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特集:医用工学の世界

特集に寄せて

執行役員 CTO 石塚 真一


医用工学=英知の結集

近年、「医用工学」或いは、「医工連携」が活性化し、誠に喜ばしい限りです。学問の世界を敢えて分類するのであれば、医学は自然科学系、或いは理学に属するでしょう。それに対して工学は実学であり人工物の創出を目的としています。同じ理系とされながらも両者はかなり異なる道を歩み、アカデミックの世界では、どちらかと言えば交わることが少なかったのではないかと思います。国立大学の学部編成を見ても両者は独立している場合が多く、結果的には多くの場合、両者の交流が積極的にはなされてこなかったのが実情と思われるのです。

しかし、本来は、理学も工学も人間が自然に持つ知的好奇心を源流としているのではないでしょうか。生物の誕生は?宇宙はどこまで広いのだろう?なぜ、テレビは写るのか?飛行機の飛ぶ原理は?理系に進んだ多くの人間(多分全員)が共通して持っていたろう「なぜ?」の感覚。

高度に複雑化した科学技術を推し進めるため、学問を細分化するあまり必然的に理学と工学が離れてしまった感がある中で、医用工学の必然的誕生により、再び両者が手を結んで本来の知的好奇心を鼓舞することは、学問の大きな進化に繋がると信じます。更に、医用工学では、法律・社会性・倫理面等、今までの理系では影に隠れていた存在を強く意識する必要がありますので、まさに人間の“英知の結集”と言えるでしょう。

利用から融合へ:進化する医用工学

「医用工学」という言葉を聞いて、多くの人が最初にまず思い浮かべるのは、CTやMRIに代表される画像診断装置ではないでしょうか。デビュー当時は大変高価で、限られた施設にしかありませんでしたが、今では健康診断でもすっかりお馴染みになりました。そのCTも、始めは単なる輪切り画像であったのが、今では3Dで見ることもできるまでに発展しています。しかし、これは画像処理技術を医学に応用したという意味で、工学の利用の域を出ません。

医用工学と聞いて、「手術ロボット」と答える人は、かなり科学技術好きな方かも知れません。ロボットと言っても機械が勝手に手術するのではなく、人間が遠隔操作しているわけですが、これにより、人間の手の届かないところや、人間の手の精度を遙かに超えた手術ができ、しかも患者への負担が少ない低侵襲手術を実現したことは大きな発展と言えるでしょう。これは工学の利用から、より積極的に活用している例と考えられます。

より融合した姿へ

人工関節が登場してから久しく経ちますが、まだ完全な置き換えはできず、10年程で交換が必要な場合もあるようです。また、生物の関節の摩擦は濡れた氷同士よりもさらに滑らかだそうで、これは機械工学的には極めて驚異的です。これがもしエンジンで実現できたら燃費が格段に向上し、さぞかしエコロジーにも貢献するだろうなどと考えたりもします。その意味でも、まだまだ不完全ではありますが、工学は着実に医学に貢献していると言えるでしょう。

この他にも、人工心臓・人工肛門・視力を代替するシステム等々、生体機能を代替したり、補完したりするための研究も行われ一部実用化(臨床試験含む)されており、社会的にも大きな期待が寄せられています。これらはまさしく、医学と工学の融合と言えるでしょう。

再生医療は、さほど遠くない将来、iPS(人工多能性幹細胞)に置き換わってしまうかも知れませんが、当面、工学の果たす役割も大きそうです。

2010年に私たちサイバネットは、新たに医療工学分野へ参入しました。僅かな力ではございますが、少しでも社会貢献できるよう努めたいと思います。本特集が皆様の医用工学への関心を喚起できれば嬉しく思うとともに、第一線の方々の協力によりそれができるのではないかと自負しております。楽しんでページをめくってください。

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