解析事例
流体音響解析(流れに起因した音場の予測)
流体音響解析とは
流体音とは、機械的な振動に起因せず、流体力学的な要因で発生する音のことを指します。
例えば以下のような場合に適しています。
- 流体の運動が起因して生じている音について、音源分布の特性(強度・位相の分布)を把握したい。
- 音波の伝搬の様子を可視化したい。
- 静音化対策を立案したい。
流体音響解析の課題とWAONを用いた計算方法
流体音を計算するためには、非定常かつ細かな渦を考慮する必要があり、タイムステップやメッシュは非常に細かくなります。一方で伝搬する音波を追跡するためには、広範囲な空間を扱うほか、反射や回折などの現象も考慮する必要があります。そのため解析規模の問題から、1つのツールで空力音計算を行うことは現実的ではありません。
そこで流体音を計算するためには、一般的に、流体の流れを計算し、この結果から音源を抽出して、音波の伝播を解析するアプローチが用いられます。
ここでは、流体解析ツール「 Ansys CFD 」で音源情報を算出し、音響解析ツール「 WAON 」を用いて音波の伝播を計算しています。
解析フロー
解析結果
1. 音源領域の流れ場(Ansys CFD, EnSight)
- 円柱周りの流れを計算し、ある瞬間における渦度の等値面を作成したものです。
- 汎用ポストプロセッサ EnSight を用いて、奥の平面には流速ベクトルを、等値面には圧力値で色付けしています。
2. 音源データ(WAON、EnSight)
- CFDの計算結果から、渦放出周波数における音源データを抽出した結果を、汎用ポストプロセッサEnSightで可視化しています。
- Lighthillテンソルの一要素である の等値面を表示し、その位相は色で表現しています。
3. 音響解析結果(WAON)
- 抽出した音源から放射される音場を計算した結果です。渦放出周波数における音場を表しております。
- 円柱の後流に生成される渦による音は四重極ですが、円柱の散乱効果により、遠方では二重極の分布になることがわかります。