解析事例
ダイナミックスピーカの連成解析
こんな方におすすめ
- スピーカユニットの開発・設計をされている方、シミュレーションによる事前検討により試作回数や手戻りを削減したい方
- ボイスコイルの磁束密度や電磁力(ローレンツ力)、振動板の振動や放射音を可視化し、効率的な構成を検討したい方
- 磁場と構造、音響の連成解析を簡単に実施したい方
背景

図1:ダイナミックスピーカ
Ansys Workbenchでは、各解析プロセス間のデータ連携を容易に実施できます。例えば電磁場解析で得られた電磁力を構造解析へ転送する操作や、構造解析で得られた振動板の振動速度を音響解析へ転送する操作は、各システムをドラッグ&ドロップで接続するだけで実施できます(図2)。

図2:Ansys Workbenchによる連成解析フロー
イヤホンモジュールの解析例
電磁場解析
解析で得られた結果を図5-1、図5-2に示します。磁束密度の分布結果(図5-1)から、永久磁石よりヨーク、磁気ギャップ、ポールピースへの磁束の流れを評価することができます。またボイスコイルに作用するローレンツ力を評価することが可能です。
なお本解析は過渡磁場解析であるため、磁束密度やローレンツ力はまず時間変化データとして得られますが、後続の構造解析では周波数応答解析を使用することから、構造解析には、計算されたローレンツ力を離散フーリエ変換(DFT)した周波数領域データが引き渡されます。そのため図5-2に示すローレンツ力の分布はDFT後の400Hz成分の結果を示しています。

図3:電磁場解析モデル(2次元軸対称)

図4:ボイスコイルに設定した電流(400Hzで11周期まで計算を実施)

図5-1:解析結果:磁束密度分布(t=0.025[s])

図5-2:解析結果:ローレンツ力分布(DFT処理後で400Hz、位相90deg)
構造解析
図6に構造解析モデルを示します。電磁場解析でモデル化した部品に加え、構造振動に大きく影響を与える振動板やフレームなどをモデル化しています。なお、ボイスコイルの偏心を抑制するスパイダーはモデル化せず、ボイスコイル側面に対して軸方向以外の変形を拘束する境界条件にて表現しています。また、ヨークの底面が固定されています。
加振条件として、図7に電磁場解析から展開・マッピングされた電磁力(400Hz成分の物体力密度)を示します。図5-2のローレンツ力分布と良好に一致しており、電磁場解析結果が適切に構造解析モデルへ転送されていることが確認できます。
図8に構造解析結果として得られた振動板の振動速度振幅(400Hz)を示します。

図6:構造解析モデル(断面表示)

図7:構造解析にマッピングされた物体力密度(400Hz、虚部)

図8:構造解析で得られた速度分布(400Hz、実部)
音響解析
図2に示したように、Ansys Workbench Mechanicalの構造解析(周波数応答)システムと音響解析(周波数応答音響解析)システムを接続することで、構造解析で得られた振動速度を音響解析における振動速度音源として転送できます。図10に、構造解析からマッピングされた振動板の振動速度を示しますが、図8に示した構造解析結果と良好に一致しており、構造解析結果が適切に音響解析モデルへ転送されていることが確認できます。音響解析によって得られた音圧レベル分布を、図11に示します。

図9:Ansysによる音響解析モデル(メッシュ)

図10:音響解析にマッピングされた振動速度(400Hz、実部)

図11:Ansysの音響解析で得られた音圧レベル結果(400Hz)
なお、音響解析手法として境界要素法(BEM)を使用した音響解析ソフトウェア「WAON」を用いて全く同様の解析を実施することも可能です。WAONのWorkbenchインターフェースを利用することで、図12に示すようにAnsysと同様の解析フローを構築することができます。BEMでは今回のような自由音場解析において、空気領域外周部への吸収要素の配置などの境界条件設定が不要であるため、モデル化を容易に行うことができます。WAONを用いて同様の解析を実施した際の音圧レベル分布を図13に示しますが、Ansysの音響解析結果と比較してほぼ同等の音圧レベルが得られていることが確認できます。
WAONの詳細については、製品ページ(https://www.cybernet.co.jp/waon/)をご参照ください。


図13:WAONの音響解析で得られた音圧レベル結果(400Hz)
参考文献
本解析例はスピーカの通常駆動時の評価のため、ボイスコイルに明示的に電流を与えた解析を実施していますが、同様の解析手法にて例えばスピーカの非駆動時におけるプリント基板の配線パターンにより生じる誘導起電力に起因したノイズを評価するような解析も可能です。詳細は以下の参考文献をご参照下さい。
Multiphysics Analysis of Induced Acoustic Noise in an Earbud Speaker
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