物体が移動するにつれて加熱される度合いが異なる場合は、構造と伝熱を連成させたシミュレーションが必要となります。
そこで本稿ではAnsysの構造―伝熱ダイレクト連成解析を利用して、移動する物体を輻射により加熱する解析手法をご紹介します。
解析手法
Ansysの連成解析手法はダイレクト連成とシーケンシャル連成の2種類に大きく分類されます。本解析ではダイレクト連成を用いる解析システムである[Coupled Field Transient(連成場時刻歴応答解析)]を使用しました。時間積分効果は伝熱のみONとしました(図2)。
移動する物体で問題になるのが輻射の定義です。Ansys Workbench
Mechanicalで面―面輻射を定義すると内部的に伝熱表面効果要素を作成しラジオシティ法で計算されます。しかし、表面効果要素は大変形機能を持たず物体の移動に追従できないため今回のような解析には適しません。そこで表面効果要素を使わずに、コマンドを用いて物体表面節点に輻射を直接定義する手法を採用しました。
さらに、デフォルトでは最初の1回しか形態係数が計算されないため、コマンドを用いて各荷重ステップで変位結果を元に形態係数を再計算させる設定を行いました。解析フローを(図3)に示します。
解析モデルと解析条件
解析モデル
解析モデルとメッシュを(図4)に示します。3次元連成場要素を用いています。
解析条件
加熱対象物は強制変位で+X方向に移動させます。ある程度移動した段階で形態係数を再計算させるため、細かく荷重ステップを区切ります。本解析では20荷重ステップを定義しました(図5)。
ヒーターは上部を温度固定としました(図6)。
ヒーターの下面と加熱対象物の上面、および雰囲気との間で輻射により熱の移動を行うように設定します。前述のとおり輻射はコマンドで設定しますので、コマンドで利用できるよう面の名前選択を作成しておきます(図7)。
コマンドによる輻射の定義
定義した名前選択とコマンドを用いて輻射を定義します。本解析ではコマンドの実行タイミングを2つに分けて定義しました。コマンドの実行タイミングはコマンドオブジェクトの詳細ビューで設定できます(図8)。
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