解析事例
シーケンシャルモードでビームスプリッタをモデリング
ビームスプリッタとは
- 光線をある割合で透過光と反射光に分割するシステム
- 経路を逆にたどれば、2本の光線を1本に重ねることも可能
- プレート型やキューブ型のような形状の違いや、偏光の扱いの有無もあり、レーザー系や分光分析、偏光解析、干渉計で使用される

- 本事例ではシーケンシャルモードによるビームスプリッタのプリズムのモデリングを紹介
- シーケンシャルモードでモデリングすることで結像設計の観点から解析が可能に
- シーケンシャルモードはノンシーケンシャルモードと違い、透過光線と反射光線を同時に追跡することはできないので、マルチコンフィグレーションを使って1つのビームスプリッタモデルに対して複数の経路を再現
- キューブ型ビームスプリッタで透過対反射が50/50のモデルを作成

モデリングフロー
透過光路のモデリング
マルチコンフィグレーションで反射光路を追加
透過光路と反射光路を1つの設計データで再現
透過光路のモデリング
基本となる光学系

- アパチャータイプ
入射瞳径 :Φ15.0[mm] - 視野
角度 :軸上視野のみ (X,Y)=(0,0) - 波長
0.550[nm] - レンズデータエディタ
スプリッタ面の作成
- 第3面をX軸周りに-45°傾ける
- この面がスプリッタ面となる

キューブ型を再現
- OpticStudioはデフォルトでは円形アパチャーでシステムを作成
- 矩形アパチャーを設定して直方体、つまりキューブ型のプリズムを再現
10mm×10mmの矩形面を作成


コーティングの設定
- 面にコーティングを設定
- プリズムの外側の面 :面2,6
・AR :厚み1/4[波長]のMgF2反射防止コーティング
・反射を抑えることで透過率を高める - プリズムの内側のスプリッタ面 :面4
・I.50:透過率50%、反射率50%の理想(IDEAL)コーティング
・ビームを均等に分割

透過光強度の解析
- コーティングを設定したプリズムが光線を透過させる強度を確認
・[解析]タブ >[偏光]>[偏光光線追跡] - エネルギー(透過光)損失の要因は下記を考慮
・ARコーティング
・I.50コーティングによる50/50の分割
・ガラス(N-BK7)でのバルク吸収

マルチコンフィグレーションで反射光路を追加
マルチコンフィグレーションで反射光路のモデリング
- マルチコンフィグレーションを利用してプリズム内を透過する光路と反射する光路の2種類をモデリング
- 面5の座標ブレーク面のX軸ティルトをコンフィグ化
・コンフィグ2はコンフィグ1の値をピックアップして-1倍

- コンフィグ2を反射光路とするため面4の材質をMIRRORに
- MIRROR後の厚みの値を負にするため、MIRROR後の面の厚みもコンフィグ化
ここではコンフィグ1からピックアップして-1倍

反射光路を再びビームスプリッタへ
- 反射光路をさらに反射させることで元の光路を辿るようなモデリング
- シーケンシャルモードは光線が通過する面をその都度モデリングする必要があるのでビームスプリッタのプリズムをもう一度モデリング
・シーケンシャルモードで一度モデリングしたものをそのまま使いまわすことができない
・ノンシーケンシャルモードはその限りではない

- コンフィグ2に面7を追加して材質をMIRRORに
・プリズムで反射した光線をここで再度反射させてプリズムに戻す - 面8以降を追加して再度ビームスプリッタプリズムをモデリング
・座標ブレークはローカル座標の向きを考えてX軸ティルトに+45°を設定
・アパチャーとコーティングも最初のプリズムと同様に設定

透過光路と反射光路を1つの設計データで再現
完成した光路を確認
- ここまでの操作でコンフィグ2の光路が完成
- しかし、コンフィグ2のために追加した面がコンフィグ1でも追加されている

マルチコンフィグで有効な面を限定
- マルチコンフィグオペランドIGNMでコンフィグ1に不要な複数の面を無視
・コンフィグの値を1にすると指定した範囲を無視
・IGNRオペランドは指定した1面のみに対応

最終形状

2つの光路の透過光強度を比較

まとめ
- AnsysZemaxOpticStudioシーケンシャルモードで、透過対反射が50/50のキューブ型ビームスプリッタをモデリング
- シーケンシャルモードの場合、ビームスプリッタを2度通過する光路をモデリングするには、2度ビームスプリッタの面をモデリングする必要がある
- 透過光強度を解析することで、ビームスプリッタの面を通過するごとにコーティングやガラスのバルク吸収によりエネルギーが損失された確認