CYBERNET

ソリューション

3D 設計

光学解析

クリーンルームの設計/運用の課題をCAEで解決

空間中の微小粒子や微生物の存在を抑えた清浄な環境を実現するための設計ソリューション

クリーンルームの設計/運用の課題をCAEで解決の概要

クリーンルームは空間中の微小粒子や微生物の存在を抑えた清浄な環境を提供するための特殊な施設です。クリーンルームは、半導体製造や光学機器製造、製薬業界、自動車メーカー、および特定の科学研究で使われています。

この記事では、クリーンルームの基本的な概念から、その設計やメンテナンスに関する重要なポイント、そして将来の展望について解説します。また、クリーンルームの設計や運用の課題を解決できる、CAEツールについても紹介します。

クリーンルームとは?

クリーンルームイメージ

クリーンルームは、高い水準で清浄な環境を維持するために設計された部屋や施設です。おもな目的は、微粒子や微生物の浮遊や製品への付着を少なくして、製品への影響を可能な限り抑えることです。

クリーンルームは製造業の開発現場や工場に設置されて、精密な製品を製造する環境として使われます。また、研究開発の分野で、実験や評価をする環境としても使われています。

種類と規格

クリーンルームの清浄度を表す指標としてクラスがあります。クラスは、単位体積当たりの粒子の数で定義されます。主な規格にはISO規格があり、過去にはFED STD 209E規格(米国連邦規格)がありました。

クラスはクリーンルーム内の粒子数や微生物数などを基準に定義しており、クラスに基づいてクリーンルームの設計と運用が行われます。

■ ISO規格
ISO規格のクラスは、浮遊微小粒子を対象としており、1立方メートルあたりに存在する0.1~5μmの浮遊微小粒子の数を基に、クラス1からクラス9まであります。クラス1は0.1μmの粒子が10個以下、クラス5なら0.1μmの粒子が10000以下などとなっています。

■ FED STD 209E規格
空気1立方フィートあたりに存在する0.5μm以上の粒子の数で定義されます。クラス1からクラス100000まで6段階(1、10、100、1000、10000、100000)あり、クラス1は粒子の数が1個、クラス100は粒子の数が100以下というように表されています。
多くのクリーンルームがFEDのクラスを基準としています。
薬品や食品工場ではクラス100~クラス100000、半導体工場ではクラス1~クラス100というように表現されます。

クリーンルームの重要性とは?

製造業および科学研究の観点から見たクリーンルームの重要性について解説します。

製造業における重要性

クリーンルームは、製造業において非常に重要な役割を果たしています。例えば、半導体製造プロセスでは微細な回路を構築するために、わずかな異物の混入も発生しないように管理しなければなりません。微小粒子の存在は製品の品質や性能に影響を及ぼす恐れがあります。

また、製薬業界でも薬品への微生物の混入を防ぐためにはクリーンルームが欠かせません。医薬品を製造するためには国際標準や国内の規定に沿った環境である必要があります。

この他、化成品の製造現場でもクリーンルームが重要です。例えばプラスチックフィルムやゴム材料などは、異物が混入すると、混入箇所に穴が開いたり、光が透過しなかったり、クラックの原因となったりします。光学製品を製造する現場では、異物混入によってレーザーが遮られてしまい機能を果たせなくなってしまう恐れもあります。

このように、クリーンルームはさまざまな製造業にとって、なくてはならない設備なのです。

科学研究における重要性

科学研究においてもクリーンルームは重要です。特に素粒子物理学や生体医学、電子科学、光学などの分野では、高精度な実験結果を得るためにクリーンルームが必要です。粒子が混入することによる微小な変動や干渉を排除することで、正確なデータを収集できます。

クリーンルームの設計とメンテナンス

クリーンルームの清浄度を維持するためには適切な設計と、定期的なメンテナンスが重要です。

適切な設計原則

クリーンルームの設計では、はじめに動線およびレイアウトの設計を行います。次にエアフローの管理、フィルタリングシステムの配置、汚染源や熱源の明確化とゾーニングを行います。各ゾーンにおける清浄度を決定し必要な設備や運転条件などを決定します。

そして具体的な設備の設計に進みます。清浄度を達成できる空調方式の選定や、ダクトや冷媒、冷水の経路、電源供給などについても検討します。また、設備だけでなく、クリーンルーム内で使用する備品類もクラスに適合しているかを確認して設計していきます。

メンテナンス

定期的なメンテナンスは、クリーンルームの機能を維持するために不可欠です。フィルタの交換や清掃、エアフローや温度の調整などが含まれます。これにより、クリーンルームの清浄度と性能を維持できます。

クリーンルームで働く人の役割と安全管理

クリーンルームで働く人には清浄度を保つために何が求められているのか、また安全にはどのように配慮しているか紹介します。

職員の役割と責任

クリーンルームで働く職員は、環境を清浄な状態に保つために日常的な清掃や保守作業は欠かせません。また、外部から粒子や微生物などを持ち込まないために、適切な服装や行動について教育され、クリーンルーム内を正しく使うように求められます。

安全と健康

クリーンルーム内での作業は、作業者の安全と健康も考慮して行われます。作業中の事故や健康への影響を最小限に抑えるための対策が取られています。

クリーンルームの最新の進展と将来の展望

技術の進歩に伴い、クリーンルームの設計や運用方法も進化しています。
新しいフィルタリング技術やエアフロー制御システムなどが導入され、清浄度のレベルはより高くなっています。将来的には、ナノテクノロジーや生命科学の発展に伴い、それらを実践するために欠かせないさらに高度なクリーンルームが求められることが予想されます。

