解析事例
ICパッケージ成形時の溶融樹脂圧力によるパドルシフト・リードフレーム変形解析
樹脂流動解析と構造解析の連携
こんな方におすすめ
- ICパッケージの成形で不良の要因となるパドルシフト・リードフレーム変形を低減したい
- 樹脂流動解析と構造解析との連携解析を簡単に行ないたい
はじめに
すでに本Webページにおいて「 ICパッケージのトランスファー成形解析 」の事例をご紹介しておりますが、今回はICパッケージの成形で不良の要因となるパドルシフト・リードフレーム変形を、樹脂流動-構造連携解析で予測した事例をご紹介いたします。
PlanetsXは、マルチフィジックス解析ツールAnsysの統合操作環境「Ansys Workbench(以下Workbench)」上で射出成形解析が可能なツールです。またAnsysは構造、伝熱、電磁場などの様々な物理現象を解析する解析プロダクトを有しており、ユーザーが個々の解析プロダクトを組み合わせて、目的にあわせた連成問題を構築することが容易です。
今回は、このWorkbenchの特徴である連成解析機能を利用して、樹脂流動と構造の連携解析を行っています。
解析条件
射出成形解析、およびパドルシフト・リードフレームの変形解析を行うための有限要素モデル(メッシュ)を用意します。射出成形解析では樹脂の流れ込むキャビティのみのメッシュ(図1参照)を使用します。
キャビティのみのメッシュで射出成形解析を行うと、メルトフロント、樹脂温度分布、圧力分布などの物理量が時刻歴で出力されます。これら物理量のうち、圧力の値を境界条件としてパドルやリードフレームのメッシュ(図2参照)を利用して構造解析を行い、樹脂流動の影響で構造物がどのように変形するかを予測します。
上記、連携解析の際には異なるメッシュ間で圧力値を受け渡しする必要がありますが、これはWorkbenchの 外部荷重転送機能 を利用することにより簡単に行うことが可能です。
構造解析に際しては拘束条件を与える必要がありますが、本事例では金型に挟まれた部分のジオメトリ上を完全拘束して解析しました。
プロジェクト画面
今回の樹脂流動ー構造連携解析におけるプロジェクト画面を図3に示します。
樹脂流動解析を実施すると圧力データが出力され、それは外部データとという形で境界条件として構造解析にリンクします。
樹脂流動解析結果
図4にメルトフロント図、図5に充填完了時の圧力分布を示します。
メルトフロント図、および充填完了時の圧力分布図から、樹脂の流動状態はチップ側と反チップ側で異なり、最終充填位置はチップ上であることがわかります。
構造解析結果
樹脂流動解析で出力された圧力のデータを境界条件として、パドルシフト・リードフレームの変形を計算しました。パドルシフトとリードフレームの変形を図6に示します。
パドルはチップ側に変形しました。また変形量はゲートに近い部分が大きくなりました。この結果は圧力分布をよく反映しているものといえます。また、パドルの変形に比べてリードフレームはほとんど変形を示しませんでした。これは金型による拘束のためと思われます。
最後に
PlanetsXでは今後もICパッケージ成形に求められる機能の追加を行う予定です。
PlanetsXをICパッケージ成形に携わるエンジニアの方にぜひお使いいただき、不良の低減・生産性の向上に利用していただきたく存じます。
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