Ansys Zemax OpticStudio 2025 R1
2025年1月リリース
Ansys Zemax OpticStudio 2025 R1では以下のような新機能の追加や機能改良が施されました。
- メカニカルピボットポイント(MPVT)オペランド (Premium および Enterpriseエディション)
- FICL オペランドの改良 (すべてのエディション)
- CODE Vコンバータの強化 (すべてのエディション)
- 特定の光線のCADへのエクスポート (すべてのエディション)
- レイフットプリントがアパチャーをサポート (すべてのエディション)
- ダークテーマ (すべてのエディション)
- 中国語ヘルプファイル (すべてのエディション)
- OpticStudio ヘルプファイルの Ansys ヘルプへの統合 (すべてのエディション)
- Creo 10のサポート(すべてのエディション)
- STAR GRINの応力複屈折解析の向上 (Enterprise エディションのみ)
- METALENS DLLの改善 (Premium および Enterpriseエディション)
- お知らせ
- ZOSファイルフォーマットの廃止 (すべてのエディション)
- スタンドアロンインストーラからの移行 (すべてのエディション)
メカニカルピボットポイント(MPVT)オペランド (Premium および Enterpriseエディション)
すべてのエレメントの位置公差に対してメカニカルピボットポイントタイプを定義する新しい公差オペランドが追加されました。MPVTオペランドを使用して、システム全体にそれぞれのエレメントで異なるメカニカルピボットポイントを定義できます。さらに、公差データエディタにボタンが追加され、公差設定を行うことなくモンテカルロファイルを生成できるようになりました。メカニカルピボットポイントはレイアウト図に表示され、システム内での位置を確認することができます。これらは、位置公差を保持する座標ブレークとしてレンズデータエディタ上にも表示されます。

FICLオペランドの改良 (すべてのエディション)
評価関数オペランド FICLは、シングルモード結合解析のユーザーインターフェイスで利用可能なすべての設定をサポートするようになりました。この新機能を利用するには、まずシングルモード結合解析で設定を定義し、設定ボックスの保存ボタンをクリックして設定(CFG)ファイルを作成(または更新)します。評価関数で、FICLオペランドのDataパラメータを(0-5の代わりに)6-11の間の値に設定することで、CFGファイルの設定を適用することができます。詳細については、ヘルプファイルを参照してください。

CODE Vコンバータの強化 (すべてのエディション)
CODE Vコンバータがアップグレードされて、CODE Vの.SEQファイルをOpticStudioの.ZMXファイルへの変換がシームレスで信頼性が高い機能となりました。ワンクリックで、変換中のレンズファイルの状態を確認でき、どのようなブラウザでも閲覧可能な詳細なレンズデータエディタの行ごとの.HTMLファイルによる変換レポートが作成されます。マテリアルの管理が強化され、より複雑な面タイプがサポートされるようになり、安定性が向上したことで、これまで以上にスムーズな変換プロセスとなりました。加えて、このツールはプログラムを使った変換や大量な数の変換に対応するためのファイルバッチモードも搭載されています。
今回のリリースでは、精度と信頼性をさらに高めるために、いくつかの問題も解決されました。この修正には、ZRNコマンド、QCNパラメータ、CIRアパーチャタイプ、ティルトした物体面、モデルガラス、バイナリ2面のパラメータの処理の改善などがあります。長い文字列をコメントに含んでいたり、16次以上の非球面を含む場合や、切り捨てられていたSEQ文字列が正しく処理されるようになり、「文字列が長すぎます」などのエラーや不完全な変換を回避できるようになりました。

特定の光線のCADへのエクスポート (すべてのエディション)
[CADファイルのエクスポート] (Export CAD File)ツールの新機能により、フィルタリングされた光線をエクスポートして、光線パスの外側にある機械部品をCAD上で適切に位置合わせすることができます。シーケンシャルモードでは、各視野各波長の主光線をエクスポートすることができ、ノンシーケンシャルモードでは、NSC 3Dレイアウト図にあるフィルタリングと同じオプションを使用して、フィルタリングされた光線セットをエクスポートすることができます。エクスポートされた光線ファイルはCADにインポートされ、CADの「メイト(合致)」操作中にクリックしたり参照したりすることができます。

レイフットプリントがアパチャーをサポート (すべてのエディション)
Ansys Zemax OpticStudio 2024 R2.02で導入された [レイフットプリントを エクスポート] (Export Ray Footprint) 機能で、メカニカルアパチャーを含むファイルがサポートされるようになりました。以前は、光線がケラレている場合、レイフットプリントのエクスポートでファイルが生成されませんでした。この新しいサポートにより、光線がアパチャーによってケラレていても、CADファイルにエクスポートされるようになりました。
ダークテーマ (すべてのエディション)
Zemaxクラシックテーマとダークテーマから選択して、インターフェイスをカスタマイズできるようになりました。ダークテーマは低照度環境用に最適化されており、長時間の使用による目の疲れや疲労を軽減します。さらに、ダークテーマを使用することで、ポータブルデバイスのバッテリー寿命の向上にも貢献します。
テーマの切り替えは、OpticStudio環境設定の全般タブから簡単に行えます。

