スマートグラスを使用した遠隔作業支援により、製造業や医療現場などでの業務効率化・人員不足の解消に繋がっているとご存知でしょうか。 2020年以降、新型コロナウイルス感染症による影響で、テレワークの普及など働き方改革が行われている最中です。その中で、スマートグラスを使った遠隔の指示方法も有効な手段として注目されています。 業務のやり取りや作業の進行に役立てられるスマートグラスは、製造業や医療現場だけでなく他の業界が抱える課題の解消にも繋がるでしょう。 しかし、スマートグラスを使うメリットやデメリットなどをもっと深く知ってから業務へ導入されたいかと思います。 今回は、業務用スマートグラスを、市場規模やメリット・デメリット、業界ごとの作業手順の課題などに触れて解説します。
コロナ禍により一躍注目を集めることとなった業務用スマートグラスは、どの局面で活躍しているのでしょうか。 この項目では、業務用スマートグラスの用途や活躍している業界、メリット・デメリットをピックアップしてご紹介します。
スマートグラスは、「ウェアラブルデバイス」(肌身につけられるIoT機器やコンピューター)の一種です。
ビジョンレンズやマイク、GPS、カメラなどがヘルメットに装備されており、頭部に身につけることで使用できるアイテムとなります。スマートグラスを装着した作業者はビジョンレンズを通して表示される情報を得られるようになり、遠隔からの指示を的確に受けられるのが特徴です。
目の前の作業へ役立てられる映像や情報を瞬時にビジョンへ表示させる仕組みとなっているため、業務のスムーズな進行をサポートします。
スマートグラスについては以下の記事でも詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
関連記事:スマートグラスを活用した遠隔作業支援とは?AR技術の活用
業務用スマートグラスは、製造業や医療現場をはじめ遠隔での指示で作業ができる業界で普及しているのが特徴です。いずれも、IT企業が開発した製品を使用し、業務に役立てています。
スマートグラスの開発・実用化へ真っ先に取り掛かった企業が「Google」と「Microsoft」です。特に、Microsoftが開発した「HoloLens」は代表格に挙げられるスマートグラス製品となります。
HoloLensは、大手自動車メーカーの設計をはじめ、アメリカ海軍でも使用されているアイテムです。製造業の生産ラインや医療現場の生体情報をモニタリングできるシステムで役立っています。特に後者は新型コロナウイルスの発見に繋がっているのも特徴です。
AR(拡張現実)とVR(仮想現実)を組み合わせ、現場作業者のサポートを安全に進められることが強みとなります。
業務用スマートグラスを使うメリットを3点ピックアップしました。いずれも、企業活動における業務進行の潤滑化に貢献しています。
1つ目が、現場での作業効率改善と生産性の向上です。 以前は、現場を受け持つ責任者が現地で作業の指示および進行具合を確認する流れがセオリーとされていました。同時に、移動や待機にかかる時間で効率が悪く、担当者から出された指示がスムーズに伝わらない弱点も抱えていました。 しかし、スマートグラスを導入することにより、指示を出す側も作業を行う側も各々が滞在する場所でのやり取りが可能です。無駄が省けることにより、スムーズな作業進行を実現して生産性の向上に貢献しています。
2つ目が、若手作業員の育成です。特に製造業では問題となっているポイントです。 熟練者の高齢化による引退・退職に伴い、知識と経験を若手の作業員に伝える場が少なくなっているのが実情です。物づくりの現場では言葉や文献だけでは伝わりにくく、知識や経験を上手に伝えられない難点があります。 スマートグラスに装着されているカメラで作業者の状況を映し出し、熟練者がチェックしつつ、的確なタイミングで作業者に指導が可能です。体力面や身体面の問題で現場に通えない状態でも、熟練者が若手作業員に指導ができるのが強みとなります。
3つ目はトラブルに素早く対処できる点です。 作業現場で事故が発生した際、責任者はすぐに指示が出せないケースがありました。メールや電話でやり取りをし、状況が悪ければ現場まで移動する等、トラブル対応の一連の流れが非効率的であったためです。 しかし、スマートグラスなら、装着されているカメラを通じて作業員の状況を確認できます。事故などのトラブルが正確に伝わり、的確な対応をするよう指示が可能です。 これら3点のポイントから、無駄な時間ロスにより作業効率や生産性を失っていたのを、スマートグラスなら手短に済ませられるようになります。
スマートグラスについては以下の記事で解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
関連記事:スマートグラスとは?仕組みや活用事例を解説!
