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研究開発からより良い社会の実現まで、創造を支える可視化技術(後編)(2/2)

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それが、京都大学での政策のための科学としての取り組みにもつながるのでしょうか。

京都大学の中で政策のための科学の人材育成ユニットというところで、副ユニット長を仰せつかっています。これまで政策における意思決定において声の大きかったら通るということを少し改善しようと、エビデンスベースで何かできるんじゃないかと。その何かというところで私としてはデータ可視化を使って、情報化するという枠組みを取り入れたらどうかというようなことを申し上げています。そのときはナビエ・ストークスク方程式などが出てくることはないのですが、最初からデータが出てくるわけです。で、この間とこの間に関係があるからこういう政策を作ろうとなります。

たとえば、政策議論の現場で、都市化が進んでいるところでは犯罪率が高いとかよく言われるが本当なのかということになっても、現状ではあまり手段がない。実は、その仮説を検証できるデータはあり、人口密度と犯罪率を散布図でプロットし関係をみることはいくらでもできるようになってきています。ですが、政策を議論する現場でそのような環境が全くないので、自分はこう思うというだけで(政策が)通ってしまう。それが本当かどうかちょっと時間をかければできるのに、それが口惜しいところです。これも融合可視化のひとつとして少しでもお役に立てればと取り組んでいます。

役所の人なら容易に手に入るデータを、誰でも容易に手に入れられるようにするということで、オープンデータという話が出てくるんですね。

オープンデータということで、いろんなデータが取られていることは分かるのですが、実際どんなデータがあるのかということは、データのカタログ情報などなく、検索エンジンに掛けてもあるなしの結果は返ってこない。都市化について、犯罪率についてデータはありますか?という問いに答えてくれる検索エンジンはありません。言語処理やデータベースの専門家にも聞きましたが、なかなか難しいそうです。たとえば、犯罪率というデータタグはなく、それは刑法犯認知件数となっています。類似語でもない言葉を結びつけ、データの有無を知ることができる検索エンジンが必要です。そのようなエンジンと可視化がうまく重なれば冷静な形で議論ができると思います。

ただデータを公開しても駄目だということですね。

さきほどの犯罪率と刑法犯認知件数がとても近いといったことをデータとして整備しようとすることがようやく進み始めているようです。

マスメディアの報道でも、限定されたエリアでの結果を全体に当てはめるような報道があり、疑問を持つことがあります。

つっこみを入れたくなることがありますよね。そういうつっこみをよりロジカルに多くの方にしていただける社会の方が健全だと思います。データをうまく使えばそういったことが近づいてきます。使われなければゴミが溜まっていくばかりだと思います。

こういった取り組みは、欧米では進んでいるのですか。

可視化までは行ってないと思いますが、データを使ったデシジョンメーキングについてはヨーロッパがかなり先行していると思います。ポリシーメーキング2.0などと呼ばれています。ポリシーはアジェンダセッティングからスタートして、デザイン、インプリメンテーション、チェックをするというPDCAのサイクルを回します。それぞれのフェーズでICTを活用しようとしています。アジェンダセッティングではSNSでいろいろな方の声を聞き、投票で選定し、その後、クラウドソーシングで実施者を募る。やりたい人間が集まってくるのでコストも抑えられる。そして実施後には評価を行い継続するか決定する。実際のそういう仕組みが出来上がっています。

イギリスでは医療保険の支給をするかどうか、生存率などのデータを基づいて決めていると聞いたことがあります。

医療などが対象になると、実施する上で如何に共感を得るかということも重要になってきます。そのようなところでも可視化が役立てると思っています。

共感、価値観という話だと、可視化はきれいな絵を作って結果をごまかしているのではないかという人もいますね。

そこで最近、評価グリッドというものを用いています。認知というものを可視化するということもやっています。人間にはもともと備わっている認知構造というグラフ構造があるという仮説があります。たとえば、二枚の絵を見せて、どちらが好きか、なぜ好きかを順に尋ねていくことで、根本的な価値観が分かってきます。こうして人間が好きと感じる絵を作ることができるのですが、同時に赤が好きな人間と緑が好きな人間が実は上位では同じ嗜好であることが分かったりします。また、一見似ている嗜好でも根本では異なっていることもあるでしょう。そういったことが分かった上で、議論がされてより良い結果に繋がるのではないかと思っています。赤が好きな人間と、緑が好きな人間がその嗜好そのものだけで理解することは難しいですが、それぞれの嗜好について因果関係を含めて知ることができれば理解しあえるかもしれません。

可視化が人間と深く関わった研究分野だということは良く分かりました。ビッグデータの活用に留まらず、社会をよりよくし、人々を幸福にするためにも、とても期待できる技術だと感じました。本日はありがとうございました。

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