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研究開発からより良い社会の実現まで、創造を支える可視化技術(前編)(2/2)

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コンピュータの並列化やグラフィックスのパイプラインと関係するところでしょうか。

並列化技術を用い、格子群を分割して、格子数が比較的小さくなったときに、部分的に画像を作り、重ね合わせる方法もあるわけですが、部分的な画像の前後関係をはっきりと意識して重ね合わせなくてはなりません。そのような環境でもやはり並べ替えがなくてよいという仕掛けは有効性があると思います。

では、具体的な応用事例をうかがえますか。

水産資源に関する研究プロジェクトを行っています。最近気候変動が言われるようになってきて、我々も実感しています。梅雨の明け方が例年と異なるだとか、暑い日がつづいていても冷夏の予想だとか、予測のつかないことが多い。このことが切実に自分たちの生活に関わっておられるのが、たとえば漁師さんです。漁師さんは燃料を使いリスクをもって魚を追っています。大漁の時は報道されますが、何も釣れずに帰ってくることもあり、その頻度が増えてきています。これはどうしたことか、と国を挙げての関心事になっています。

で、これにどんなことが解決策として出せるか。今は、気象と同様、精度の高い海象のデータが手に入れられるようになっています。それを活用することで解決を図ろうとしています。海象のデータからたとえば3時間後の海流の速さ、水温、塩分濃度などが分かるのですが、それを生かすアイデアがありませんでした。これらのデータを渡されても漁師さんはどの漁場に向かえばよいか分からない。
そこで過去のビッグデータ、ここでは過去の漁獲高を活用します。漁獲高のデータには緯度経度、時間も記録されています。よく釣れた日の海象データとは紐付け可能なので、各海象データと漁獲高データになんらかの関係性があるか、多くの研究者が探索しています。まさにこれは機械学習のエリアです。まだ確実なものはないわけですが、ひとつのやり方としては漁獲高と水温の間に相関がないか、何らかの式で表せないか導き出します。つづいて、漁獲高と塩分濃度との関係を調べます。

そのような相関の可能性が変数の組み合わせの数だけありまして、全体としてどのように働いているかを求める時、今、漁獲高と相関の高い変数を掛け合わせて相乗平均を出しています。そして、その結果を漁獲高のマップの上に重ね、その相乗平均値が漁獲高をうまく説明できるのかどうかを見ています。

このような方法も良いかもしれませんが、何と何が関係しているか発見するためには多くの変数データというものを一度に表示して関係がつきそうなところだけをひっぱり出してきて表現するという方法があるのではないかと思います。このときに役立つのが融合可視化だと思うのですね。この方法はタクシー待ちの分布の予測など社会現象の予測にも活かせます。複数のデータの可視化結果を並べて見るより、重ねてみる方が便利なときもあると思っています。これから融合可視化は多くの適用分野を見つけ出して行くのではないかと思っています。

融合可視化は、人が何らかの仮説を立てることを効果的にサポートするということでしょうか。

まさに次にお話しようと思っていたことなのです。大学では、科学的方法を使って問題解決をやってください、という授業をよくやっているんですが、そのときに科学的方法では、仮説検証ということをきちっとやりぬくという基本を教えています。

先ほどの話では、説明したい変数が漁獲高で、これが何から構成されているか仮説を立てます。この仮説構築のフェーズで、つまり問題解決の初期フェーズで(可視化が)大変重要な役割を果たします。つづいて、本当に紐付けがされるのか統計的な処理が出てくると思いますが、これは仮説検証のフェーズですね。そこではデータマイニングやデータアナリティックということで、可視化がなくても統計的な形で検定が行われるわけです。だめだったらまた戻り、どんな変数が必要なのか探る、その局面で融合可視化は大変利いてくると思っています。ですから、上流過程でどんどん活用されるのが良いかと思います。

先ほどの漁獲高の話ですが、魚はマグロですか?

別に秘密ではありませんが(笑) 魚種毎に漁獲高モデルがあるのですが、私が関係させていただいているのはアカイカです。もちろん、マグロもありますし、魚ではないんですが鯨もあります。生物がどんな環境を好むかという話なので、人間でもありえます。人間であれば、どんな環境であれば最も仕事の効率が高いのかなどのテーマがあると思います。その場合、仕事のパフォーマンスが漁獲高に当たりますね。

これまでは、水温や海流とか、ひとつひとつの要素との関係を研究されている場合が多かったのでしょうか。

はい、しかし、それは致し方ないことかと思います。しかし、そのやり方に限界が見えてきたのも事実だと思います。もっといろいろな要素の組み合わせを見ていかなくはならないときに、有効な可視化が使われてなかったのではないかと思うわけです。可視化を利用せず、頭の中だけで変数の分布を思い描くだけで発見は出てきません。やはり(視覚的に)融合させてキラリと光る何かというものを探す、こんなところがひとつ重要なポイントではないでしょうか。

機械学習などの手法もありますが、まだ人間の直感が勝っている分野も多くあるので、融合可視化などの技術を組み合わせて活かして行こうということですね。

どっちだけが必要ということはありません。うまく組み合わせるということだと思います。データアナリティックとビジュアリゼーションを合わせて、ビジュアルアナリティックというフィールドも出てきておりますので、こういうところで融合可視化ということをうまく活用できればなと思っています。

後編

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