業務用スマートグラスを導入するデメリットとして、現状大きな問題はありません。 しかし、インターネット回線による通信環境の良し悪しで、スマートグラスを有効活用できるかが左右されます。 映像や情報をスマートグラスに装着しているビジョンレンズに映し出す、あるいはカメラの通信機能を使うためにはインターネット回線への接続が欠かせません。 スマートグラスを導入する際は、使用を考えている環境下でインターネット回線が問題なく使えるかなどのチェックを行うよう求められます。
スマートグラスによる遠隔作業支援を取り入れる際、それぞれの業界が抱える課題に沿って上手に取り入れられると問題解消に繋がります。 この項目では、現場を取り巻く業界ごとの課題をピックアップしました。いずれも、今後の社会活動を左右する課題です。
エネルギー業界が抱える課題は、「安定供給」と「自然災害での安全確保」です。
日本のエネルギー自給率は、アメリカやイギリス、フランス、ドイツなどの主要国と比較して低い水準にあります。化石燃料を中東などの海外から輸入し、高く依存している状況です。加えて、中東各国の情勢に左右されるため、エネルギー価格の高騰も大きな懸念事項です。
また、同じく課題となっているのが自然災害への対策です。日本に存在する送電鉄塔の半数が老朽化している問題を抱えています。設備の更新作業により、地震や台風、豪雨などの自然災害に強さを発揮する、あるいは復旧が迅速に行える環境が求められています。
水道業界の課題は、「事業収入の低下」と「施設修繕費の増加」です。
人口の減少や節水志向の社会に転換している情勢で、水道料金の収入減少が緩やかに進んでいるのが問題となっています。基本は水道料金で事業が成り立っているため、料金収入が減れば経営が立ちいかなくなる可能性があるでしょう。
また、施設修繕費の増加も課題です。地震に耐えられる強度を確保するための建物改築にかかる費用が年々増加しつつあり、職員の給与減少および職員数の減少に影響を与えているとされています。
製造業界の課題は、「人材不足」と「組織のデジタル化の遅れ」です。
就業者の減少に伴い、熟練者からの技術継承がままならない実情が問題視されています。熟練者からの技術継承がなければ、作り上げてきた技術の改善やトラブルの解消ができない状態となるからです。そのため、生産効率を改善するなどのノウハウを、データで再現できるようにするなどの対策を行うことが求められています。
技術継承を行いやすくするためにも、組織のデジタル化により業務の手法を変えていく取り組みも並行して取り組まなければなりません。製造業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められていますが、試行錯誤の繰り返しで最適解が見つかっていないことに加えて費用の高騰が問題となっています。
建設業界の課題は、「人手不足」と「働き方改革」です。
建築現場を管理する現場監督や職人が不足し、加えて現場を掛け持ちして勤務していることが懸念事項となっています。朝早い時間帯から夜遅くまで働くことに加えて、長時間の通勤と休日の少なさが改善ポイントとされています。
現場によっては休日出勤や別現場の応援なども対応しなければならないため、必然的に人材が定着しない就労環境が問題視されています。
物流業界の課題は、「宅配件数の増加」と「配達スピードの高速化」です。
ECサイトの普及により注文が簡単にできるようになり、個人宅への配達件数が増えているのが特徴となります。加えて、即日発送や翌日配送など対応スピードの早さも求められているのが実情です。
特に、「ラストワンマイル」を担う配送ドライバーにそれぞれの課題が負担となりのしかかります。長時間の労働に繋がっているほか、注文者の不在による再配達もあり、労働環境の悪化により、人材の定着が難しくなっているのが特徴です。
スマートグラスによる遠隔作業支援をはじめとしたARの活用により、課題に苦しむ業界はどのように変化していくのでしょうか。 この項目では、ARを活用した遠隔作業支援により期待できる効果を3つのポイントに焦点を当てて解説します。
業務の効率化が期待でき、働き方改革に繋がるでしょう。
複数の職場や現場を繋ぎ、対面で会う必要がなくなることで、移動の手間が省けてコミュニケーションがスムーズに取れるようになります。業務の円滑化にも繋がって生産効率の向上が実現可能です。
人件費の低減や長時間労働の是正にもつながるため、人材の定着が図れるのもメリットに挙げられます。
技術継承がしやすくなるメリットが挙げられるでしょう。
経験豊富な熟練者が現場から退く、あるいは遠方で勤務していたケースでも若手作業員に指導が可能です。スマートグラスを使用して作業を行えば、カメラにより映し出された映像によって相手に状況が伝わりやすくなるでしょう。
スマートグラスなどARの導入・活用により、業務品質の向上が期待できます。
全ての業務プロセスをネットワーク管理し、可視化することにより、生産性の向上やデータ活用が行われるでしょう。また、業務中の問題点を洗い出して、改善に繋がるヒントを見つけるのも容易となります。
いかがだったでしょうか。業務用スマートグラスを、市場規模やメリット・デメリット、業界ごとの作業手順の課題などに触れて解説しました。
スマートグラスを利用することで、熟練の作業者は従来なら現場へ出向き若手作業員へ実技で指導を行っていた工程を手短に済ませられます。加えて、若手作業員は映像や情報をビジョンレンズ越しで確認しつつ各種業務に取り組めるため、視覚的に技能を習得できるようになります。スマートグラスの導入で、技術継承の問題を解決し人材不足の解消に取り組むのも一つの手段ではないでしょうか。
サイバネットシステムではAR・VRを活用し、幅広い業界でお客様の課題に沿ったソリューションを開発することが可能です。
AR・VRを活用したソリューションについてのご相談やお見積り依頼についてお気軽にご相談ください。