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解析事例

電磁界解析

Ansys3Dコンポーネント機能を使った有限サイズのフェーズドアレーアンテナの解析

こんな方におすすめ

  • 大規模なフェーズドアレーアンテナの設計を効率よく、高精度に実施されたい方

解析概要

適用周波数帯がミリ波となる5GやADAS用のアンテナ設計において、フェーズドアレーアンテナのビームフォーミング特性の評価が重要となります。複数のアンテナ素子から構成されるフェーズドアレーアンテナは、アンテナのサイズ、配置及び素子数が重要なパラメータとなります。特に性能を大きく左右するビームフォーミング適用時のアンテナゲインを充分得るには、アンテナの素子数を多くする必要があります。加えて、レドームなどアンテナカバーの存在や複雑な形状を持つアンテナをミリ波帯のような高い周波数帯で動作させることを考慮すると、解析の計算コストが膨大になるため、効率のよい設計フローが求められます。これまでAnsys HFSSでは、単一のアンテナ形状から有限および無限サイズの一様な分布を持つフェーズドアレーアンテナを効率よく解析できる機能をサポートしてきました。これをさらに拡張し、大規模なシミュレーションモデルをコンポーネント化できるAnsys 3Dコンポーネントを使うことで、ユニットセル単位で電磁界シミュレーションが可能となりました。これにより、サブアレイ、フルアレイレベルで、パフォーマンスの最適化を高速かつ高精度に実現できます。


図1. 77GHz帯 8x8 フェーズドアレーアンテナ

77GHz帯を対象としたレドーム付きの8x8のフェーズドアレーアンテナのビームフォーミングの特性を3Dコンポーネント機能を使って解析します。アレーアンテナの外観および寸法を図1に示します。

解析モデル

3Dコンポーネントを使ったフェーズドアレイアンテナ


図2. 3Dコンポーネントを使ったフェーズドアレーアンテナ

77GHzのような非常に高い周波数帯の場合、多数のアンテナ素子で構成されたフェーズドアレーアンテナを解析するには、レドームやアンテナ形状が複雑になればなるほどより多くの計算コストを必要とします。 Ansys 3Dコンポーネントは、Ansys HFSSの電磁界シミュレーションに再利用しやすい、大規模なシミュレーションモデルを小規模なモデルへとサブコンポーネント化します。これには、材料特性、境界条件、メッシュ設定、電磁場励振、各種モデルのパラメータもすべて含まれた形でカプセル化されます。図2に3Dコンポーネントを使用した本解析のモデルを示します。

モデルの3Dコンポーネント化


図3. フェーズドアレーアンテナを構成する各3Dコンポーネント
(a) アンテナ及びレドーム(天井)、 (b) 基板及びレドーム(サイド) 、(c) 基板及びレドーム(コーナー)、
(d) 放射空間

図4. 3Dコンポーネントに適用する境界条件

図3にフェーズドアレーアンテナを構成する各モデルの3Dコンポーネントを示します。これらはアレイ全体のパフォーマンスを解析する際の単位セルとして利用され、計算負荷の低減も期待できます。また、相互結合、エッジ効果なども含めることも可能となるため、解析精度を落とすことなく、計算が実施できます。各モデルに適用される境界条件は図4の通りです。

ユニットセルの配置


図5. アレーユニットの配置

図5に3Dコンポーネントアレーの設定画面を示します。特に5Gやレーダーなど超多数のアンテナ素子を扱う場合は、設計の作業効率を飛躍的に向上させます。

Finite Array Beam Angle 機能


図6. Finite Array Beam Angle機能

フェーズドアレーアンテナの特性を評価するためには、アレーアンテナのアンテナゲインおよびビーム走査できる角度(Scan angle)が重要となります。Ansys HFSSに付属するToolkitにあるFinite Array Beam Angle(図6)を使うことで、Scan angleを実現するために必要な各アンテナに給電される電磁波の位相(Phase shift)を自動で算出し、各アンテナに適用してくれます

解析結果


図7. 解析結果(放射パターン)

図7に放射パターンの解析結果を示します。図7(a)より、フルモデルおよび3Dコンポーネントで計算した結果が良く一致しているのが分かります。Toolkitで指定したScan angleを変えた場合の放射パターンを図7(b)および(c)に示します。結果より、Θ方向に対するビーム走査の様子が確認できます。

電界強度分布


図8. 解析結果(電界強度分布)

3Dコンポーネントアレー機能より、アレーアンテナ全体の電磁場を可視化することも可能です。図8にパッチアンテナの表面の電界強度分布を示します。

効果

今回の解析事例ではAnsys HFSSで標準で利用できる4コアを使用して解析した結果、3Dコンポーネントアレー機能を使うことで、計算時間を約88%、メモリを約50%削減ができました。これにより、高効率で高精度なフェーズドアレーアンテナの設計・開発が実現できることが分かります。さらに、Ansys 3Dコンポーネント機能を使うことで、お客様と顧客間のHFSSシミュレーションモデルおよび解析結果の共有が可能となり、開発のコラボレーションの加速や市場の優位性を実現できます。


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