Multiscale.Sim
ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池とは?

再生可能エネルギーの進化は、私たちの暮らしや産業のあり方を大きく変えようとしています。
その中でも、近年急速に注目を集めているのがペロブスカイト太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池は、結晶構造に由来する「ペロブスカイト型化合物」を光吸収層として用いる、新しいタイプの太陽電池です。
従来主流だったシリコン型とは異なり、軽量・柔軟・高効率という特性を兼ね備え、わずか数百ナノメートルの薄膜で高い光電変換効率を達成できる点が大きな特長です。
ペロブスカイト太陽電池の最大の魅力は、フレキシブル性と塗布型製造が可能な点です。
これにより、建物の壁面や窓、衣服、さらにはEV(電気自動車)の屋根など、従来の太陽電池では設置が難しかった場所への応用が現実のものとなりつつあります。建材一体型の太陽電池(BIPV)や、屋内光でも動作するIoTデバイス電源など、新しいエネルギー利用のかたちを切り拓く技術として研究が進められています。
また、曇りや雨の日などの弱い光や蛍光灯の光でも安定した電力供給が可能です。すでに実用化されているフレキシブル太陽電池(フレキシブルソーラーパネル)と比較して、ペロブスカイト太陽電池は低照度でも発電可能な高効率太陽電池だといえます。都市部や屋内環境でも太陽光発電の導入が進むことが期待されています。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量で自由な形状を可能にしながら、高効率かつ低コストな発電を実現する「太陽光発電の未来を担う技術」として、エネルギー社会の変革を牽引する存在となりつつあります。
ペロブスカイト太陽電池の量産化・実用化に向けた課題
ペロブスカイト型太陽電池の量産化・実用化に向けて、製造プロセス改善によるコストダウン&リードタイム短縮が望まれますが、以下のような課題があります。

耐久性の確保
強い曲げ荷重や繰り返し荷重によって微細構造内部で欠陥が発生し性能が劣化します。微細構造の不均質性を考慮するための解析技術が求められます。

微細構造のモデリング
微細構造は複数の結晶粒から構成される多結晶体のため、CADでのモデリングが難しく、設計精度に影響します。

機械的な材料特性の計測
極薄構造のため、実際の材料試験によって機械的な材料特性を計測し、物性値を取得することが困難です。

積層構造の破壊評価
各層の応力分布や破壊領域の可視化が必要です。薄膜を多数積層した複雑な構造を効率的にモデル化および解析しつつ、各層の応答を詳細に評価するための技術が求められます。

膨大な設計因子
ミクロな微細構造からマクロな積層構成まで、検討するべき設計因子が膨大にあります。実試験だけで最適な構造を見つけ出すことが困難です。
これらの課題に対して、CAE解析やAI設計支援を活用することで、設計段階からの品質向上と開発効率の向上が可能になります。
※ペロブスカイト太陽電池についての光学的アプローチはこちらで解説しています。
ペロブスカイト発電層の多結晶組織および積層構造を考慮した構造解析の解析ソリューション
サイバネットシステムでは、Ansys Workbench上で動作するMultiscale.Simを活用し、ペロブスカイト太陽電池の設計・評価を支援しています。このツールは、マルチスケール解析により、ミクロからマクロまでの構造情報を統合し、複雑な材料挙動を高精度に再現します。ペロブスカイト太陽電池の構造解析や材料設計を効率的かつ高精度に行うことが可能です。
解析ソリューション
ペロブスカイト層の結晶粒モデル化
結晶粒のモデリングには、モンテカルロ法+ボロノイ分割法によるランダム粒界生成実観察イメージベースのモデリングの2つの手法があり、解析目的に応じた選択が可能です。これにより、粒界構造や欠陥の影響を組み込んだ現実的な解析が行えます。

ミクロ構造の仮想材料試験による材料特性の取得
これにより、結晶構造を均質体と見立てた等価物性値を算出し、製品規模の解析に割り当てることが可能です。計算コストを抑えつつ精度を維持した大規模解析を実現します。

仮想剥離試験とAIを活用した粒界の破壊パラメータの逆同定
結晶粒界の剥離パラメータは実試験での取得が困難です。そこで、仮想試験とAIを組み合わせたアプローチを提案いたします。
- 様々な剥離パラメータを振った結晶粒モデルで仮想剥離試験を実施
- 得られたデータをもとにAIサロゲートモデルを構築
- 実試験応答に合致するパラメータを逆同定
上記のステップで粒界破壊挙動を高精度にモデル化できます。

複雑な積層構造体の構造解析