クリーンルームは高度化していますが、それに伴ってエネルギー消費をいかに少なくするかという課題もあります。クリーンルームメーカーでは、さまざまな取り組みがなされています。
例えば、クリーンルーム全体を高清浄化するのではなく、必要な部分だけを局所的にクリーン化する方法が検討されています。また、高効率空調機器の開発や、さらに気流改善、排気量の削減や排熱利用、外気の冷熱を活用した熱源システム導入なども検討されています。

エネルギー使用量を可視化する試みもあります。温湿度や塵、ホコリの量などのクリーンルーム内の環境と電力使用量を可視化し、エネルギーの無駄を見つけることで、省エネを支援するソフトウェアもあります。

サイバネットシステムのクリーンルーム設計・運用ソリューション

クリーンルームでは空気中のホコリやチリなどの浮遊粒子が制御され、気密性や温度、湿度、圧力などが一定レベルに清浄化されています。クリーンルームの設置、運用を効率化するためのソリューションが求められています。

設計段階においては、目に見えないクリーンルーム内の浮遊粒子の流れをいかにコントロールするかが課題となっています。また、最適な設計かどうかを検証するには、コストと時間がかかるため効率化が必要です。

運用においては、さまざまな設定を最適化し、気密性、温湿度、圧力などを正しくコントロールすることが課題です。複数の設定で検証を行うのには、膨大な時間と人手がかかってしまいます。また、クリーンルームは特殊な作業環境なので、紙類を持ち込むことはできず 、エンジニアの教育が難しいという困りごともあります。

サイバネットでは、こうしたクリーンルームの設計や運用に関する課題を解決するソリューションを提供しています。

クリーンルーム内の流れの可視化

InfiPoints と Ansys Discovery による可視化

InfiPointsは3Dスキャナで測定した点群データをモデル化するツールです。建築、施工、工場レイアウト、プラントエンジニアリングなどに活用できます。

Ansys Discoveryは3D CADとCAEが一体化したツールです。解析できる分野は、構造解析、伝熱解析、流体解析、連成解析、トポロジーなどです。

 

クリーンルーム内を3Dスキャナで測定したデータを、InfiPointsを使ってモデル化します。次に、Discoveryを使って流体解析を実施し、クリーンルーム内の備品配置などがどのように流れに影響するかを可視化します。

換気効率の検証、設計最適化

クリーンルーム内の流体解析

クリーンルーム内の換気効率をシミュレーションし、流速や、フィルターサイズ、部屋の容積などさまざまな条件を最適化できます。

熱流体解析ソフトウェア「Ansys CFD」を用いてクリーンルーム内の流体解析を行い、換気効率を計算できます。しかし、最適な条件を探すためには、さまざまなパラメータを計算する必要があり時間がかかります。
「Ansys Twin Builder」や解析結果予測ソフトウェア「Neural Concept Shape」を用いることで計算時間を大幅に短縮できます。

Ansys Twin Builderには、3Dシミュレーションモデルを低次元化するROM(Reduced Order Model)という機能があります。計算時間を大幅に削減できるため複数のモデルをシミュレーションできます。

Neural Concept Shapeは深層学習AIがCAEデータを事前に学習して、新しい条件での解析結果を瞬時に算出します。

紫外線照度分布の可視化

室内空調を考慮した照度分布の解析 

光学システム設計ソフトウェア「Ansys Speos」を使って紫外線照度分布の可視化により効率のよい紫外線殺菌(UV殺菌)が可能です。Ansys Speosはさまざまな波長域での照度や光度、輝度の評価が可能なツールです。

 

クリーンルーム内の紫外線殺菌について、LEDの個数や配置などを最適化します。Ansys CFDを用いて気密性、温度、湿度、圧力などの条件を計算し、効率的なLED殺菌灯の配置を検討します。

ARによる作業支援

クルーンルーム内AR作業支援

ARプラットフォームソフトウェア「Vuforia Work Instructions」は、ARやスマートグラスなどの先進技術を活用したクラウドベースのDXソリューションです。

 

作業対象へのARナビゲーションや、熟練者の視点で撮影したビデオなどを活用したコンテンツを誰でも簡単に作成できます。Vuforia Work Instructionsを活用すれば、クリーンルーム内のペーパーレス化を実現でき、新人の作業者であっても作業内容を正確に把握できます。

資料DL、問い合わせ

サイバネットシステムはさまざまなツールでクリーンルームの最適設計のお手伝いができます。サイバネットシステムが提供するクリーンルーム設計、運用ソリューションの事例はこちらからダウンロードできます。興味のある方はお気軽にお問合せください。

関連記事

Ansys、ならびにANSYS, Inc. のすべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、ロゴ、標語は、米国およびその他の国におけるANSYS, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。その他すべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。本ウェブサイトに記載されているシステム名、製品名等には、必ずしも商標表示((R)、TM)を付記していません。 CFX is a trademark of Sony Corporation in Japan. ICEM CFD is a trademark used by Ansys under license. LS-DYNA is a registered trademark of Livermore Software Technology Corporation. nCode is a trademark of HBM nCode.