お問い合わせ

「マルチトラッカー」で実現する高度なAR体験を提供しよう

Wikitude

Wikitude SDK 9 Expert Editionリリース

2020年3月末に、「Wikitude SDK 9.0」がリリースされました。そして5月下旬には機能改善が加えられ、SDK9.1へのアップデートが行われています。Wikitude SDK 9のリリースにあたっては、新たにExpert Editionというプランが追加。このExpert EditionはEnterpriseライセンスで利用可能です。

Expert Editionに追加された新機能

WikitudeのExpert Editionで追加・強化された機能は、図1の通りです。これらの機能の中で特徴なポイントを見ていきましょう。

[図1] WikitudeSDK9のExpert Editionで追加された新機能
[図1] WikitudeSDK9のExpert Editionで追加された新機能

「Unity Editor内でのオブジェクトビジュアリゼーション」については、Expert Edition SDKとProfessional Editionにて、Unity開発環境で直接オブジェクトのターゲット点群を可視化できるようになりました。点群を可視化することで、オブジェクトトラッキングARを作成する際に「ターゲットとなるオブジェクト対して3Dコンテンツを使ってどのような表示・表現を行うか」などの開発プロセスを加速することが可能になります。

「シリンダートラッキング」はボトル、缶などのボトルなど筒状に貼った画像に対してトラッキングできる機能。元々ユーザーニーズにあったため、今回新機能として追加されました。

そして最も注目すべき機能として、「マルチトラッカー」という機能が追加されました。ここからは、このマルチトラッカーがもたらす“一歩進んだAR体験”に注目していきます。

複数のAR機能を組み合わせるニーズと課題

開発者の中には、ARアプリを開発する上で「複数のAR機能を組み合わせたい」と考えている方も多いと思います。例えば、以下のようなケースが考えられます。

例1

同じ空間内に配置された画像やオブジェクトに対するインタラクションと、空間の検知した平面に対するインタラクションをフレキシブルに対応させたい。

例2

1つのイベントエリア(空間)の中で、ある箇所では「イメージトラッキング」を実行できるようにし、別の箇所では「平面検知」を実行できるようにしたい。一方のAR機能が働いている間は、もう片方の機能は干渉しないようにしたい。

これらに対するアプローチとしては、以下のような選択肢があります。

例1のケースを見てみましょう。1つのライブラリに必要なAR機能がそろっていない場合は2つのARライブラリを使ってそれぞれでAR機能を補完し合う(図2の[パターン1])、1つのライブラリに必要なAR機能が両方ともある場合は、1つのARライブラリのロジック配下に実装上で2つのAR機能を内包して同時に動かすというやり方(図2の[パターン2])が考えられます。

[図2] 複数ARのアプローチの例 その1
[図2] 複数ARのアプローチの例 その1

一方で例2の場合、1つのライブラリに必要なAR機能がそろっていないなら2つのARライブラリを用意し、1つの箇所で1つのARライブラリ機能を使い都度切り替える(図3の[パターン3])、1つのライブラリに必要なAR機能が両方ともあるなら、1つARライブラリが実行されるロジック配下に実装上で2つの機能を入れ、箇所によってそれぞれの機能だけ動くようにする(もう一つの機能は止める)というやり方(図3の[パターン4])が考えられるでしょう。

[図3] 複数ARのアプローチの例 その2
[図3] 複数ARのアプローチの例 その2

複数のAR機能を入れる場合の課題

しかし、これらのようなやり方で複数のAR機能を使ったアプリを実際につくれるかというと、現実的には難しいと言えます。

まず複数のARライブラリを使って開発するというアプローチですが、通常はARライブラリごとに専用のカメラ(※)が用意されています。複数のARライブラリを入れるとカメラが干渉してしまうため、思ったような動作が実現できません(図4の[パターン1-1]、図4の[パターン3])。解決するには1つのARライブラリがもう1つのARライブラリを内包し、1つのカメラでまとめられるようプラグインを開発しなければなりませんが、実際にライブラリのカメラに関わる部分のソースコードが公開されるケースは稀で、ライブラリを内包させることはかなり困難でしょう(図4の[パターン1-2])。

※ここでいうカメラとは、ゲーム世界をキャプチャーして画面に表示する視点のことを指します。

[図4]複数ARを実装するときの課題 その1
[図4]複数ARを実装するときの課題 その1

次に、1つのARライブラリで利用したいAR機能がすべてあり、その複数のAR機能を一度に入れたいという場合も課題があります。例1のケースでは、それぞれのAR機能が干渉し合うリスクが発生します。機能の干渉はバグの原因になりますが、回避するには機能的にどれを優先するかなど、細かいロジックを個別実装しないといけません。細かいユースケースをすべて洗い出し、矛盾がないように実装していく必要がありますが、これはノウハウが必要な作業であり、しかもかなりの作業工数がかかります。(図5の[パターン2])

