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解析事例

構造解析

金属3Dプリンターのブレード破壊予測解析

Ansys AdditivePrintを使ったAdditiveManufacturing解析

はじめに

従来の製造手法(鋳造や切削など)では難しかったインフィル構造など、複雑な形状の造形を実現した金属Additive Maufacturing(以下AM = 3Dプリンター)は航空機、自動車、医療などの業界を中心に導入が進んでいます。本解析では造形中における構造物の変形量を予測し、その造形物と金属3Dプリンターの粉末材料を敷き詰めるリコータブレードが衝突しないかを事前に検証しています。

いわてデジタルエンジニア育成センターのご紹介

いわてデジタルエンジニア育成センターは、岩手県からの委託および北上市からの補助を受け地域製造業の競争力強化へ向けた、3次元活用技術者育成を目的とした事業施設です。3次元CADをはじめ、CAE、CAM、計測・検査、リバースエンジニアリング、3Dプリンターなど3次元技術に関する各種設備をそろえ、人材育成および技術支援を行っています。

CAEに関する人材育成として、定期的に開催する集合教育の他、学校関係への講師派遣、企業のニーズに沿った個別カリキュラムによるオーダーメイド講習などを実施しています。構造解析、機構解析、熱流体解析、樹脂流動解析など様々な解析について、機能だけではなく、有限要素法や材料力学などの座学も説明しながら、受講者のレベルに合わせた講習を行っています。各種ソフトウェアの体験セミナーなど情報提供のための無料セミナーも随時開催し、岩手県内を中心にCAEの普及活動に努めています。CAEに関する技術支援としては、ソフトウェアの操作、解析方法に関する相談や問い合わせのほか、導入に関する相談についても中立的な立場でアドバイスを行っています。また、一部のソフトウェアについては機器使用や受託解析にも対応し、地場企業の困りごとに対する課題解決のお手伝いをしています。さらに、学生の卒業研究におけるCAEの活用についてもサポートを行っています。また小学生に3Dものづくりに触れてもらう体験会なども行いながら、岩手県内の大人から子供まで幅広い方々に対して、CAEをはじめとしたデジタルツールのメリットについて理解してもらい、活用してもらえるよう日々取り組んでいます。

解析の目的・背景

金属AMは大きな熱変形を伴う可能性があるため、3D-CADでデザインした形状が1回の造形で出来上がらないことがあります。また、造形時間の長さ、高価な材料コストなどの課題があるため開発日程の遅延やコストアップを招きかねません。そこで、金属AMのプロセスをシミュレーションし、造形物の変形量やブレードの破壊予測、サポートの最適化などを事前に検証することが重要になります。

解析手法

今回はAnsys Additive Printによる固有ひずみ法を用いた解析手法を用いています。Ansys Additive Printは金属3Dプリンターのオペレータを対象としたツールで、初めて解析を行う方でもとても簡単に設定できるようになっています。

解析モデルと解析条件

解析モデル

ピラミッド形状の外形に対して、異なるインフィル(ラティス)構造を施した2種類の構造物をモデル化して両者を比較します。・左側:粗いインフィル構造・右側:細かいインフィル構造

解析条件

実際に金属3Dプリンターを設定する条件と同様の入力を行うだけで、レーザー方式の粉末床溶融結合(L-PBF)の条件定義は完了します。
・ベースプレート温度:80℃
・レイヤー厚:50μm
・開始レイヤー角:57°
・レイヤー回転角:67°
・ハッチ間隔:100μm
・ストライプ幅:10mm
・レーザー出力:195W
・スキャンスピード:1000mm/s

解析結果

リコータブレードと衝突する場所は赤色のコンターで表示されます。この結果から左側の粗いインフィル構造では数箇所でリコータブレードと衝突する可能性があるものの、右側の細かいインフィル構造では衝突しない結果となりました。


ブレードクラッシュアニメーション

ブレードクラッシュ箇所①

ブレードクラッシュ箇所②

考察

これにより、最低限必要なインフィルの量を事前に見積もることが可能になり、金属AMの品質向上につなげることができるようになります。

解析によって得られた効果

実際に金属3Dプリンターを用いて造形する前に、シミュレーションによってブレード破壊による不具合を発見し、無駄な造形を回避できたことによって、短期間での理想形状の造形や材料コストの削減が可能になりました。
また、金属3Dプリンターに入力するパラメータ(レーザー出力など)の検討も行うことができるため、適切な条件を事前に見つけることができ、造形物の品質向上につながりました。

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