解析事例
MEMSくし型フィンガー形状の静電場解析による最適化設計
“汎用有限要素法解析ツールAnsys”と、” 最適設計支援ツールOptimus ”を用い、静電場解析におけるMEMSくし型フィンガー形状の最適化を行いました。本事例では、単に最適解を算出するにとどまらず、設計の不確定要因(バラツキ)が応答に及ぼす影響(ロバスト・信頼性解析)を取り入れた最適化を行っています。今回モデル形状は、Ansysのモデリング機能を使用し作成しております。

設計変数
・Length 95≦x≦105
・Gap 4.5≦x≦5.0
目的関数
・最大変位→ ターゲット値0.1
Process Automation
Optimusと接続可能なアプリケーションは、以下の条件を満たしている必要があります。
- 入出力ファイルがText形式であること
- バックグラウンドで実行可能なこと
Ansysは上記条件を満たしていますので、Optimusにて容易に自動化設定が可能です。
Optimusによる自動実行の流れ
上図の自動実行の流れを、Optimusにて定義すると右図のようになります。Optimusでの自動設定は、ブロック線図によって直感的に定義する事が可能で、今回の事例であればわずか10分足らずで自動化設定が可能です。
一度Optimusで自動実行の仕組みを作れば、その後はOptimusのGUIを使って、何度でも解析を繰り返し実行する事ができます。よって、どなたにでも解析が実行できる環境が整います。
自動化設定をすることによって、これまで解析者の負担となっていた、パラメータ組み合わせの作成(直交表・実験計画法)や、数値入力、解析の実行、ポスト処理の実行といった非生産的作業を激減させる事ができ、設計業務の効率化を図る事ができます。
Optimusによる自動実行のメリット
- 非生産的業務からの解放(パラメータ入力等)
- 設計期間の短縮化
- 製品品質の向上
- CAD・CAEライセンスの有効活用(夜間・休日など)
- ケアレスミスの削減
Design Optimization / Robust & Reliability
始めのステップとして、決定論的最適解を求めます。まずは実験計画法・応答曲面法により、設計空間を分析します。この作業により、パラメータ同士の寄与度・相関性等の、設計において非常に重要な情報を得る事ができます。この考察から得られたポイントを元に、大域的最適化アルゴリズムである、焼きなまし法を実施します。これにより、決定論的最適解を得る事ができました。
次に、得られた決定論的最適解の設計変数に対し、下記の通りに分布(バラツキ)を与え、モンテカルロ法を実施し目的関数である最大変位のσ(シグマ)を計算します。
モンテカルロ法によって得られた最大変位のσは0.00051でした。さらに目的関数のσが上限値、下限値を超えてしまう”失敗の確率”を、FORM (First Order Reliability
Method)によって求めます。FORMによって得られた失敗の確率は、上限=1.0%、下限=4.4%となりました。
上記結果を用い最終ステップとして、最大変位のσ(0.00051)及び、σが制約の上限・下限を超えてしまう失敗の確率を最小化する、ロバスト・信頼性最適化を行います。
Optimal Design
ロバスト・信頼性を考慮した最適解は以下の通りです。
バラツキ考慮前の最適解 (決定論的最適解) |
|
設計変数 | |
Length | 98.71464 |
Gap | 4.81468 |
出力値 | |
変位(Displacement) | 0.1000006 |
σ | 5.20E-04 |
下限値を超える確率 | 4.43% |
上限値を超える確率 | 0.96% |

バラツキ考慮後の最適解 (確率論的最適解) |
100.5638 |
4.76845 |
0.100157 |
2.36E-06 |
0.00% |
0.00% |
目的関数である変位は、バラツキ考慮前も考慮後も、ほぼターゲットである0.1という解を算出できておりますが、最終目的であるσ・制約を超える確率に注目しますと、考慮前・考慮後で明らかに差が出ているのがわかります。特に制約を超える確率においては、上下限共に0.00%を実現しております。
Summary
Optimusによる解析(Ansys)の自動化
解析者にとって非生産的作業である、パラメータ入力などの繰返し解析作業をOptimusが自動化し、作業効率を劇的に改善する事ができました。
ロバスト・信頼性機能
設計不確定要因(設計変数のバラツキ)を考慮し、目的関数のσ(ロバスト)と、σが制約を超えてしまう確率(信頼性)を最小化する
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