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経済産業省の報告書からみた
今後の仮想空間関連事業とは

技術の発達とともに、AR・VRなどのXR市場は急速に普及・拡大が続いています。従来は、主にオンラインゲームなどのエンターテインメント分野で活用されてきましたが、将来的には幅広いビジネスシーンでの利用が期待されています。

本記事では、経済産業省が公開している報告書をもとに、仮想空間ビジネスの現状と課題、今後の仮想空間関連事業の展望について解説しています。仮想空間・メタバース事業への理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

現状における仮想空間内のビジネス活用とメタバース

報告書では、現状の仮想空間内のビジネス活用について、ニつのパターンとメタバースを挙げています。それぞれの定義を整理し、仮想空間事業のプラン例を解説します。

仮想空間でのコンテンツ提供

事業者は、仮想空間を自社で開発・オンライン上に展開し、ユーザーへコンテンツ提供を行います。報告書では、一つの仮想空間に対して一つのサービスと定義しています。VR技術を使ったオンラインゲームなどが当てはまります。

プラットフォーマーとして仮想空間を提供する

仮想空間の開発・運営者と、サービス提供を行う事業者がそれぞれ別に存在します。プラットフォーム事業者の登場により、開発ノウハウを持たない企業も新規参入しやすくなりました。例としては、オンライン旅行、バーチャルイベントなどが挙げられます。

メタバース

メタバースは、上記の活用例をさらに発展させたもので、今後の仮想空間ビジネスの主軸になりうると注目を集めています。一つの仮想空間の中で、多様なコンテンツが提供され、人々はバーチャルでショッピングやゲームを楽しむことも、教育や医療を受けることもできます。オンライン上に存在するもう一つの世界といっても良いでしょう。

メタバースについてはコチラの記事で詳細を解説しておりますので、チェックしてみてください。

関連記事>>>メタバースとは?AR・VRとの違いや製造業での活用方法

仮想空間ビジネス拡大に向けた課題

仮想空間ビジネスは新たな市場であり、現状は黎明期と言って差し支えないでしょう。今後の市場拡大・普及を図るには、各分野における課題をクリアしていく必要があります。

政治的要因

仮想空間ビジネスを展開していく上での政治的な課題は、法整備・ガイドラインの策定です。一つのデジタルコンテンツとしての枠を超え、仮想空間の革新的な活用方法が見いだされていく中で、従来の法律をそのまま適用させることには限界があります。
例えば、仮想空間内のバーチャルオブジェクトに対して、所有権を認めることは難しいとされています。一方で、現実世界と同じレベルの権利を与え、保護することも厳しいのが現状です。
また、現実世界に存在する建物や美術品、キャラクターなどをバーチャル空間に再現する場合、著作権侵害になるか否か、といった線引きもやや曖昧です。いわゆるニセモノが勝手に作られてしまった、などのトラブルも、現状ではプラットフォーム側の規約や対応に頼らざるを得ません。新規参入を活発化させるためには、事業者・利用者の責任とリスク回避の方法を明確化することが求められるでしょう。

経済的要因

経済的要因としては、主に二つの課題があります。一つは、仮想空間の体験に欠かせない、「VRヘッドマウントディスプレイ」などのデバイス価格です。一般ユーザー向けの製品は低価格化が進んでいますが、標準的な製品は数万円、ものによっては十数万円以上します。多くの消費者が手に取りやすい価格とまでは言えないのが実情です。
デバイス市場・仮想空間ビジネスのさらなる拡大のため、スマートグラスなどの次世代ガジェットの普及が期待されます。
もう一つは、マネタイズモデルの確立です。コンテンツ内容によりコストは大きく変わりますが、小規模なもので約100万円、ボリュームや機能によっては1,000万円以上かかるとも言われています。また、仮想空間コンテンツが広く浸透しているとは言えない中、ユーザー獲得のために無償でサービスを提供する事業者も多く見られます。事業を収益化し、運用していけるシステムの構築が必要でしょう。

社会的要因

社会的な課題として挙げられるのが、人材の確保です。従来はゲーム分野に求められていた技術者が、市場拡大に伴って、幅広い業種で求められるようになりました。しかし、いわゆるxR領域に対応したスキルを持つエンジニアは十分ではありません。また、企画立案を担える上流の人材も不足しています。 加えて、xR領域のコンテンツのバリエーションを増やすことも課題の一つです。わざわざデバイスを用意して楽しみたい、と感じるほどの魅力的なコンテンツは少ないのが実情です。また、アプリストアの審査基準が厳しいために、公開に至らないコンテンツがあるのも事実です。

