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構造解析

木質構造物のFEM解析(第2回)

~ FEM解析による木質構造物の性能評価~

2021年1月

第1回は、鋼板挿入型集成材桁ハイブリッド木橋の開発のエピソードを紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか。その後の私は、と言いますと、その成果を以って木製治山ダムの開発ミッションの研究チームの一員に抜擢されるに至り、ちゃっかり出世していたりしたのでした。今考えても・・・、なんですが、秋田県のFEM解析への理解は大きく、また、ものすごく信用され、期待されていたんだなぁ、と思えます。今の私なら逆にプレッシャーになるかもしれませんが、当時は若かったですし、木橋の成功も相まって、怖いもの知らずで何でもチャレンジできていた時期でもあります。今回はその当時のエピソードをご紹介したいと思います。

木製治山ダムと一言で言っても、いくつか種類があるのですが、秋田の木製ダムは特にユニークで、大径木の丸太を250mm×300mmの断面になるように外側を太鼓落としした角材を並べ、高さ方向に直交させて配置した木材どうしを千鳥状にラグスクリューだけで接合したオールウッドタイプのダムとなります(図1、図2)。後に秋田スタンダードダムと呼ばれ、熊本県などに技術提供されるまでに至ったダムですが、研究当初はうまくいってなかったようです。と言いますのも、私が研究グループに参画したのは、研究開発が始まってから9年目のことだったのです。1990年代に実大の部分モデルの破壊試験が行われたのですが、耐荷力は安全率が6になるほど合格点だったのですが、破壊形状が理論通りにならなかったそうです。安全率が1.7の鋼材に慣れ親しんだ私からすれば、安全率が6もあるなら、破壊形状が理論通りにならなくても良いのでは、と思えてしまうのですが、みなさんご存知の通り、木材は下限値的な考え方が浸透しているので、1つでも高い値があると逆に低いこともあり得る、に繋がるので、安全率6が逆にネックに成りかねないのでした。そこで私に下ったミッションは、破壊が理論通りに生じなかった理由をFEM解析で明らかにし、理論通りではないが、問題にならない挙動であることを証明し、オールウッドタイプ木製治山ダムを実用化することだったのです。


図1 オールウッドタイプ木製治山ダム

このような背景で開始された研究ですが、木橋の開発の時とは違って、FEMを開発の中心に持ってくる、ということが秋田県の意向もあって最初から決まっており、ラグスクリューによる接合の部材試験をFEMのモデル化のために行い、モデル化がうまくいった後、実大試験モデルのFEM解析を行う、という手順が最初から決まっていました。当時としてはかなり先進的なFEMの活用法だったと思います。


図2 施工の様子

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