中国語ヘルプファイル (すべてのエディション)
ヘルプファイルは簡体字中国語と繁体字中国語の両方で利用できるようになり、さまざまな地域のユーザーがOpticStudioにアクセスして理解することが容易になりました。この機能強化により、ユーザーは好みの言語でより包括的でグローバルに、効率的な作業をすることができます。
OpticStudio ヘルプファイルの Ansysヘルプへの統合 (すべてのエディション)
製品内のツールまたは解析でヘルプ「? 」をクリックすると、Ansys Zemax OpticStudioオンラインヘルプが開くようになりました。ブラウザは、ヘルプが選択されたツールに対応するセクションを開きます。さらに、このオンラインヘルプは、すべてのサポート言語(英語、日本語、簡体字中国語、繁体字中国語)で、どのオンラインブラウザからでもアクセスできます。ヘルプファイルのCHMファイルは、インストーラのファイルサイズを最小化するため、Ansys Zemax OpticStudioではダウンロードされなくなりました。PDFヘルプファイルはインストーラに含まれ、OpticStudio環境設定の中にトグルスイッチがあり、オフライン作業中の場合は、OpticStudioからPDFファイルを開くことができます。
Creo 10のサポート(すべてのエディション)
OpticStudioのダイナミックリンクツールがアップデートされ、従来のCreoバージョン4、5、6、7、8、9 に加え、Creo 10にも対応しました。この機能強化により、最新のCreoモデルをインポートして作業できるようになり、CADジオメトリをオプトメカ設計ワークフローにシームレスに統合できるようになります。
STAR GRINの応力複屈折解析の向上 (Enterprise エディションのみ)
2024 R2.02からSTARモジュールで応力複屈折に対応するようになりました。新バージョンではSTARツールでのストレスGRINパフォーマンスが改善され、STOP分析の計算速度が向上しました。すべてのSTARシステムで、GRINレイトレーシングを必要とする計算がより効率的になりました。設定として有効にするのではなく、ストレスデータセットをロードし、OpticStudioで解析を使用するだけでスピードアップを実感できます。
下のグラフは、8つの視野点、9波長、3つの応力複屈折マルチフィジックスデータセットを持つVR用パンケーキレンズの例での計算時間を示しています。計算は軽負荷用のノートパソコンで行いました。

METALENS DLLの改善 (Premium および Enterpriseエディション)
新しい計算アルゴリズム、Windowed Fourier Transform(WFT)がmetalens.dllプラグインに追加されました。これまで使用されていた手法はGradient法と呼ばれ、新しい手法はWFT法と呼ばれます。
Gradient法は、回折光線の方向が位相勾配のみに依存すると暗黙的に仮定しており、より広い範囲(波長の100倍以上)からのメタ原子の寄与を無視しています。この単純化は、入射光線がメタレンズの法線と合わない場合や、その波長がメタレンズの設計波長と異なる場合に誤差をもたらします。この誤差は、入射角や波長の違いが大きくなるにつれて大きくなります。
WFT法は、メタ原子の範囲内での近接場応答を考慮することで、この制限を克服しています。角度空間におけるパワー分布を解析し、出力光線の方向と電場を計算します。この新しい方法は、メタレンズが複数の波長や大きな入射角を持つシステムで使用される場合、回折光線のより正確なデータを提供します。しかし、入射角が低~中程度の単一波長システムでは、Gradient法の方が依然として高速なアルゴリズムであるため、有用であることに変わりはありません。重要なことは、Gradient法において垂直入射ではない光線によってもたらされる誤差が許容できなくなる特定の閾値がないことに注意することです。推奨されるアプローチは、システムの初期セットアップにGradient法を使用し、入射角が30度を超えた時点でWFT法に切り替えて精度を確認することです。
アルゴリズムを切り替えるための新しいパラメータ「Method」がモデルに追加されました。Method=0の場合、Gradient法が使用されます。Method=1, 2, 3の場合、WFT法が次の3つの異なるトレードオフモードで使用されます: Fast、Standard、Accurateです。Fastモードでは、結果をプレビューすることができます。Standardモードは最も頻繁に使用され、ほとんどの場合において十分だと考えられています。Accurateモードは、Standardモードの結果が不正確であり、さらなる検証が必要であると考えられる場合にのみ使用することをお勧めします。
お知らせ : ZOSファイルフォーマットの廃止 (すべてのエディション)
ZOSファイルフォーマットは廃止されました。
2025 R1バージョンでは、.ZOSファイルを開くと.ZMXファイルに保存しなおしてから起動します。
スタンドアロンインストーラからの移行 (すべてのエディション)
2025 R1リリースでは、重要な変更を行います: Ansys Zemax OpticStudioは、download.ansys.comでスタンドアロンインストーラとして提供されなくなります。今後、OpticStudioはAnsys自動インストーラの一部としてのみ提供されます。この移行により、インストールプロセスを合理化し、OpticStudioをAnsysの統一されたアプローチに合わせることで、ユーザーがAnsysのソフトウェアをより簡単かつ効率的にインストールおよびアップデートできるようになります。
現在スタンドアロンインストーラを使用している場合は、Ansys Automated Installerに切り替えることをお勧めします。自動インストーラの使用方法については、インストールドキュメントを参照してください。
引き続き、インストーラの使い勝手を改善していく予定ですので、ご理解をお願いいたします。