技術的要因

市場拡大のためには、技術的な工夫も重要です。仮想空間を体験するには、3DCG をなめらかに表現できるハイスペックなパソコン・スマートフォンが必要です。しかし、一般的なスマートフォンではスペックが低く、仮想空間ならではの表現を抑えざるを得ないのが現状です。仮想空間のポテンシャルを際限なく発揮でき、かつ多くの人が楽しめるような技術が求められるでしょう。併せて、より使いやすくて疲れにくい、小型デバイスの普及も課題です。

「アーキテクチャ」「市場」「規範」「法」の観点での対応策

今後の仮想空間ビジネスで発生しうるリスクに対し、どのような対策を講じればよいのでしょうか。リスク回避のため、事業者が検討しておきたい対応策を、四つの観点からご紹介します。

アーキテクチャ

システムそのものの物理的な環境、あるいは技術に制約を加えて規制する方法です。例として、ブロックチェーン技術を活用した仮想空間コンテンツの保護、デジタル資産の不正取引防止などのシステムが挙げられます。 メリットは、強制力があり、直接的な規制が行える点と、イノベーションの促進が期待できる点です。一方で、技術開発を行う必要があり、各事業者にとっては負担が大きくなります。また、現状の技術で実現が難しいものは対応できません。

市場

市場原理を活用した規制方法です。著作権違反が認められたコンテンツに対する対応策の事例をご紹介します。海外のあるライブ配信プラットフォームでは、著作者に対して「当該コンテンツから広告収入を獲得」など、三つの選択肢が与えられています。 このように、インセンティブなどのメリットがある場合、スムーズな浸透が期待できます。しかし、意図しない方向に機能してしまう可能性や、初期の市場では適用しづらいデメリットもあります。

規範

自主的なガイドライン、ルールの策定により規制を行う方法です。仮想空間上のコミュニティにおける誹謗中傷や差別的発言の禁止、不適切行為の禁止などを明文化し、ユーザーはこれらを遵守して利用します。 事業者側の負担が少ないことは長所ですが、ユーザーに委ねる部分が大きいため、浸透に時間がかかる可能性もあります。

法律や条例などを適用し、規制する方法です。最大のメリットは、法的な強制力を持っている点です。ただし、問題が提起されてから法律の制定までには時間がかかります。また、過剰な規制はイノベーションを阻害することに繋がりかねません。過不足なく、適切なレベルでの規制が求められます。

仮想空間市場の今後の展望

需要面・供給面それぞれの観点から課題を整理しておきましょう。併せて、今後の市場拡大の可能性についても解説します。

需要面の課題

現状の仮想空間コンテンツは、残念ながら一般ユーザーに広く認知されているとは言えません。VRデバイスの購入障壁は未だ高く、VRの世界を十分に表現できる端末は限られています。また、ユーザーの需要を喚起できるようなキラーコンテンツがあるとは言えず、ユーザー数の増加は難しい状態でしょう。

供給面の課題

仮想空間を提供する事業者側の課題は、技術者不足です。新しい領域のビジネスであることから、上流から下流まで広く人材が不足しています。育成によって技術者を確保する場合にも、2年以上かかるとされています。他業種からの抜擢、若手の育成という二軸で人材確保を検討していく必要があります。

仮想空間市場の拡大・普及のカギ

現状では、需要面・供給面の課題を解決した上での市場拡大には、何らかのブレイクスルーが不可欠です。しかし、ブレイクスルーが発生しなかった場合でも、仮想空間市場の拡大は十分見込めます。
鍵となるのは、スマートグラスなどの身近なAR・VRデバイスです。ライフスタイルに寄り添ったサービスは、一般ユーザーにとってハードルが低く、デバイスの普及も難しくないでしょう。この流れから、VRの浸透が期待できます。

仮想空間ビジネスは可能性を秘めた新領域

仮想空間ビジネスの現状と課題について、理解を深めていただけたのではないでしょうか。仮想空間ビジネスは、今後さらなる発展が見込まれる新領域です。一方で、仮想空間に特化した法整備やルール策定は途上で、普及には課題も残ります。
サイバネットシステムではAR・VRを活用し、幅広い業界でお客様の課題に沿ったソリューションを開発することが可能です。AR・VRを活用したソリューションについてのご相談やお見積り依頼についてお気軽にご相談ください。

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