[図5]複数ARを実装するときの課題 その2
[図5]複数ARを実装するときの課題 その2

では、例2のケースはどうでしょうか。AR機能を無効にするというやり方ですが、例えば平面検知の場合、ここが平面だという情報がARセッションに蓄積されていきます。これを無効にすると、蓄積された情報まで削除してしまう恐れがあります。そうなると再度ARセッションを復帰させてもそれまでの平面を解釈した情報がないため、期待した挙動が実現されなくなってしまうでしょう(図6の[パターン4-1])。回避する方法として、機能を変えるたびにゲームシーンを遷移させるやり方がありますが、「画面を遷移させる」というUX的な制約が生まれるため、すべてのユースケースに適用できるわけではありません(図6の[パターン4-2])。

[図6]複数ARを実装するときの課題 その4
[図6]複数ARを実装するときの課題 その4

Wikitude SDK 9 Expert Editionで
複数ARの課題に対応した「マルチトラッカー」

Wikitudeの「マルチトラッカー」ならこれらの課題を解決し、スムーズに複数のAR機能を組み入れることが可能です。Wikitude SDKはARKit/ARCoreといった各OSベンダーがネイティブ機能として提供するARライブラリのカメラを映像の入力元として指定することができるため、お互いが干渉する事無く、すべての機能を共存させることができます。

当然、ARKit/ARCoreだけでなくWikitudeが本来持っているイメージトラッキングの機能とオブジェクトトラッキングの機能を同時に組み合わせることも可能です。

「マルチトラッカー」は1つの機能が動いている間も残りの機能が常にバックグラウンドで動いています。そのため、実装は表示ロジックのみに注力すればよく、実装ハードルを大きく下げてくれます。

[図6]

複数のAR体験の組み合わせで生まれる“一歩進んだAR体験”

複数のAR機能を組み合わせるということは、オブジェクト、イメージ、位置をトラッキングのターゲットにできるということ。それにより各ターゲット上に3Dモデルやボタン、ビデオ、アニメーションなどのARのオーバーレイを表示することが可能になり、ユーザーの入力とその複合的な相互作用で今まで以上に没入感のあるAR体験をつくったりすることができるでしょう。

アプリケーションのARエクスペリエンス設計により注力できる

下記に示す動画は、ラジコンCarrera®カーレースARデモです。現実空間にはラジコンとイメージトラッキング用の画像が用意してあります。オブジェクトトラッキングとイメージトラッキングの機能を使って仮想のコースと仮想のラジコン(ラジコンに重ねる)を表示させ、ラジコン操作を通してウェアラブル端末から複合ARを体験できるコンテンツです。

仮想のコースを配置するには絶対位置としての原点が必要なので、画像に対してイメージトラッキングを使い、それを原点マーカーとして表示させています。ラジコンはオブジェクトトラッキングによって、走る速度に応じてエフェクトをかけることが可能。さらには、仮想コースにある仮想の障害物にラジコンがぶつかると衝突判定によって障害物が飛んでいくなど、よりインタラクティブな体験ができるようになっています。

このようにアイディア次第で複数のAR機能の組み合わせとユーザーインプット(タッチ・音声・傾きなど)を組み合わせ、その相互作用によってユーザーにより没入感のある体験を提供できるようになります。つまり、実装に苦労することなく複数AR体験の実現できるようになるので、今までのような1つの機能、1つの入力で作り上げるAR体験ではなく、複数のAR機能や入力の掛け算によって高度なAR体験を設計できるようになるでしょう。複数のAR機能を組み合わせたコンテンツの実装が容易になることで、ARアプリをつくる際には「AR体験の実装」から「AR体験の設計」に注力する方向にシフトしていくでしょう。

自社の製品開発/サービスに没入感あるインタラクティブな機能を付加して提供

このような“一歩進んだAR体験”ができるようになったことは、自社の製品やコンテンツにARを活用したインタラクティブな機能を付加して新たな価値を提供することが可能になります。

例えば、以下のようなことが可能になるでしょう。

アイディア次第では、自社の製品と複数ARの体験を組み合わせることで従来の製品をブレイクスルーし、ユーザーに「今までない体験」を提供できる新サービスをつくり上げることができるかもしれません。

Wikitude SDK 9 Expert Editionは45日間のトライアル期間が提供されています。一度トライアルに申し込み、PoCなどを作成して「マルチトラッカー」の機能とその可能性を試してみてはいかがでしょうか?

※記載されている会社名および製品名は、各社の商標および登録商標です。

wikitude無料ダウンロード、体験版
選ばれる理由 ブログで情報公開中

お気軽にお問い合わせください

AR/VRのご相談やお見積り依頼などお気軽にご連絡ください。