解析事例
株式会社 東芝 生産技術センター様:PlanetsXとAnsysの連携に期待
厳しい設計要求を満たすには、成形性と強度、熱応力を同時に考慮することが重要
「デジタルプロダクツ」「電子デバイス」「社会インフラ」を主力事業とする複合電機メーカーとして、グローバルトップへの挑戦を続けておられる東芝グループ様。「人と、地球の、明日のために」をスローガンに技術革新を進め、数々の魅力的な製品を提供されてきました。
今回、お話をお伺いした生産技術センター様は、そうした東芝グループ様のコア生産技術の研究開発を担われており、部品製造技術および製造プロセスの開発、また解析技術の開発に取り組んでおられます。

左から井上様、本田様
今回お話いただいた方々
部品技術研究センター
研究主幹 本田 智 様
井上 裕子 様
(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)
東芝グループ全体の生産技術開発を担う部門で、樹脂成形・金型のシミュレーションを担当
皆様の担当業務をお聞かせください。
本田
生産技術センターでは、東芝グループの様々な部門から委託を受け、生産技術の開発を行っています。グループ全体ですので、対象は家電から半導体、重電機器のような発電機の部品まで多岐に渡ります。当部門では機械系のシミュレーションを担当しており、中でも井上と私は、主に樹脂成形や金型関連に取り組んでいます。
生産技術センター様には、以前より弊社の射出成形CAEシステム「Planets "Mold Studio 3D"」(以下、MS3D)を導入いただいていましたが、今回Ansys Workbench版である「PlanetsX」へマイグレーションされました。その経緯をお聞かせください。
井上
当センターでは、2007年に光学部品の解析を目的にMS3Dを導入していました。いっぽう以前からAnsysも導入しており、Ansys Workbenchの操作性が良いことは知っていましたので、その環境で同製品が動かせる点に大きなメリットを感じました。
また特に、自動メッシュ機能が優れているのと、GUIがツリー構造でわかりやすく、境界条件も順を追って設定できる点が使いやすいと思いました。
Ansysの伝熱解析や構造解析と組み合わせて、簡単に金型冷却解析やそり解析が行える点も良いと思います。
ありがとうございます。
ところで、御社では光学性能評価や繊維配向解析機能など、全てのオプションが入ったMS3Dの最上位版をお使いいただいていますね。
井上
光学性能を評価する場合、熱変形による残留応力だけではなく、配向による残留応力も考慮する必要があります。MS3Dには光学性能の評価機能がありましたが、PlanetsXでは未搭載ですね。
厳しい設計要求を満たすにためには、成形性と強度、熱応力問題は 切り離せない。
Ansysの構造解析、伝熱解析と連携できることは 大きなメリット
光学性能評価の機能は、2012年夏頃にリリースするバージョンで搭載予定です。これ以外にも、PlanetsXにはMS3Dの機能を順次盛り込んでいく予定ですのでどうぞご期待ください。
今後、PlanetsXを導入したことで、取組みたい解析テーマは何でしょうか?
井上
PlanetsXではフィラー含有樹脂の解析や熱硬化反応を簡単に評価できるので、今後は試していきたいと思います。また、操作性が向上したことで、樹脂流動解析を行う技術者を増やしていきたいと思います。
本田
今までは、同じ樹脂成形の部品でも、成形性の評価と強度や熱応力の問題は切り離して評価していました。しかし昨今の厳しい設計要求を満たすためには、両方を同時に考慮する必要があります。PlanetsXを使うことで、Ansysの構造解析、伝熱解析と連携できるメリットは大きいと思います。
フィラーに関しては、樹脂の繊維配向がそりや強度に与える影響を見たいと考えています。熱硬化には関心はあるのですが、精度の良い解析結果が出るような材料データをいかにして用意するかが課題だと思います。
また、樹脂成形では、ボイドやウェルド、ヒケ、フローマーク、シルバーなど、様々な成形不良が発生しています。今後はシミュレーションをさらに活用して、設計段階でそうした問題を予測可能にしたいです。
Ansys WorkbenchはCADインターフェースが充実していますので、今までモデリングに使っていた時間を、設計案の評価や改善案の検討に費やすことが出来る。この点は本当に楽しみにしています。
AnsysのCADインターフェースを活用すれば、より多くの設計案が検討可能になるはず。今後の課題は材料データの手配。
製品に対してのご要望はありますか?
井上
MS3Dについては、樹脂の材料データが強化されると良いですね。Ansys Workbenchのように、データが視覚的だとわかりやすいと思います。
本田
当センターに求められているのは、コスト削減と性能向上の両立です。性能には、例えば耐熱性や強度、外観など様々な要因がありますが、全ての要求を極限まで追求していくと、材料データの違いも解析結果に大きな影響を与えます。ですから材料データは極めて重要なのです。
材料データ作成については、弊社でも代行サービスを承っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。最後に、弊社へのご要望はありますか。
井上
サイバネットのサポートには、いつも非常に丁寧に対応していただき感謝しています。今後も手厚いサービスを続けてください。
ありがとうございます。今後も製品開発やサポートサービスを通じて、お客様にとって理想的なCAE環境が構築できるよう、努力を重ねてまいります。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
【メカニカルCAE事業部 マーケティング部】
「CAEのあるものづくりVol.16 2012」に掲載