解析事例
防護工へのダンプトラック衝突解析
事例提供:西松建設株式会社様
解析業務協力:株式会社ビーオーエス様
1.概要
老朽化した山岳トンネルの覆工を補修・補強するための工法の一つに覆工再生工法があります。覆工再生工法ではトンネル内における車両通行下での施工を想定し、トンネル中央部に「防護工」と呼ばれるプロテクターを設置することで、通行車両と作業員の安全性を確保しています。
防護工には車両の衝突に耐え得る強度が求められます。そこで本事例では、模擬トンネル内に設置した防護工に10t級ダンプトラックを衝突させた際の、実際の衝突実験結果を基にAnsys LS-DYNAによる時刻歴応答衝突解析を実施し、防護工の挙動、変形、損傷等を評価しました。
2.解析対象物
防護工はSS400材で構築されており、一般車両通行を想定した寸法として、内空幅5270mm、内空高4520mm、進行方向に対しては衝突実験のために10.5mの長さとしました。防護工の総重量は約38tであり、部材間はボルトで連結されています。

防護工の実物写真、および3Dモデル
3.解析モデル
防護工および車両の有限要素モデルを下図に示します。

防護工の有限要素モデル
節点数:約32万
要素数:約17万

車両の有限要素モデル
節点数:約3.6万
要素数:約3.2万
4.解析条件
衝突実験に用いる車両は10t級ダンプトラックの荷台にウェイトを積載して総重量25tとしてあります。解析においても、車両総重量を25tとし、衝突実験と同条件となる45km/hの速度、進入角度15°で保護工のガードレールに衝突する解析を実施しました。
防護工の脚部はレール、車輪およびジャッキからなる構成で設置されています。路面は解析上は簡易的な剛体面としてモデル化し、脚部(レール)との間には、摩擦接触条件を適用させた解析モデルとしました。

衝突実験および解析の条件
尚、衝突解析において、防護柵は実際の衝突によって塑性変形することが想定されるため、防護柵部の構成部品に対しては弾塑性材料構成則を採用しました。
5.解析結果
解析で得られた衝突時の挙動をアニメーションで示します。防護工の変形量は実際の衝突実験と概ね同等となっており、シミュレーションの有効性を確認する事が出来ました。また、この結果を基に、実施工を想定した防護工延長での衝突解析を実施しました。その結果、防護工の最大変位は約20mm程度と十分に小さく、また塑性変形するような損傷も確認されなかったことから、求められる安全性の要件を満たす事が確認できました。

衝突挙動のシミュレーション結果 (※WEB事例上ではアニメーションで掲示)

衝突実験の様子
参考文献
鈴木健,大谷達彦,鈴木俊雄:防護工への実大衝突実験および衝突解析,令和5年度土木学会全国委大会第78回年次学術講演会,VI-989,2023.9
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